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早野巴人の世界(その十)

2004-10-11 11:33:41 | 巴人関係
早野巴人の世界(その十)

○ 風薫る家に入間の里の馬鹿

 この巴人の句には、「京なりける人の許(もと)にまねかれて」の前書きが付与されている。この前書きを頼りにして、文字通りに解釈すると、「かって京都に住んでいた人に招かれて、その人の家を訪問しましたが、その家は初夏の風薫るように爽やかなのですが、その家の主は狂言『入間川』に出てくるよう、逆さ言葉を使い、どこか、その狂言の『入間の里の馬鹿』うような趣でした」とでもなるのであろうか。とにかく、狂言「入間川」のパロディ化で、意味の取りづらい、いわゆる、難解句という雰囲気である。
 さて、この句の謎解きは、逆さ言葉の「入間言葉」にある。ずばり、この句の「馬鹿」は、その反対の「利口・賢人」と、この句の作者・巴人は「ひねって」、この句を作っているようなのである。即ち、この句の句意は、「風薫るような爽やかな家の、その主は、実に、その家の主にふさわしいような爽やかな七賢人の一人のような賢人そのものでした」というのが、この句の全体像のようなのである。そして、こういう句は、現代においては、「俳句」の世界ではなく、より多く、「川柳」の世界のものであろう。いや、現代の「川柳」の世界でも、ここまでの、「言葉遊び」の「遊び心」を持って、作句している人は皆無なのではなかろうか。
 この「遊び心」というものを、この「遊び心」に根ざす「豊かさ」というものを、現代人は何処かに置き忘れてしまったような、そんな気がしてならないのである。






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