【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

2chの佐々木スレに投稿されたssの保管庫です

佐々木スレ9-650 「ワン・セグメント・ホワイトリボン」(2)

2007-06-18 | クリスマスss

654 :ワン・セグメント・ホワイトリボン:2007/05/27(日) 08:26:07 ID:QM0CoX+/
~4~
買い物を済ませ、佐々木とバスに揺られること十数分。バスを降りてそこからまた暫く歩くと目的地である佐々木邸が視界に入ってきた。
「さあキョン、ここが狭いながらも愛すべき我が家だよ」
佐々木邸の見た目はごく普通の木造建築物なのだが、芝の植えた庭や木々に目を通すと、
常日頃から手入れの行き届いているのが素人目にも判る。
その刈り込んでいる芝を見た途端、白いワンピースに麦藁帽子を被った佐々木が草むしりに精を出す様子が
何故だがわからないが脳裏に浮かんでしまった。
しかもその情景を思い浮かべている間、佐々木の呼びかけに気がつくまでかなりの時間呆けていたらしい。

「全く…僕の家の敷居はキミにはそんなに高いのかい?遠慮しないで入って来て貰いたいな。」
「すまん、なんとなく佐々木の家らしくてなと思って」
「一応ほめ言葉として受け取っておくよキョン。言い忘れたが、生憎と僕の両親は不在だ。
だからキミをキチンともてなす事ができるかどうか甚だ不安ではあるのだがね」
その不在の理由を聞くと佐々木曰く、今朝方両親の恩師にあたる方が急に倒れたらしく、取る物も取り敢えず
新幹線に乗って佐々木の両親はその恩師の方の入院先に向かうことにしたらしい。

「で、さっき電話で聞いたところ、今のところ安静にしているけどまだ予断を許さないらしいから今日は向うで宿をとって戻らないそうだ。」
「てことは二人っきりなのか?」
「そういうことになるね。最近は押込み強盗も出没しているらしいし、頼りにしてるよ、キョン」


リビングルームに案内された俺は、そこで佐々木とテキストを開いて課題を解くことにする。
向かい合ってカリカリと書き綴るシャーペンの音が、独特の緊張感を伴って空間に伝播し、耳朶を僅かにくすぐる。
いつになく滑らかな俺のペン先は、普段はすぐ停滞する英語の構文や数学の公式を淀みなく書き込んで行き
一息つく頃には課題の大半を埋めることが出来た。これはいったいどういうことなんだろうね。

「男子たるもの3日会ざれば刮目をもって見よと言う事じゃないかい、キョン」
呉下の阿蒙になぞらえてくれるのは有り難いが、呪い殺されるのは性分には合わなくてね、
俺はこれからも善良な人生を歩む事をモットーにしてるのさ。
ちなみに俺は課題の一々を佐々木に根堀葉堀聞いたりなどしちゃいない。
普段と違う事といえば遊んでくれとせがむ妹の代わりに目の前に佐々木がいる位なんだが
こいつの顔を見ると給食の箸が進むのと同じように筆も進むのかも知れん。

…まったく根拠は無いがな。
「面白いことを言うね」
佐々木は爆笑をこらえるような表情になって
「キミのシナプスの伝達効率増加に、僕が一端を担っているとしたら大いに喜ばしい事だよ、キョン」
佐々木はさっきのパブロフの犬的な発言に大いに気を良くしたらしく、時折鼻歌交じりに課題に取り掛かっているようだ。
俺としても普段以上のペースで課題を解きこなし、普段は南アルプスの登山行に匹敵する課題の山も今日はどういう訳か
裏山のハイキングコース程度の楽勝さでどうにか終わりも見えてきた。こんなことなら冬休みの宿題も併せて持ってくれば
と思わずにはいられなかったぜ。



655 :ワン・セグメント・ホワイトリボン:2007/05/27(日) 08:27:50 ID:QM0CoX+/
~5~
さて同級生の女子とクリスマスを過ごすというのは、青春ドラマにありがちなシチュエーションなのだが
俺と佐々木の間でそれを当てはめられるかどうか聞かれれば、このときの俺だったならノーと答えていただろう。
なんせ佐々木は恋愛感情を精神病の一種と言い切る輩だし、俺たちは塾で隣同士になって会話をする位が関の山で、
今日佐々木の家まで行けたのはその余禄以外の何物でもないはずだからだ。
この後はクマのぬいぐるみのついでに買ったあれを佐々木に手渡せば、クリスマスミッションは一応コンプリートで
あとは家路に向かうだけなんて考えていたんだが、あとから思い返すとまさしくこれは浅慮の極みというやつだろう。
その帰るタイミングを見図る様に佐々木の表情を伺っていると、先に発言したのは佐々木の方だった。
「キョン、さっきも言ったが今両親は出払っている。しかし今日の料理の仕込みだけは前の晩から完璧に済ませているらしくてね。
今しがた冷蔵庫を覗いたら、鶏の腿肉やらケーキやらが鎮座ましましているという訳さ。これはもう1人で処分できる量
ではないし、両親もいつ戻ってくるかわからない状況だ。キミの妹さんには悪いが、是非食べていってもらいたい。
僕も一人っきりで食卓に付くよりも、キミの顔を見ながらでも食べた方が大いに箸が進むというものなのさ。」
そこまで言うなら是非ご相伴に預からせてもらうことにしよう。妹には明日フォローしとけばケロリと忘れてくれるはずだ。
「それは重畳だ。早速支度に取り掛かるからそこで待っていてくれないかね。」

佐々木が調理場に向かってしばらくしてから、コトコトとスープ鍋が立てる音とローストチキンの香ばしい匂いが
リビングに漂い始め、それらに反応した胃袋を筆頭とする消化器官連合が猛烈な自己アピールを始めようとするところで
佐々木は一旦着替えるといって部屋を出た後、すぐ戻って来た。

「どうだい似合うかい、キョン」
振り返ると、白いファーの付いた赤い帽子とコート…いわゆるサンタ服に着替えた佐々木の姿が俺の目に飛び込んできた。
しかしいったいどこで買ったんだ、佐々木よ。しかもお前の着ているサンタ服は夏仕様と言い切れるような布地の少なさじゃないか。
「あのショッピングモールで安売りしていたから思わず買ってみたんだ。折角のクリスマスだし、何事にも雰囲気は大切だろうキョン」

鎖骨のかなり下の方から佐々木の体を覆い始める布キレは、佐々木の女の子として持っている2つの自己主張に
ぴったり張り付くようにデザインされており、そこから緩やかな曲線を描いた後、ヒップラインの頂点付近で終わりを遂げている。
そこから全く無駄のないすらっとした佐々木の足が伸びているのだが、これ以上見続けるのは何かを催しそうになりそうだ。
「どうやらお気に召してくれたようだね、くっくっく」
と言いながらスカートの端をぴらぴらと持ち上げるしぐさに思わずクラッと来てしまいそうになるが、
佐々木のどことなく挑戦的な表情を見て、何かドッキリでも仕掛けられているのかもしれんと思うことにする。
この後の佐々木の悩殺攻撃は俺の煩悩と本能を味方に付けて一方的に侵攻し、俺の情緒と理性は防戦一方だったのは言うまでも無いだろう。


「くっくっくっ、楽しかったよキョン」
最後のクリスマスケーキを平らげたあと、俺は自宅に引き上げることを告げると佐々木は冒頭のセリフを述べるに至る。
凱歌の響き渡る城内を見下ろす将軍のような勝ち誇った様子の佐々木に、俺は逆襲の一手を思いつきすぐさまそれを実行する事にする。

「…これは何だい?」
佐々木の眼前に俺は刺繍の入った白いリボンを取り出すと佐々木に差し出す。
「今日は色々と世話になったしな、そのお礼だ。こんなので申し訳ないが受け取って欲しい。」
そう言って佐々木にそのリボンを手渡すと、明らかに佐々木はそのリボンの扱いに困っている様子で、どうやら功を奏したらしい。
「…残念だけどキョン。僕の髪は岡本さんの様に長くはないからね、結うのは難しいかもしれない。その…なんというか
想定外だな、キミから贈り物を受けるというのは。でも…まあ合格祈願の鉢巻き代わりにはなるかもしれない、有り難く頂戴するよ。」
そうかい、俺にはこの状況は想定の範囲内だがな。じゃあ佐々木こいつはどうだ
「俺はお前のことが――」
俺の言葉に躊躇する佐々木に敢えて一息で言わず、一呼吸おいて残りのワードを突出させるべく肺の空気を吐き出そうとした瞬間。
佐々木は時限爆弾の解除スイッチをあと残り3秒で見つけた新米刑事のように俺にしがみついて来た。




656 :ワン・セグメント・ホワイトリボン:2007/05/27(日) 08:29:06 ID:QM0CoX+/
~6~
佐々木はそのまま俺にしがみつき、顔をみせる事の無いまま呟くように喋り始める。
「ずるいよキョン、それは反則だ」
佐々木よ、さっきの言葉はブラフなんかじゃないぞ。お前の事を好きか嫌いかで問われれば間違いなく好きに傾くだろうし、
少なくとも嘘偽りで騙ってなんかいないぜ。ただお前に焚き付けられてしまった感はあるがな。
「…そうだね、正直に言うとショッピングモールであの時キミが見せた朴念仁ぶりに少しカチンと来てしまってね。
果たしてどこまでそうなのだろうかと思って色々と焚き付けてしまった。そしてどうやら本当の愚か者は僕の方だったらしい。
キミを焚き付ければこうなる事態は充分予想できたはずなのに、それを全く想定していなかったのだからね。」
俺は為すべき事を見出せずにただ黙って佐々木の身体を抱き寄せると、俺を見上げる佐々木の顔は幾分か赤らんでいた。
「率直に言って僕もキミの事を好ましく思っているよ。それは間違いない。僕が以前言った言葉を覚えているかい?
動物は愛情ではなく本能によって子を慈しみ守り育てていると。僕は愛情を否定したが本能的希求は否定していないんだ。
僕も一箇の人間である以上、然るべき時に然るべき相手つまりキョン、キミと結ばれたいと思っているのさ。」
佐々木は嬉しくもあるがどこか儚げな表情をみせると

「だがね、キョン。それでもキミの想いを今、受け取る事はできないんだ。」


次の日、塾をサボるための言い訳を二十通り程考え、その半分位まで開陳したところで怒り心頭のお袋に家から叩き出された俺は
自転車を昨日塾に置き忘れた事に気付いて、已む無くトボトボと歩いて塾まで行軍し教室に入ると珍しく机に蹲る佐々木を見かけた。
が、どう声をかけたら良いものか。
佐々木も俺に気がつくと一瞬だけあの泣き笑いとも取れる表情をみせるが、すぐさま消し去ると俺に近づいて来て一言
「キョン、昨日は済まなかった」
いや、謝るのは俺のほうであり、お前は全く悪くないはずだ。
「キョンは優しいな、……そしてこれが今の僕からの答えさ。」
といって佐々木から紙袋を手渡された瞬間、昨日の数学の講師がプリントを大量に持って現れたので慌てて席に着く。
それからどう時間を過ごしたかはっきり覚えちゃいない。結局佐々木にも聞けずじまいでクタクタの足でどうにか家に帰った後、
自分の部屋で紙袋を開くと何所にでも在りそうな小さな鍵とメモ用紙が一枚。そこには
『4回春が巡るまで預かって欲しい』
とだけあった。
それからの俺と佐々木は、表面上はいつも通りに過ごし卒業式の日別れた。後は皆の知るところだ。


俺はあの泣き笑いとも取れる佐々木の表情に隠された意味をこれっぽっちも理解できちゃいなかった。
あの当時の俺は終始にやけたハンサム超能力者のように女性心理に長けている訳ではないし、
白磁人形のような宇宙人産アンドロイドの表情すら読み取れるようになった顔色伺いスキルもなかったがね。
尤もハルヒに言わせれば今の時点ですら、ミジンコクラスな俺が昔に遡ってあれやこれやとやるとしたら
ミトコンドリアすら通りこして、これはもう原始の海に揺蕩(たゆた)ってなければならないだろう。
それでももし、過去に遡れる様なら昔の俺に蹴りをかましてやりたいところなのだが、あの時未来の俺が現れなかった事を
考えると、俺と佐々木にあった事はやはり規定事項なのだろうと推測する。そしてこれから事を起こそうとする俺の前に
ファニーフェイスな未来人さんが止めに入らないということは、やはりこれも規定事項なのだろうか。



…さてそろそろ話を今現在の視点に戻そうじゃないか。



657 :ワン・セグメント・ホワイトリボン:2007/05/27(日) 08:33:35 ID:QM0CoX+/
~7~
俺はあの日渡された鍵とメモを机の引き出しの奥から取り出し、妹に出かけると伝えて自転車に乗ると佐々木の家に向かって漕ぎ出す。
しばらく漕いで俺の目の前に現れたあいつの家を見かけると、そこは3年と3ヶ月前のあの時と寸分も変わない佇まいで、
その強烈な既視感から3年前にタイムスリップした俺の記憶が脳内を駆け巡り、そしてどうにか舞い戻ってこれたという訳だ。

生け垣で出来た門を躊躇わずにくぐり、玄関のノブを捻ると手の中に小さな木箱を納めた佐々木が静かに佇んでいた。
「やあ、キョン久しぶりだ」
さっき大学のあの掲示板の下で鉢合わせしたばっかりじゃねえか。
「そうは言うけどね。僕としては3年ぶりに再会した気分なのだよ。キョン上がってくれたまえ」

高校を無事卒業し、超万馬券もかくやというまぐれ当たりが成功したのかどうか判らないが
俺はとある大学の合格発表の掲示板に自分の番号を見出す事が出来た。
そしてSOS団のみんなも俺と同じく、先に進学した朝日奈さんに追いつく様に同じ大学に進む事となった。
勿論佐々木もだ。そういえば佐々木よ、相変わらずハルヒと仲が良さそうじゃないか。

「そうだね、涼宮さんにはいつもその独創的な発想に驚かされっぱなしさ。その彼女の言葉が瞬く間に形作られて
現実のものとなっていく様を見ているのは実に爽快なものがあるね。こういってはなんだが、同性の僕から見ても
涼宮さんは大変魅力的だ。涼宮さんの傍にいるキミを見て焦った僕は、2年も早く前倒しでキミの前に出てくる羽目に
なってしまったけれど、それは嬉しい誤算だったのかもしれないね」
まあハルヒの交友関係が増えるのも望ましい事ではあるし、それはお前であることはまぎれもなく良い事だと思うがな。
まあいいさ、本題に入ろうか。

「3年前の…あの時もしキミの言葉を受け止めていたら、僕の箍(たが)は外れてしまっていたかもしれない。
僕の欲求は際限なくキミを求める事となったであろうからね。本気で駆け落ちも辞さなかっただろう。
そうなれば最早そこにあるのは破滅しかない。だから僕はあの時応じられなかんだよ、キョン。
そして自分の思いにむき合う事を恐れた僕はその想いをこの箱に封印することにしたんだ。」
お前がそこまで思いつめていたとはな。スマンとしか言いようが無い。
「さあその鍵を渡してくれないかいキョン」
ああ、そのためにここに来たんだからな。
俺は小箱を持つ佐々木に鍵を差し出すと、カチリという音と共に錠前を外した箱の蓋を開けた中からは
あの時の一片の白いリボンが入っていた。

「この中に3年間封印し続けた想いがあるんだ。でもつらい時にこの箱を見るとなぜか落ち着くことができてね。
だからキミが傍にいない3年間頑張れたのもこの想いのお陰でもあるかもしれないのさ。」
3年前に俺が佐々木にプレゼントした白いリボンを佐々木はいとおしく見つめる。
ようやくそのリボンも本来の役目を果たす事が出来そうだ。

「キョン、なによりも僕が嬉しく思っているのは、3年前の約束をキミがこうして覚えていてくれた事だよ。」
佐々木は3年の間に少し長くなった後ろ髪を左手で掬うとその根元をリボンで結び上げて振り返ると

「どうかな、似合う?キョン」
そこにはポニーテールの似合う可愛らしい女の子がはにかみながら微笑んでいた。


…以上です。物凄く見づらくて本当に申し訳ない。お目汚し失礼致しました


709 :657:2007/05/27(日) 19:19:37 ID:Pb5QXYUJ
~ワンセグのおまけ~
佐々木よ、お前の俺に対する想いは充分に判ってやれなくて申し訳なかったと思う。
だが一つだけ腑に落ちないことがある。あの3年前と今とじゃどう違うんだ?
「なんという事だキョン。キミの朴念仁ぶりは益々磨きがかかっているじゃないか。
これでは、涼宮さんも苦労するというものだ」
あのな、15と18じゃ同じ未成年であることに変わりはあるまいし、第一なんで
そこにハルヒが出てくるんだ。関係ないだろう。
「いいや、おおありだよキョン。僕も争奪戦に名乗りを上げた以上、ある程度は覚悟
していたんだけど、これは想像以上の難物だね、くっくっくっ」
佐々木は獲物が目の前に現れるのを虎視眈々と待ち続ける提灯鮟鱇のように
深海にボゥと光る捕獲者のような眼光を向けると
「みんな、キミが婚姻可能年齢になるのを待ち望んでいるのさ」


えー、少しダークが入ってしまった佐々木さんです。

まずレスをしていただいた皆さんにサンクスであります。
いつもここでキョンにフラグをへし折られる佐々木さんが
たまにはキョンを振り回す佐々木さんをみたいなぁと思い
ならばいっそ自分がと思い書き始めたところ、想像以上の
難しさでした。また電波を受信出来たら佐々キョンSSに
リベンジしたいと思いまする。


連々と書いてしまいましたが、要するに言いたい事は



佐々木かわいいよ佐々木