哲郎は連太郎に連絡を取ろうとしたが、
例によって連太郎はなかなか捕まらない。
業を煮やした哲郎がマチ子に相談してみると、
どうせ女の所でしょ、とだけマチ子は吐き捨てた。
本来なら連太郎に注意すべき人物は、
哲郎のほかにはどこにもいないはずなのだが、
連太郎に負けないくらいの女好きである哲郎に、
その役は務まるはずもなかった。
そんな二人をいつも端から見ながら、
マチ子は呆れることにさえ疲れ切っていた。
衰えを知らないその美貌に憂いを漂わせる風情は、
とにかくマチ子特有のものだ。
哲郎、40才。連太郎、39才。マチ子、38才。
1962年10月。