鞆鉄道株式会社は、広島県第二の都市、福山市の福山駅と松永駅を中心とし、南西部にエリアを広げるバス会社。バス会社なのに「鉄道」と称しているのは、かつて、福山駅と鞆の浦の景勝で知られる鞆の間をナローゲージの軽便鉄道で結んでいたからです。1954年にこの軽便鉄道を全線廃止し、以後はバス専業となったが、蒸気機関車の煙突がラッキョウの形に似ていたので「ラッキョ汽車」と呼ばれ、親しまれていた鉄道の号を現在まで社名に残しています。さすがに一般的にはトモテツバスという通称の方が通っているようですが…
福山駅と鞆の浦と結ぶかつての鉄道線を継承する路線は現在でもメイン路線で、重要な生活路線であるとともに観光路線でもあるため、大型車で運行され、運行本数も豊か。現在、この路線を春と秋の特定期間、土日祝日限定で昔懐かしいボンネットバスが運行しています。一日4往復、運賃は530円です。真夏に運行しないのはエアコンが無いからでしょうか。乗客はともかく運転士は大変だろうからね。
車両はいすゞ・BX。これはいすゞ自動車が1947年から1970年の長期に亘って製造していたバス車両で、この車は1958年製造のBX341。前照灯2灯の正面のデザインは、同じボンネットバスでも比較的よく見かける前照灯4灯のいすゞBXDより古いタイプ。地元福山の福山自動車時計博物館が整備した車両ですね。
車内もほぼ原形を保っています。手作り感が溢れる運転席のインパネや板張りの床など、なんともレトロですね。
エンジン音は軽快で、いささかの古さも感じさせない。相当念入りに整備されているんでしょう。福山市郊外を調子よくスイスイ走り抜けます。
レトロバスのお約束、ぴょこんと飛び出る方向指示器はここでも健在。ボンネットバス特有の丸っこいお尻が堪らんほど愛おしくなる。
こういったボンネットバスは一時、各地でリバイバルされていたが、徐々に少なくなっています。問題は排ガス規制。今や都市部ではなかなか見ることはできません。福山の都市部を走り抜けるこのボンネットバス。本当に貴重ですよ。