Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.312:次世代大学教育研究会at大手前大学

2009年07月21日 | セミナー学会研究会見聞録
7月4日に大阪の大手前大学で開催された次世代大学教育研究会に参加して参りました(本研究会の概要についてはhttp://groups.yahoo.co.jp/group/next-edu/を参照願います)。今週は研究会で聞いたの3件の魅力的な発表について報告します。ちなみに会場となった大手前大学のCELLと呼ばれる図書館・メディアライブラリーは2007年に誕生したばかりの大変素晴らしい学習空間でした。
大手前大学CELLについてはここをクリック

講義映像へのアノテーションを活用した授業デザイン・授業要約(京都外国語大学 村上正行先生)
トップバッターの村上先生からはScene Knowledgeという映像シーン連動型掲示板システムを活用した授業実践についてご発表いただきました。このシステムは講義などの映像を物理的・意味的にまとまった時間区間(シーン)に分割し、各シーンに対してコミュニケーション空間を作り出す点が特徴となっています。

実際の授業では、授業後に講義映像を10~15のシーンに分割しWebで公開。各シーンに対して学生がコメントをつけたり、いくつかのシーンを選択して講義全体を要約させるといったことを実践されているそうです。

この授業方法を通じて「コメントを書くことにより授業内容を振り返り、自分の意見について考えることができた」「他人のコメントを見て授業内容をより深く考えるようになった」といった学生の前向きな学習効果が確認されたそうです。

筆者も授業の終わりに「ミニッツ」と呼ばれる、数行程度の授業を振り返るミニミニレポートを書かせておりますが、真面目に取り組んでくれる学生が少ないのが課題となっています。授業の後でじっくりビデオ映像を再生しながら考えられる今回のシステムは羨ましいなあと思いました。しかし、もしこのような立派なシステムがあったとしても本学の場合は授業外の時間にいかに復習させるかが最大の課題だろうなあ・・・おそらく(-_-;)

ちなみに村上先生の研究については先生のWebサイトをご確認願います。


教育指導支援システムiPortfolio Makerと情報処理科目での活用(長崎大学 丹羽量久先生)
二番目に発表いただいたのは長崎先生の丹羽先生ですが、丹羽先生の隣の席には見覚えのある巨体が・・・。以前、熊本大学の鈴木先生の研究室にいた井ノ上さんが座っているではありませんか!聞くと長崎大学の大学教育機能開発センターに転職されたそうで、そちらでもニコニコ笑顔で良い仕事をしているようです。

さて、丹羽先生の発表は、長崎大学で開発したiPortfolio Makerという教育指導支援システムについてでした。Ajaxベースで開発されたなかなかCoolなデザインのツールでして、科目・授業回数ごとに教材配布、小テストの実施、アンケート実施・回収、レポート回収等の要素を自由に埋め込んで使えるツールでした。またテキストマイニングツールとの連動も可能で、収集したレポートやアンケート等の評価に役立ちそうでした。

当初学内ではWebCTを活用されていたそうですが、iPortfolio Makerの方が使い易さの評価が高かったそうです。また来年以降他大学へのテスターとしての利用も予定しているということですので、ご関心のある方は同大学教育機能開発センターのWebページをこまめにチェックされることをオススメします。

大手前大学におけるeラーニングの取り組みについて(大手前大学 畑耕治郎先生)
最後は開催校の大手前大学畑先生よりの発表でした。畑先生は学内のeラーニング推進センターのまとめ役を担いつつ、次年度開講予定の通信教育課程の設置準備、さらにはデジタルナレッジ社と協同で作った(株)デジタル・エデュケーション・サポートの仕事も担当しているという超多忙な方です。

まず最初に現状の大手前大学でのeラーニングの活用状況についてご説明いただきました。08年度前期は受講者180名、08年度後期になると409名、09年には900名と着実に学習者数を増やしています。そして大手前大学にも懐かしい顔が!かつて青山学院大学でELPCOの活動を積極的に推進していた合田さんが大手前のeラーニング推進センターにいらっしゃいました。現在合田さんを中心にしっかりIDのプロセスを遵守したコンテンツの開発をしており、映像とりっぱなし、流しっぱなしではない大学eラーニングを実践されているとのことでした。

ちなみにこの発表の最後に、畑さんから「eラーニング担当者のTwitter(つぶやき)」という素晴らしい本音トークがありました。畑さんからeラーニング担当者の苦悩を聞きつつ、考えてみれば筆者自身もそういった苦悩の中に8年間身を置いていたんだなあと昔を思い返してしまいました。

コメント・まとめ
3つの発表とも、大学の授業をよりよいものにするため、eを活用した前向きな実践をされており感銘しました。

村上先生は授業映像をもとに振り返りをさせていますが、筆者の授業は無駄話ばかりなので、これをビデオに撮影し・分割していったら、学生が要約するとほとんど何も残らないのではないかと思ってしまいました。そういう意味では学生の学びを喚起するだけでなく、教員の授業スキル向上にも貢献するシステムなんでしょうね。

丹羽先生の話からは、あらためてLMSやeラーニングのユーザーインタフェースについて考えさせられました。教える側、学ぶ側双方にとって使いやすいデザインは何なのか?今までのLMSは本当にユーザーの利便性を考慮したインターフェースになっていたのだろうか?そんなことをモヤモヤと考えてしまいました。

畑先生の発表の際、フロアから「同じ内容の授業を対面式とeラーニングで実施すると後者の方が授業評価も成績も高くなる」といったコメントがありました。実際きちんとしたIDerが入ってコンテンツを作れば対面授業であれeラーニングであれ良いモノができるのです。今回大手前大学に合田さんが加わったことで、そのあたりの質向上にかなり貢献したのだろうなあと考えた次第です。

最後までお読みいだだきありがとうございました。
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