Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol186:大学eラーニング2つの調査

2006年05月18日 | 大学のeラーニング
メディア教育開発センターの大学eラーニング調査
今年の3月下旬に、メディア教育開発センターのWebサイトにて、2つの調査
報告の結果が公開されました。一つは6年間継続して調査している「全国高等
教育機関におけるIT利用実態調査1999年から2004年」。もうひとつの調査は、
今年新たに実施した「eラーニング等のITを活用した教育に関する調査報告
書」です。
両方とも、日本の高等教育機関でのeラーニングの現状を知る上でとても貴重
なデータを提供してくれています。

全国高等教育機関におけるIT利用実態調査 1999年から2004年
http://www.nime.ac.jp/~itsurvey/pub/it-use/
eラーニングに限らず、高等教育機関のIT化を経年的に調査している大変貴重
なデータです。ちょうど世の中にeラーニングのようなものが出始めた1999年
からの調査というところもGoodなタイミングです。

詳しいデータについては、excel形式でWebサイトからダウンロード可能。さら
に項目の上にマウスオーバーすると、その項目のグラフだけが表示される非常
に観やすいグラフがWebコンテンツとして提示されています。

各々の項目についての解説等もばっちり書いてあるので、ここでコメントする
ことはほとんどありません。一つだけ紹介しますと「インターネットを利用し
た教育」というのが99年の15%ぐらいから2004年は40%にまで伸びています。
そして分野は「補習教育」や「語学教育」が多いようです。また、ITの利用分
野についても教育そのものというより「レポートの提出機能」とか「シラバス
のWeb上での公開といった」活用が増えています。
本丸の学習内容や学習そのものでなく、周辺部分からITの活用が伸びつつある
ようです。

eラーニング等のITを活用した教育に関する調査報告書
http://www.nime.ac.jp/reports/001/
こちらの調査は、もう少しeラーニングにフォーカスを絞った調査内容となっ
ております。これも詳しい調査結果やデータがWebサイトに表示されているの
で、ここで私が色々と書く必要はないと思います。
しかし、あえて一つコメントさせていただきますと、この調査での「eラーニ
ング等のITを活用した教育」および「eラーニング」の定義は絶妙です。「e
ラーニング」という言葉は人によって意味する範囲が違っていて、それぞれ異
なる認識の中で「eラーニングやってますか」と調査しても正確な結果がでな
いため、この定義の良し悪しが調査結果のクオリティを左右するといっても過
言ではありません。

定義を引用しますと

「eラーニング等のITを活用した教育」の定義
「教授者と学習者の場所が異なる場合(オフキャンパス)の遠隔教育に限定せ
ずに、両者が同じ構内の場合(オンキャンパス)においてITを活用した教育も
含めている。ただし、学習者が自ら学習することを中心に考えるeラーニング
とすることから、教授者だけがITを活用して効果的に授業を実施する場合(例
えば、プレゼンテーションソフトを用いた授業など)は含めない」
個人的には、「ただし」から後の文章が前半の(オンキャンパス)という文言
を制御しているあたりの絶妙さが気に入っています。

eラーニングの定義
「eラーニング等のITを活用した教育のうち、教授者と学習者が同じ部屋で行
う場合及び講義の配信のみ一方的に行う場合(例えば、テレビ放送やオープン
コースウェア(OCW)による配信など)を除いたもの」
これも「例えば~」の後が心憎いです。OCWを除いてしまうことには一部に反
発があるかもしれませんが、この英断には拍手を送りたいです。eラーニング
は知識を一方的に配信するものでなく、そこに何らかの学習アクティビティが
必要だからです。

今後色々なところで、このNIMEのeラーニングの定義がデファクトスタンダー
ドになるのはなかろうか?と思った次第です。

それと本調査で、各大学で利用しているLMSの種類が実名入りで集計・公表さ
れていることは結構画期的なことだと思いました。まだ商用ベースのLMSの利
用が多い中、MoodleやNetCommons等のオープンソース系のLMSが比較的善戦し
ている感があります。米国のように2つのCMSで市場が独占されていないのも
日本特有かもしれません。日本ではナンバー1のWebCTですら11%のシェアし
かありません。

こちらの調査についても「全国高等教育機関におけるIT利用実態調査」同様毎
年続けてもらえればと思った次第です。

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