Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.330:大山ミシュランプロジェクト?

2009年11月30日 | 授業のおはなし
枯れ葉の舞い散る季節の到来と同時に、そろそろ本メルマガもネタ枯れしてまいりました。そこで今回は筆者の日常-つまり現在担当している授業-について久しぶりに紹介したいと思います。今回はワークプレイスラーニングのコメンテーターとしてもお馴染みの長岡先生と一緒に担当している「マーケティングの実践」という授業の内容についてお伝えします。長岡先生や筆者を知っている人は、「なんであなた達がマーケティングの授業なんて担当しているの?」と思われるかもしれませんが、まあそれの疑問は3Km先に置いてお付き合いください。

◆「マーケティングの実践」授業の概要
この科目は情報マネジメント学部の中でマーケティング企画コースに進む2年生の選択必修科目となっています。履修者は約80人おりまして、長岡先生と筆者で40人ずつ担当しております。この授業は14週の授業の間に2社のゲストにご登壇いただき、その企業の生のマーケティング課題を提示してもらいます。それを学生が6人1チームに分かれて検討し、後日コンペ方式でプレゼンし、優勝チームを決めるという内容となっています。授業の流れは

第1週---クライアントからの提案
第2週---クライアントの各チーム毎への巡回指導
第3週---企画内容の立案
第4週---企画書デザイン。プレゼン方法の検討
第5週---最終検討
第6週---クライアントに対してのプレゼン
第7週---活動・企画内容・企画デザインのリフレクション

となっており、これを2サイクル回します。今までこの授業にご協力いただいた企業は、小田原にある鈴廣かまぼこ様、表参道にあるパーツケアビジネスのリューヴィ様、そして先週より取り組んでいる大山先導師会旅館組合の2社1組合となっています。


◆大山ミシュランプロジェクト?
さて、今回取り組みにご協力いただいている大山先導師会旅館組合様ですが、我々の大学の裏にある大山の旅館組合さんです。今回の取り組みは「大山ミシュランプロジェクト」略してOMPと名付けて開始しました。

かつては関東きっての霊峰として名高かった大山ですが、近年観光客の高齢化や日帰り化が進み、やや停滞ぎみとなっております。そこでOMPは観光地としての大山の活性化を目指し、地元の皆さんと学生が一緒になって活動するプロジェクトを目指しております。

なぜミシュランなのか?と申しますと、それは下記の記事を発見したことに
端を発します。
高尾山が“ミシュラン”三つ星観光地に(八王子市)
高尾山は東京八王子の西に位置する山ですが、なんと今年「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で三つ星の観光地としての評価を獲得したのです。東京からの距離はそんなに変わらない高尾山が三つ星なのに、なぜ我々の大山は星一つすらないのか?大山もいつかはミシュランの星を取ろうという思いをこめて「大山ミシュランプロジェクト」と命名しました。


◆自転車通勤での発見

話は少し飛びますが、現在筆者は小田急線伊勢原駅から大学キャンパスまで
の約20分のバス通りを自転車で通っています。途中バス通りが細くなり自転車で走るとやや危険な区間があるので、そこは裏道を通るようにしています。
この裏道が中々風情がありまして、1mぐらいの小川沿いに畦道を舗装したような道が続いています。あまりにいい感じの道なので調べてみると、江戸時代「大山道」といわれている街道だったのです。

江戸時代、大山は庶民にとって一番の信仰の山であり、最も訪れたい観光地でした。各地から大山に向かう道が「大山道」と言われており、その一つが今の国道246号線です。筆者の見つけた風情のある道は昔からの名残を残す街道の姿でした。下記のBlog「C^ielblogo:biciklado kaj vojag^o」に写真が掲載されておりますので、雰囲気をお確かめください。
http://blog.livedoor.jp/malmondo/archives/51194186.html

そのような発見から、江戸の昔から由緒正しい観光地だった大山がミシュランに選ばれないのは悔しい。学生と一緒にその魅力を伝える方法を考え、観光地としての活性化ができたらいいなあという思いが芽生え、今回の授業につながりました。


◆学生の地元志向
筆者の独善でテーマを決めたかのように思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。本学の情報マネジメント学部の学生の大半は神奈川県の中・西部を中心とした地元出身者が占めています。地元から大学に進学した彼らにはあまり都会志向がありません。満員の小田急線に1時間半ゆられて都会の大学や会社には行きたくない。だから地元の大学を選択した。できれば地元の企業に就職し、近隣の友人との繋がりを大事にしていきたいという学生が多いのです。とするならば、地元をテーマにした課題であればきっと興味を持って取り組んでくれる筈と考えこのテーマでいくことにしました。


◆クライアントからの課題提示
先週大山先導師会旅館組合の組合長の内海様に講義をお願いし、大山観光の動向、大山の麓にある旅館の現状についてお話しいただきました。加えて名産の「大山とうふ」や「きゃらぶき」もご用意いただき、スーパーの豆腐と食べ比べる「利き豆腐」も行いました。学生たちは授業に食べ物が入ると盛り上がります。

そして、今回大山先導師会旅館組合の方に出していただいた「お題」は
「継続して宿泊してくれる若い世代の顧客層の開拓」です。
具体的には「週末大山に1泊2日の旅に出掛けるカッコイイ人のショートストーリー」を考えさせています。

条件としては
・主人公は男女不問
・ただし登場するカッコイイ人のプロフィールを呆れるぐらいに細かく、かつオモシロク検討することが条件
・旅行は一人旅、カップル、家族、会社の仲間、学校の同窓生等問わない
・ストーリー(ある週末)のディテールにこだわること!
・そのストーリーを聞いた後、「ああ大山に宿泊するのっていいなあ、僕(私)も行ってみようかなあ」と思わせることがポイント。
としています。

なお企画には
1)今回描いた「カッコイイ人」を演じる俳優
2)ストーリーのイメージにあった大山の宿坊のキャッチコピー
を盛り込むこととなっています。

「なんか、いい加減な課題だなあ」と思われる方がいらっしゃるかも知れませんが、これは「ペルソナ法」というマーケティング手法の一つを用いています。この分野の第一人者であるアラン・クーパー氏は

「幅広いユーザー層を満足させる製品をつくろうとしたら、理屈からいえば、機能をなるべく多くして、最大の人間に対応できるようにするべきだということになる。この理屈は間違っている。たった一人のためにデザインした方がずっと成功するのだ」
とペルソナ法の利点について語っています(『コンピュータはむずかしすぎて使えない!』アラン・クーパー、2000、 翔泳社、p.226)。

これだけの指示で学生にどれだけの企画案ができるか不安に思われるかもしれませんが、昨年鈴廣様の蒲鉾で同様の課題を提示した際は、そこそこ面白い企画ができていたので、まあ今年も大丈夫ではないかと期待しております。


◆今後の展開&地域社会と連携した学びの場づくり
コンペ(プレゼン)は年明け1月13日の授業となります。
まずは手始めに23日(明日)に任意ですが「大山紅葉ライトアップ」に学生を連れて行ってきます。


コンペの内容はともかく、まずは地域社会との接点を作っていきたいと考えています。昨今大学改革を「学生-職員-教員」という三者の関係性だけで語るケースが多いのですが、筆者は大学という小さい村社会の中で三者の調和が保てたとしても、「社会」という外部からその活動をみた時、その活動に疑問符がつくようであれば、まずいと考えます。特に産能大のように産学協同を大学の理念として掲げている場合、大学で行われている教育・研究が「社会(地域社会、企業社会 etc.)」に役立ってなんぼのものではないかと思うのです。ですから「学生-職員-教員」プラス「(地域)社会」を巻き込んで大学の活動は続けていきたいと思います。

また、この科目の延長として3年次のゼミでも「大山」を取り上げ、地元の皆さんと一緒に学び、大山の活性化とミシュランの星獲得を目指したいと考えています。OMPのこれからの活動経過については、いつか本メルマガにてご報告していきたいと思います。

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