時々高速バスに乗る。
その日をいつも待っている。
乗っている、その時すらも待っている。
窓の外の景色は、思い出すたび黒くなる。
それでも覗くたび甦る。
まちはいつも綺麗だ。
手を降る人は笑う。
近付くときも、遠ざかるときも。
そしてまた、走り去りながら窓の外を覗く。
いつも見えなくなるまで探している。
あの真ん中に、安心させてくれる顔。
きっとどこかに、もう思い出せない顔。
何となく覚えている、あの顔は誰だったのだろう。
広がる景観に、記憶を溶かしてぐるぐるとまわす。
もう何度となく、繰り返してきた。
それなのに、とうとう泣いてしまった。
筋力を失ったように、目から、ぼたぼたと。
こんな風に泣いたことは、ずっと前にも一度だけあった。
十代だった。悲しいことがあって、世界が終わると思った春。
手を振りあわなかったかもしれない。
走り出したバスで、こんな風に一人泣いていた。
あれからまた、何度も桜が咲いては散って、
嬉しいことと悲しいこととどうでもいいことが数えきれないほど起きて、
素敵な夢も悪夢も、やたらリアリティのある夢も見て、
時には夢のような現実も起こった。
時間は、救ってくれたり突き飛ばしてきたりする。
何よりもフェアなものかもしれない。
その寂しさを我慢すれば、笑っていられると思った。
それなのに、泣いてしまった。悲しいことなんて、何も起こらなかった秋。
悲しいわけではないのかもしれないと、そう思った。
ぼうっとそう思いながら、目を閉じた。
どれほど強くなった、大人になった、そういうことではなく
ただ、あの春とは、確実に違っている。
失って、世界が見えなくなったわけではない。
もっと触っていたいだけ。
本当は、自分の世界に、日常に、うっとうしいほど存在していてほしい。
しばらくしたら、また高速バスに乗るだろう。
窓の外を覗くまで、また忘れてしまうだろう。
それでもあのまちの秋の色と
手の振る人の表情や仕草や冗談は、必要ないほど焼き付いているだろう。
悲しいこと、やりきれないこととうまく仲良くすれば
ほんの小さなことが幸せで、笑ったり、時には泣いたりできる。
どうにかして気を紛らわせたい。
やけ食いする気力もない。眠ってばかりいたくなる。
CDをたくさん借りてきた。ひとますiPodとのマンネリは解消だ。
その日をいつも待っている。
乗っている、その時すらも待っている。
窓の外の景色は、思い出すたび黒くなる。
それでも覗くたび甦る。
まちはいつも綺麗だ。
手を降る人は笑う。
近付くときも、遠ざかるときも。
そしてまた、走り去りながら窓の外を覗く。
いつも見えなくなるまで探している。
あの真ん中に、安心させてくれる顔。
きっとどこかに、もう思い出せない顔。
何となく覚えている、あの顔は誰だったのだろう。
広がる景観に、記憶を溶かしてぐるぐるとまわす。
もう何度となく、繰り返してきた。
それなのに、とうとう泣いてしまった。
筋力を失ったように、目から、ぼたぼたと。
こんな風に泣いたことは、ずっと前にも一度だけあった。
十代だった。悲しいことがあって、世界が終わると思った春。
手を振りあわなかったかもしれない。
走り出したバスで、こんな風に一人泣いていた。
あれからまた、何度も桜が咲いては散って、
嬉しいことと悲しいこととどうでもいいことが数えきれないほど起きて、
素敵な夢も悪夢も、やたらリアリティのある夢も見て、
時には夢のような現実も起こった。
時間は、救ってくれたり突き飛ばしてきたりする。
何よりもフェアなものかもしれない。
その寂しさを我慢すれば、笑っていられると思った。
それなのに、泣いてしまった。悲しいことなんて、何も起こらなかった秋。
悲しいわけではないのかもしれないと、そう思った。
ぼうっとそう思いながら、目を閉じた。
どれほど強くなった、大人になった、そういうことではなく
ただ、あの春とは、確実に違っている。
失って、世界が見えなくなったわけではない。
もっと触っていたいだけ。
本当は、自分の世界に、日常に、うっとうしいほど存在していてほしい。
しばらくしたら、また高速バスに乗るだろう。
窓の外を覗くまで、また忘れてしまうだろう。
それでもあのまちの秋の色と
手の振る人の表情や仕草や冗談は、必要ないほど焼き付いているだろう。
悲しいこと、やりきれないこととうまく仲良くすれば
ほんの小さなことが幸せで、笑ったり、時には泣いたりできる。
どうにかして気を紛らわせたい。
やけ食いする気力もない。眠ってばかりいたくなる。
CDをたくさん借りてきた。ひとますiPodとのマンネリは解消だ。