Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.349:ソーシャルメディアからソーシャルラーニングへ

2010年02月23日 | e-Learning業界動向
数年前からネットの世界では「ソーシャルメディア」という言葉が頻繁に用いられています。この言葉が出る前はCGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)という言葉も使われていました。両方とも「ユーザーによる情報発信、ユーザー同士の繋がりを促進するメディア」の事を指す用語でして、具体的には掲示板、Blog、SNS、You Tube等の動画投稿サイト、最近ではTwitterなどが代表的なソーシャルメディアとして挙げられます。しかしこれらのサイトにアップされている情報がすべて「ユーザーによる情報発信」かというとそうでもなく、BlogやYouTube、Twitterをマーケティングのツールとして活用する企業も多く、本当に「ユーザーだけか?」と言われるとやや心許ないところがあります。

いずれにせよ急成長するソーシャルメディアをコミュニケーションチャネルとして活用したいと思うのは企業にとって自然な成り行きと言えます。そして、さらに自然な成り行きとして、ソーシャルメディアを「学習」のツールとして活用できないかと考える人はたくさんおりまして、やはり数年前から「ソーシャルラーニング」という言葉が使われるようになってきています。

eビジネスからeラーニング
Web2.0からeラーニング2.0
ソーシャルメディアからソーシャルラーニング
麦からサッポロビール

実に自然な流れですね。ITの世界で流行した言葉は、必ず形を変えて教育・学習の世界に出現するという法則があるようです。先ほど出たCGMという言葉も、もう少しと普及していればCGL(コンシューマー・ジェネレーテッド・ラーニング)とかLGC(ラーナー・ジェネレーテッド・コンテンツ)とか出現したかもしれません。

で、この「ソーシャル・ラーニング」ですが、その定義についてちょっと疑問に思ったので今回取り上げさせていただきました。

まず「ソーシャル・ラーニングとは」でググると一番最初に登場する有限会社クックさんのサイトでは以下のように定義しています。

「ソーシャルラーニングとは
『eラーニング+SNS+Q&Aサイト=ソーシャル』つまり
1.教師、学習者同士の交流ができ、
2.疑問に思っていることがすぐに解消でき、
3.教材を簡単にインターネットに配信できる
学習システムです」
http://www.cook99.jp/slearning/index.html

次に「POLAR BEAR BLOG」さんのBlogでは

「何かを教える/教わるという場合に、従来のように『先生/生徒』という役割を明確化・固定化した形で行うのではなく、集団の中にいる全員が教える・教えられるという関係を持って行うことを、仮に『ソーシャル・ラーニング』と呼んでみたいと思います」とし、具体例としてBlog、Q&Aサイト等を挙げています。
http://akihitok.typepad.jp/blog/2007/11/post_024f.html

そして、きよみハッチングスさんは

「『インフォーマル・ラーニング』の部類に入り、特にヒューマン・インターアクションを中心とした学び方で、コラボレーションや共有をしながら学んでいく方法である。~中略~ アメリカでは、SNS、ブログ、Wikis等の『ソーシャル・メディア』の利用の高まりとともに、『ソーシャル・メディア」を利用した学習を総称して『ソーシャル・ラーニング』と呼ぶ人達が増えている」と定義しています(日本イーラーニングコンソーシアムWebサイトより)。


共通しているのは
1)集団で学び合う形態である
2)情報通信技術を用いた学習形態である

の2点です。
さて、今回コガの疑問の発端となったのは下記のアンケートです。
Masie center
http://masieweb.com/survey/jan10

韓国のHyunkyung Leeさんという方がソーシャルラーニングの実態をリサーチするために実施しているアンケートなのですが、気になったのは下記の設問の選択肢5)と6)です。

【設問】What types of Social Learning activities does your organization offer? [Select all that apply]
(あなたの組織ではどんなタイプのソーシャルラーニングを提供していますか?あてはまるものを全て選択)

1)Internal Social Networks/Media for learning
(学習用の社内ソーシャルネットワーク/メディア)
2)External Social Networks/Media for learning
(学習用の社外ソーシャルネットワーク/メディア)
3)Collaborative Documents (wikis, blogs) for learning
(wikis, blogs等の学習用コラボレーティブドキュメント)
4)Discussion Boards for learning
(学習用ディスカッションボード)
5)Projects with Multiple Learners
(多様な学習者によるプロジェクト)
6)Classroom-based collaboration or group projects
(教室でのコラボレーションもしくはグループプロジェクト)

情報通信技術を用いない対面状況でのコラボレーションもソーシャルラーニングの範疇に入れてしまうことについて皆さんどう思われます?集合研修や学校教育の中ではずーっと昔からグループ討議とか普通に実施していました。
それを今更「それはソーシャルラーニングの一形態です」なんて言われてもちょっと困りますよね。「かき氷ください」と注文したのにお店の人が「フラッペですね」と聞き返してくるような違和感をコガは感じるのですが。

最近東大の中原先生が「ワークショップとは言わないワークショップ」というコラムをBlogに書かれていました(下記URL参照)。
http://www.nakahara-lab.net/blog/2010/02/post_1646.html

ソーシャルラーニングも全く同様で、上記のアンケートのように対面状況でのアナログオンリーな活動をソーシャルラーニングの範疇に含めてしまうと、実は世の中「ソーシャルラーニングと言わないソーシャルラーニング」だらけなのです。
やはり新参者の言葉なのだから、ちょっとは遠慮してそこまで範囲広げるのは止めようよ。せめて対面状況であっても何らかの情報通信技術を活用しているものだけをソーシャルラーニングと呼びましょうよ。とコガは提言したいのでした。

さてさて、言葉尻を捕まえてのイチャモンはこれぐらいにして、ソーシャルラーニングに関連した役立ちそうなサイトを最後に紹介したいと思います。

SPY
http://spy.appspot.com/
例えばシンポジウム等の会場でTwitterをバックチャネルとして活用する際、ツイートされている文章をリアルタイムで会場に映し出してくれるツールです。ツイートがある度に画面を自動更新してくれます。別にハッシュタグを設定しなくても、キーワードを決めておけば、それに引っかかるツイートを表示してくれるようです。半角スペースで区切ればand検索もできるみたいです。
「ようです」「みたいです」と少々語尾が自信なさげな理由は、コガが試したところうまく表示される場合とそうでない場合があったためです。
これはTwitterのサーバーの問題?
それともこのSPYというサービスの不具合?
よく分かりませんが、「対面状況でITCを活用したソーシャルラーニング
(うーん回りくどい表現)」を実施するには使えそうな予感のするツールです。メルマガ読者の方でSPYを活用された方がいらっしゃいましたらぜひ使用後のコメント等をいただければ幸いです。

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