ネパール民話
大塚勇三 再話 秋野亥左牟 画 福音館書店
成人した二人の息子に、ある時、「うちにある本でいちばん怖かったのはどれ?」と気軽に尋ねたら、二人は「あれだ、あれ!」と言いながら持って来たのが期せずして同じ絵本だったのには驚きました。
ネパールの話ですが、継母が自分の娘はかわいがるが、前妻の子のプンクマインチャには食べ物もろくに与えずにこき使う。そんなプンクマインチャを、やぎときつねの二つの頭を持つ子やぎが食べ物を出して助けてくれる。
鬼にさらわれたプンクマインチャが、親切にしてやったねずみに教えてもらって、鬼の宝物を持って家に帰る。継母は自分の娘にも宝物を取って来させようとするが、いじわるな娘はねずみをたたき殺してしまい、鬼に食われて死んでしまう。
よく似た話がいろんな国にあるので、どこかで聞いたことがあるような話ですよね。なんで、この絵本をこんなに怖がるのか。
二つ頭の子やぎや、そのやぎの骨を埋めた所から生えてくるまんじゅうのなる木など、話の強烈さもさることながら、秋野亥左牟の絵がおおいに関係しているのかなと思います。色線が波のようにうねり、これでもか、これでもかと、どのページにも繰り返し続き、あやしげな色あいと異国風な紋様のような絵にはインパクトがあります。この絵が怖さの相乗効果を生んだのではないでしょうか。
わたしには、プンクマインチャの死んだ母が、世の荒波からわが子を守るために必死に張りめぐらした描線のようにも、情念のようにも思います。だとしても、なんとまあしつこい絵でしょう。
こんなにしつこく付きまとわれたら、普通の子どもらには嫌がられ怖がられるかも知れないと、私は別の意味で、これを密かに自戒の本と考えています。私の全く勝手な読み方ですが……。