坂本龍、日本の整体

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【社】日本政治を整体す 第三章

2009-06-15 07:33:00 | 日記
            第三章 3.1
 【第三次改憲(9条改憲)について】

 55年体制下の自社対立とは、自社という空虚な二政党による空虚な
対立であった。そしてそれが長期間続いてしまった事が、日本丸泥舟化
の最大の原因だ。ではなぜその55年体制が1993年までの38年も
の長きに渡って続いてしまったのか。

 まず、野党の怠慢について述べたい。

 野党を腐らせた二つの原因、それはソ連社会主義と9条平和主義だ。
野党第一党であった日本社会党を支えていたのは二つのイデオロギーだ
った。ソ連を後ろ支えとしていた夢想的社会主義、そして、9条を後ろ
支えとしていた夢想的平和主義だ。
 「日本を社会主義国家にします。」
 「自衛隊は解散です。」
ただこの二つを叫んでいるだけで、金権スキャンダルを定期的に起こす
自民党へのお灸的な批判票を集票できた。政権獲得の能力も、そして気
力もない社会党が、自民党に次ぐ第二党、野党第一党という極めて重要
なポジションを獲得し続けた。野党が低能なら、与党も低能のまま安心
して惰眠をむさぼる事ができる。低能、腐敗、無責任の三拍子そろった
ままに。そしてそれが長期間にわたる日本政治の現実となった。
 
 2本の後ろ支えを失えば消えて無くなるような政党。自らの足で立つ
事すらできない政党。1991年のソ連崩壊による夢想的社会主義の終
焉と日本社会党の消滅。両者が前後して起こったのは決して偶然ではな
い。残りの一本の柱、憲法9条を改定すれば、いまだに空虚な夢想に自
閉し続ける社会民主党と日本共産党を完全に葬り去る事が出来る。

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            第三章 3.2

 次に、与党の退廃について述べる。

 与党を腐らせたその原因、それは中選挙区制だ。

 この世界に類例のない劣悪な選挙制度は、その必然として一つの中選
挙区内での自民党候補者間の同士討ちを生んだ。それは、
 政党――党首――政策
を軸とする国策への「旗色」を明確化した「旗色選挙」ではなく、
 地元後援会――利益誘導・既得権益護持
という地元の「顔色」をうかがうばかりの「顔色選挙」をもたらした。
政党が同じなら党是、基本政策も同じであり、それでは他の自民党候補
との差別化をはかれない。ゆえに
 「あの道路は私が作りました。」
 「あのダムは私が作りました。」
というような地元への利益誘導競争に成り果てた。

 そして財政規律は破壊した。自民党が公認を出す選考基準は地元の顔
色うかがいに長けた者、地元への利益誘導に長けた者という基準だった。
なぜ自民党に二世議員や元議員秘書が多いのかといえば、オヤジの作っ
た後援会、それは利益誘導と集金・集票のバーター組織なのだが、その
バーター機能を最も漏れなく継承できるのが二世や秘書であるからだ。
国政を担うにふさわい人物という当然の選考基準は、この日本において
未だ当然ではない。安倍晋三→福田→麻生というバカボン、アホボン達
がたったの1年で政権を放り出したのを見れば、ジュニア達のクオリティ
の低さは明らかだ。あの反逆の風雲児、小泉純一郎ですら、ジュニアを
後継にする、それが自民党なのだ。もはな自民は死ななければ治らない
所まで、自民の体質は堕落しきっているといえよう。

 財政危機と少子高齢化

 日本がサステイナブルである事を阻む主要な二つの問題は、改善をみ
ぬままに、いや、より悪化した形でオヤジ世代からジュニア世代へと継承
されてしまった。

 ソ連社会主義と9条平和主義が野党を蝕み、中選挙区制が与党を蝕ん
だ。ソ連は1991年に解体した。中選挙区制は1993年に破棄され
た。残すは憲法9条のみである。さらに言うならば、9条は日本の過去
を腐らせただけではなく、未来へのリスクでもあるのだ。以下に9条が
過去と未来に及ぼすマイナスの影響について述べる。

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            第三章 3.3
       
 過去を腐らせた9条、「9条=禁酒法論」

「進歩のない者は決して勝たない。負けて目覚めることが最上の道だ。
日本は進歩ということを軽んじすぎた。私的な潔癖や徳義にこだわって、
真の進歩を忘れていた。敗れて目覚める。それ以外に、どうして日本は
救われるか。今、目覚めずしていつ救われるか。俺たちは、その先導に
なるのだ。日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃないか。」
                  吉田満、著『戦艦大和ノ最期』より

第一の敗戦は、神格天皇制憲法の、その惰性がもたらしたのだ。
第二の敗戦は、空想的平和主義憲法の、その惰性がもたらしたものだ。

 戦前右翼の、日本国は天皇を頂く世界に唯一の国体を有すという、
その国粋の独善。
 戦後左翼の、日本国は九条を頂く世界に唯一の国体を有すという、
その国粋の独善。

 両者は正反対に見えて、実は同じ穴の双子のムジナにすぎない。戦前
右翼という軍国主義、戦後左翼という平和主義。それらは双子の兄弟に
過ぎないという、鏡像の逆説。現実よりも夢想に自閉し独善に寄生し続け
る。そんな夢想とそれへの自閉的寄生が、国家と国民に致命的な禍をも
たらした。

 理想を掲げる、ただそれだけならかまわない。例えそれがどんなに現
実離れしたとんでもない理想であったとしても。しかし決してそのよう
な理想で現実を縛ってはならない。そんな法令を作ってはならない。な
ぜならば、そんな法令を作ったら、現実が現実に対して適切に対応でき
なくなってしまうからだ。現実が現実に対して現実のために現実的に対
応しようとすれば、それが違法となってしまうからだ。

 禁酒法を例に考えてみよう。

酒は家庭内暴力を引き起こす事もある。
酔っ払ったがゆえの犯罪もある。
酔っ払い運転によって引き起こされた事故もある。
肝臓に障害をもたらす事もある。
アルコール依存症の原因にもなる。
そしてそれは家庭崩壊の原因となる。

これは確かに現実だ。しかし多くの人が圧倒的に酒を需要する、これも
また現実なのだ。その酒が、ピューリタン的潔癖と夢想ゆえに、合衆国
憲法によって禁止されたのだ。酒の供給が禁止されたのだ。酒の輸入、
製造、販売が禁止されたのだ。しかし現実、それらは全て密輸、密造、
密売という違法行為に代替されただけだった。違法行為を違法行為と知
ってそれをやる者達、それはもはやカタギではありえない。アルカポネ
に象徴されるマフィア達だった。マフィアは酒の密輸、密造、密売とい
う極めて楽な方法で莫大なカネをかき集められた。禁酒法はマフィアに
莫大なカネをもたらした。そのカネでマフィアはメディアを、警察を、
検察を、そして、裁判官を買収していった。密告するものに死を。腐敗
しゆくアメリカ社会。マフィアはアメリカ社会に広くそしてより深く根
を下ろしていった。根の浅い草木ならば抜くのも簡単だろう。しかしい
ったん根を広く深く広げた草木を抜く事は極めて困難だ。そしてそれは
現在においてもアメリカ社会に巣食い、ぬぐえない禍根を残している。

 マフィアを追求する過程でFBIは影響力を強め過ぎ、ジョン・エド
ガー・フーヴァーというFBIの終身長官を産み落としてしまう。国家
警察たるFBI長官が終身職。FBIの組織を使い歴代大統領の弱みを
握る事により、自分のクビを守る。FBI長官の座に居座り続けた男。
禁酒法は、何たる奇形児をもまた産み落としてしまったのか。

 憲法9条という夢想。
戦後日本は、そんなモノで現実を縛ってしまったのだ。現実が現実に対
して現実のために現実的に対応するための組織、自衛隊は、違憲の存在
となった。

 「憲法9条を守れ!」
 「自衛隊は違憲だ!」
 「自衛隊即時解散!」
 「非武装!」
 「戦闘機一機を買うカネで、学校が30校も新たに作れるんだぞ!」

 55年体制の自社対立の時代、GDPすなわち経済規模において世界
192ヶ国中第二位の日本国の、その天下の国会予算委員会で、こんな
小学生、中学生レヴェルの議論が続けられた。こんな議論のために、貴
重な審議時間が浪費され続け、ドブに捨てられ続けた。国家の最高法規
たる憲法。その憲法9条を後ろ盾にするがゆえに、そんな低レベルな議
論しか出来ない日本社会党が、天下の第二党、野党第一党の地位に居座
り続ける事を許された。

 その間にも政府予算は、公共工事で蝕まれ、談合で蝕まれ、道路特定
財源で蝕まれ、特別会計で蝕まれ続けた。そして国、地方の政府は80
0兆円もの借金を抱えたまま、世界最速のスピードで少子高齢化社会に
突入する。人口減少国家日本。自殺者は年間三万人を越える。まさに、
第二の敗戦である。

 9条平和主義という夢想への自閉、それがもたらした第二の敗戦によ
る犠牲者たちの、年間三万人の自殺者達の遺言を聴け。

「進歩のない者は決して勝たない。負けて目覚めることが最上の道だ。
日本は進歩ということを軽んじすぎた。【9条という】私的な潔癖や徳
義にこだわって、真の進歩を忘れていた。敗れて目覚める。それ以外に、
どうして日本は救われるか。今、目覚めずしていつ救われるか。俺たち
は、その先導になるのだ。日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃ
ないか。」

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            第三章 3.4

 未来へのリスク、「9条=割れ窓論」

 憲法9条、それは、立憲国家の、一枚の割れ窓である、放置するには
あまりにも危険な我れ窓だ。

 そもそもが立憲主義の国家、立憲国家とは何か。国権(国家権力)は
時として暴走するという古今東西にみられる一つの真実。それを抑止す
るために考え出された様々な工夫のうちの一つである。物質面、制度面
の両面ある近代の恩恵の、制度面における重要な成果である。

 立憲主義とは、国家権力の上位に憲法を置きその憲法によりにより国
家権力を制御しようとする思想、制度の事だ。またそれまで国家権力を
独占的に有していた政府(まつりごとの府)から、行政権限だけを残し、
立法権限と司法権限を引き剥がし立法府、司法府を作った。国権を三権
の府に分け、互いの相互抑制によって国家権力の暴走を防ぐ工夫も導入
された。

              憲 法
               |
               ↓
    ―――――――――――――――――
   | 立法府 | 行政府 | 司法府   |
    ―――――――――――――――――
      | ↑     | ↑    | ↑
      ↓ |     ↓ |    ↓ |
 ―――――――――――――――――――――
|       国           民         |
 ―――――――――――――――――――――

 しかし憲法第9条に武力の放棄がうたわれているのにもかかわらず、
戦後一貫して行政権限と立法権限とを牛耳る自民党政権は、立法府にお
いて自衛隊関連法令を立法し、政府軍としての自衛隊を組織してきた。

 これは明らかなる憲法違反であり、立憲主義の蹂躙である。この立法
府と行政府による憲法蹂躙を阻止すべき司法府は、統治行為論を言い訳
に、この違憲行為の前にフリーズ、冬眠するのみであった。

現状、政府が保持する政府軍を律しているのは以下の二つだけだ。

①行政府に内閣を送り出している立法府多数派の与党。
②内閣法制局による憲法解釈。
 政府軍は行政府の一部である。その行政府の総司令部が内閣である。
 その内閣の下部部門に過ぎない内閣法制局による憲法解釈。しかし
 内閣法制局は、戦後ずっと解釈改憲による憲法蹂躙を常としてきた。

 つまり、政府軍を律しているのは与党だけという事である。もし政権
与党が集団的自衛権行使に踏み切ったとしても、また侵略戦争に踏み切
ったとしても、司法府が違憲判決を出す保証は何処にも無い。再び統治
行為論を言い訳に憲法判断から逃避するかもしれない。解釈改憲による
集団的自衛権の行使を目撃しても、我らが司法府が冬眠から目覚る可能
性は、低い。

 今現在日本には、立憲主義による「憲法が国家権力の軍事行使を制御
する。」という構造が無い。これは大日本帝国憲法にあった欠陥と同じ
なのだ。

 徳川政府(幕府とは武士によって構成される政府という意味)から、
クーデターによって政権奪取してできた薩長藩閥・明治新政府。その明
治の時代の大日本帝国憲法においても、立法権限、行政権限、司法権限
の三権分立がうたわれていた。軍隊は、政府軍として行政府の一組織に
過ぎず、統帥権限は行政権限の一部に過ぎないという位置づけだった。
実際、日清、日露、そして第一次世界大戦はそうして行われた。しかし
昭和に入り統帥権限が「統帥権の独立」の名のもとに、行政権限の下か
ら離脱し、三権以外の権力「天皇大権」の下に組み込まれてしまった。
そして天皇大権の下の統帥権限は神聖不可侵のスーパーパワーとして何
ものからも制限されなくなった。昭和天皇もまた天皇親政を嫌ってノー
タッチだったのだから。

 大正デモクラシーは男子普通選挙法に結実した。しかしさらに進んで
大日本帝国憲法を改憲しこの欠陥の穴が埋められていたとしたら。昭和
の最初の20年史はまったく違ったものに成っていただろう。

 憲法第9条、それは憲法、いやそれどころか立憲国家というビルに開
いた、一枚の割れ窓である。割れ窓理論によれば、一枚の割れ窓を放置
すれば、次の一枚、さらに次のもう一枚の窓が割られるリスクが高まる。
一枚の割れ窓は直ちに修復する事により次の一枚が割られるリスクが低
下する。落書きを放置すればさらなる落書きを呼び寄せる。ジュリアー
ニ元NY市長は、ストリートの割れ窓、落書き、軽犯罪を徹底的に修復、
取り締まる事により、凶悪犯罪の発生率を下げ、治安を向上させた。

 もう一度言おう。憲法第9条は、憲法、いや、それどころか立憲国家
というビルに開いた一枚の割れ窓である。そのビルには、1億3000
万人の住人が生活している。その一枚の割れ窓の放置は、憲法モラルハ
ザード、立憲主義モラルハザードを生むだろう。

 日本では、リベラルと称する人達ほど9条を守ろうとするのは何たる
倒錯か。左のリベラリズムとは、自然権としての人権を、国権との対立
においてより重視する立場の事だ。ならば国権が人権を過度に浸食しな
いよう立憲主義によって国権を厳重に縛る事を志向しなければならない。
ならば直ちに9条という、この立憲主義に開いた割れ窓をふさごうとし
なければならない。しかし日本の多くのリベラル派は、立憲主義よりも
9条を守ろうとする。9条という枝葉を守ろうとして、立憲主義という
根幹を危うい状態のまま放置し続ける。その姿は、あまりにも滑稽であ
る。そして滑稽であるばかりではなく、危険なのだ。

 軍国主義とは軍事主義(ミリタリズム)と国家主義(ナショナリズム)
の合体したものだ。戦中の日本は、この軍国主義という暗黒時代に幽閉
されてしまった。ゆえに戦後の日本は、この戦前軍国主義へのへ反発と
しての、戦後平和主義に支配された。そして憲法は戦後平和主義という
思想の下僕となった。しかし本来、憲法とは立憲主義という思想の下僕
のはずなのだ。この国家の根幹の歪みもまた、本来の姿へと早急に整体
しなければならない。

 自衛隊は憲法第9条に違反する。この一つの違憲状態、この一枚の割
れ窓を直ちに修復しなければならない。自衛隊が必要な以上、憲法9条
を改定する以外の選択肢は無いのだ。

 では以下にこの割れ窓をふさぐべく9条改憲案を例示する。

①日本国は、個別的自衛権を持ち、行使できる。
②日本国は、集団的自衛権を持つが、行使できない。
⑤日本国政府は、個別的自衛権行使のための最低限の陸海空軍その他の
 戦力を所有できる。

 これが少なくともこれから十年間ほどの日本の現実的な軍事の枠組み
だろう。これを裏づけするような憲法改正が一日もはやく必要だ。今す
ぐ直ちに。次の窓が割れれてしまう前に。

 石原慎太郎東京都知事は、都議会において
 「占領憲法など国会の過半数で破棄せよ。」
と言った。そんな悪しき前例を作ったのならば、そうして作られた新憲
法もまた国会の過半数で破棄されるかもしれないのにだ。憲法を国会の
過半数で破棄。その思想は、ヒトラーの全権委任法まで、あと一歩の所
にある。

 憲法モラルハザード、立憲主義モラルハザードを放置する、その行方
にあるものは何か。ヒトラーならば、薄笑いを浮かべながらこう言って
のけるだろう。

 「憲法など、紙の上のインクのシミに過ぎないのだよ。」


日本政治を整体す 第四章
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