e-Learning world2006直前に、大学院のレポートを書きつつ、いかにメルマガ
の記事を書く時間を確保するか?その問題解決のために、現在受講中の「大学
eラーニング戦略論」(詳細http://www2.obirin.ac.jp/~ksuzuki/data/2006Sp
ring.pdf)のレポートをメルマガに流用する作戦の第四弾、今回最終回は熊本
大学VS青山学院ELPCOについてお伝えします。
実は、この前に北海道情報大学の授業と視察があったのですが、私事で参加で
きなかったため、パスすることになりました。北海道情報大学の関連企業のSC
Cさんには知り合いが結構いるので、もしかしたらこのメルマガを見て激怒さ
れているかもしれませんが、許してやってください。金欠かつとてもこの忙し
い中、自腹でWeekDayに北海道まで視察に行くことができなかったのです。
今回、最終回の授業では今までの「eラーニングで教育している大学」
という視点から「eラーニングを教育している大学」と趣向を変え、熊本大学
大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻と青山学院大学総合研究所e
ラーニング人材育成研究センター(eLPCO)の活動の比較研究ということになり
ました。
青学には先日訪問し色々とお話を聞いてまいりました。玉木先生をはじめとす
るELPCOの皆様お忙しい中、丁寧にご対応いただきありがとうございました。
また、熊本大学に関しては、現在教授システム学専攻で学んでいる私の知人S
さんに特別ゲストとして授業に参加いただき、学生の視点から色々なことを教
えていただくことができました。Sさん、課題の締め切りが迫る中、授業に出
席いただきありがとうございました。
さて、早速ですが2つの「eラーニングを教育している大学」の比較というこ
とで、「受講対象者」「教育方法」「教育対象領域」の3つの視点で考察して
みたいと思います。なお両校の詳細につきましては、下記Webサイトをご覧く
ださい。
青山学院大学総合研究所
eラーニング人材育成研究センター(eLPCO)
http://elpco.a2en.aoyama.ac.jp/gp/index.html
熊本大学大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻
http://gsis.kumamoto-u.ac.jp/
受講対象者
熊本大学では2006年より大学院として、インストラクショナル・デザイン系のe
ラーニング専門家養成を開始しています。初年度の入学者は15人、その内訳は、
すべて有職者と聞いています。また、学生の多くは首都圏等に在住しており、
熊本に住んでいる学生は1人と聞いています。
一方青学のELPCOは、青山学院の学部の学生に対してeラーニングの専門家を養
成するコースを提供しています。現在の受講者数は172人、約半分が第一文学
部の学生さんということです。また07年は科目数も倍増する等の関係から400
人ぐらいを見込んでいるということです。当然ながら全員日常的に青山キャン
パスに通う学生さんたちです。
熊大は社会人、青学は学生。熊大は修士課程、青学は学士課程、熊大は遠隔地
分散、青学は首都圏在中通学生と受講対象者が異なる点が両者の一番の違いと
いえます。そしてこの違いが教育対象領域や教育方法に対しても影響していま
す。一言で言えば学習に対する動機づけの強さの違いと言えるでしょう。
私自身、現在社会人大学院生として学習している身なのでよく分るのですが、
自腹で仕事や家庭の忙しい中、それでも学習すると決心した動機は、20年前に
親のスネをかじって大学に行っていた時よりもはるかに強いものです。たまに
はやる気も萎えますが(~_~)。
こうした対象者の違いが、次の「教育方法」にもかなり色濃く影響しているの
ではないかと考えています。
教育方法
熊大では、SOUSEKIと呼ばれる自作の学習ポータルサイトの上に乗っかってい
るWeb-CTというシステムで学ぶことになっています。学習の方法としては、講
師の講義映像を何十分も視聴して・・・という授業スタイルは今のところあま
りありません。2単位の科目の場合、だいたい15のタスク(=教室授業でいう
ところの週1回の90分の授業+予復習に近い)を持っており、その15回の
各々に小テストやディスカッションのテーマが用意されています。私は今まで
色々なWeb上のディスカッションを見てきましたが、量的にも質的にもここま
で突っ込んでディスカッションをしている授業は見たことがありません。前述
のモチベーションのなせる業なのか?とにかく活性化という甘い次元をはるか
に超越しています。
一方、青学での学習パターンは、3つの入門科目の場合、ビデオオンデマンド
の授業コンテンツ(10分区切りのもの)+毎回の確認テスト+対面授業といっ
たブレンディング形式になっています。通学している学生の強みを活かして教
室での授業をを取り入れられるところが大きな特徴といえます。
また、青学では学生の学習継続のためのメンタリングをしっかりやっている点
が大きな特徴といえます。AENでの実証実験等から、eラーニングのドロップア
ウトについての知見が蓄えられており、有効なタイミングでのメンタリングが
実施されている点が大きいといえます。
教育対象領域
同じインストラクショナルデザイン、同じeラーニングであっても、どこか少
しずつ違うような気がしていたのですが、今回その違いがおぼろげながら分っ
てきました。
熊大は、インストラクショナルデザインや学習科学、教育工学といった理論を
バックボーンをベースにより実践的な内容にしていこうと目指しているのに対
し、青学はAMLプロジェクトA2ENプロジェクトといった実践がまず先にあって、
そこからスキル体系や知識を導き出しています。
また、熊大の鈴木先生が教育学を、青学の玉木先生は経営学をバックボーンに
しているあたりも両者の違いの源にあるのではないかと推察しています。
そして、「同じ山を別のルートから登っているようなもので頂上はどちらも同
じ」といった例えで当初は考えでいたのですが、山頂も両者で微妙に異なって
いると感じています。熊大では企業経営や教育機関の中でのeラーニングの位
置づけといった政策的な視点がIM等の科目の中で重視されているのに対し、青
学では、とにかくeラーニングというものを組織でまわしていくための「運用
力」の向上に力を入れています(メンターや、ラーニングシステムプロデュー
サなど)。どちらも頂上で重要なので、奇しくもお互いにうまく住み分けがで
きていると感じた次第です。
学生が創る
最後になりますが、両者の話を聞いていて一番興味深かったのは「学生と一緒
になって作っている」という点です。教師、メンター、学生、運営スタッフが
一緒になってよい教育にしていく姿が2つの大学に見られました。今まで「教
師」「メンター」「運営スタッフ」といった教える側ばかりを考えていました
が、そこに参画している学生が学びを通じてeラーニングを作っているのだと
いうことを認識しました。
今後、ELPCOで学んだ人がeラーニングに興味を持ったのがきっかけとなって、
熊本大学の修士に進み、卒業後eラーニング業界の中で華々しく活躍するなん
ていう事が起こる日も近いかもしれませんし、ぜひ期待したいです。
の記事を書く時間を確保するか?その問題解決のために、現在受講中の「大学
eラーニング戦略論」(詳細http://www2.obirin.ac.jp/~ksuzuki/data/2006Sp
ring.pdf)のレポートをメルマガに流用する作戦の第四弾、今回最終回は熊本
大学VS青山学院ELPCOについてお伝えします。
実は、この前に北海道情報大学の授業と視察があったのですが、私事で参加で
きなかったため、パスすることになりました。北海道情報大学の関連企業のSC
Cさんには知り合いが結構いるので、もしかしたらこのメルマガを見て激怒さ
れているかもしれませんが、許してやってください。金欠かつとてもこの忙し
い中、自腹でWeekDayに北海道まで視察に行くことができなかったのです。
今回、最終回の授業では今までの「eラーニングで教育している大学」
という視点から「eラーニングを教育している大学」と趣向を変え、熊本大学
大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻と青山学院大学総合研究所e
ラーニング人材育成研究センター(eLPCO)の活動の比較研究ということになり
ました。
青学には先日訪問し色々とお話を聞いてまいりました。玉木先生をはじめとす
るELPCOの皆様お忙しい中、丁寧にご対応いただきありがとうございました。
また、熊本大学に関しては、現在教授システム学専攻で学んでいる私の知人S
さんに特別ゲストとして授業に参加いただき、学生の視点から色々なことを教
えていただくことができました。Sさん、課題の締め切りが迫る中、授業に出
席いただきありがとうございました。
さて、早速ですが2つの「eラーニングを教育している大学」の比較というこ
とで、「受講対象者」「教育方法」「教育対象領域」の3つの視点で考察して
みたいと思います。なお両校の詳細につきましては、下記Webサイトをご覧く
ださい。
青山学院大学総合研究所
eラーニング人材育成研究センター(eLPCO)
http://elpco.a2en.aoyama.ac.jp/gp/index.html
熊本大学大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻
http://gsis.kumamoto-u.ac.jp/
受講対象者
熊本大学では2006年より大学院として、インストラクショナル・デザイン系のe
ラーニング専門家養成を開始しています。初年度の入学者は15人、その内訳は、
すべて有職者と聞いています。また、学生の多くは首都圏等に在住しており、
熊本に住んでいる学生は1人と聞いています。
一方青学のELPCOは、青山学院の学部の学生に対してeラーニングの専門家を養
成するコースを提供しています。現在の受講者数は172人、約半分が第一文学
部の学生さんということです。また07年は科目数も倍増する等の関係から400
人ぐらいを見込んでいるということです。当然ながら全員日常的に青山キャン
パスに通う学生さんたちです。
熊大は社会人、青学は学生。熊大は修士課程、青学は学士課程、熊大は遠隔地
分散、青学は首都圏在中通学生と受講対象者が異なる点が両者の一番の違いと
いえます。そしてこの違いが教育対象領域や教育方法に対しても影響していま
す。一言で言えば学習に対する動機づけの強さの違いと言えるでしょう。
私自身、現在社会人大学院生として学習している身なのでよく分るのですが、
自腹で仕事や家庭の忙しい中、それでも学習すると決心した動機は、20年前に
親のスネをかじって大学に行っていた時よりもはるかに強いものです。たまに
はやる気も萎えますが(~_~)。
こうした対象者の違いが、次の「教育方法」にもかなり色濃く影響しているの
ではないかと考えています。
教育方法
熊大では、SOUSEKIと呼ばれる自作の学習ポータルサイトの上に乗っかってい
るWeb-CTというシステムで学ぶことになっています。学習の方法としては、講
師の講義映像を何十分も視聴して・・・という授業スタイルは今のところあま
りありません。2単位の科目の場合、だいたい15のタスク(=教室授業でいう
ところの週1回の90分の授業+予復習に近い)を持っており、その15回の
各々に小テストやディスカッションのテーマが用意されています。私は今まで
色々なWeb上のディスカッションを見てきましたが、量的にも質的にもここま
で突っ込んでディスカッションをしている授業は見たことがありません。前述
のモチベーションのなせる業なのか?とにかく活性化という甘い次元をはるか
に超越しています。
一方、青学での学習パターンは、3つの入門科目の場合、ビデオオンデマンド
の授業コンテンツ(10分区切りのもの)+毎回の確認テスト+対面授業といっ
たブレンディング形式になっています。通学している学生の強みを活かして教
室での授業をを取り入れられるところが大きな特徴といえます。
また、青学では学生の学習継続のためのメンタリングをしっかりやっている点
が大きな特徴といえます。AENでの実証実験等から、eラーニングのドロップア
ウトについての知見が蓄えられており、有効なタイミングでのメンタリングが
実施されている点が大きいといえます。
教育対象領域
同じインストラクショナルデザイン、同じeラーニングであっても、どこか少
しずつ違うような気がしていたのですが、今回その違いがおぼろげながら分っ
てきました。
熊大は、インストラクショナルデザインや学習科学、教育工学といった理論を
バックボーンをベースにより実践的な内容にしていこうと目指しているのに対
し、青学はAMLプロジェクトA2ENプロジェクトといった実践がまず先にあって、
そこからスキル体系や知識を導き出しています。
また、熊大の鈴木先生が教育学を、青学の玉木先生は経営学をバックボーンに
しているあたりも両者の違いの源にあるのではないかと推察しています。
そして、「同じ山を別のルートから登っているようなもので頂上はどちらも同
じ」といった例えで当初は考えでいたのですが、山頂も両者で微妙に異なって
いると感じています。熊大では企業経営や教育機関の中でのeラーニングの位
置づけといった政策的な視点がIM等の科目の中で重視されているのに対し、青
学では、とにかくeラーニングというものを組織でまわしていくための「運用
力」の向上に力を入れています(メンターや、ラーニングシステムプロデュー
サなど)。どちらも頂上で重要なので、奇しくもお互いにうまく住み分けがで
きていると感じた次第です。
学生が創る
最後になりますが、両者の話を聞いていて一番興味深かったのは「学生と一緒
になって作っている」という点です。教師、メンター、学生、運営スタッフが
一緒になってよい教育にしていく姿が2つの大学に見られました。今まで「教
師」「メンター」「運営スタッフ」といった教える側ばかりを考えていました
が、そこに参画している学生が学びを通じてeラーニングを作っているのだと
いうことを認識しました。
今後、ELPCOで学んだ人がeラーニングに興味を持ったのがきっかけとなって、
熊本大学の修士に進み、卒業後eラーニング業界の中で華々しく活躍するなん
ていう事が起こる日も近いかもしれませんし、ぜひ期待したいです。
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