「テツオさんねぇ。もしあなたさえ良かったら、家に泊まっていってもいいわよ。この家の脇に物置があったでしょう」
「ああ。右側の二階建ての・・・」
「そう。今は使っていないけど、私と夫がここに引っ越してきたばかりの時に住んでいた家なのよ。そこなら、あなたひとりくらいいつまで使っていても大丈夫だから・・・・」
「・・・・・」
「そうしない?」
テツオさんは、下を向いたまましばらく何かを考えていた。
「僕みたいに、突然来た人をいつも泊めるんですか?」
「とーんでもない。あなたはとってもいい人みたいだし・・・。それに・・・・。あなたはひょっとして家出してきたんじゃなぁい?」
「・・・・・」
「お金もなくなっちゃったんでしょう?あなたにお金をあげることは出来ないけど、食べ物は畑で作ってるし、寝泊まりする家もあるから、しばらく泊まってもいいかなぁって思ったのよ」
「本当にいいんですか」
「嘘をいっても仕方ないでしょう。ただし、私のお手伝いをすること。というのが条件になるけど・・・・」
「そう言ってもらえるだけで、夢のようです」
「それじゃあいいわね!」
「はい。よろしくお願いします」
とっても嬉しそうな笑顔でヨネさんに頭を下げたテツオさんは、味噌まみれになった右手をどうしようもなく遊ばせていた。
「テツオさんねぇ。手についた味噌はなめるのよ。少しのものでももったいないんだからネッ」
「はいッ」
テツオさんは、私がいつも身繕いするときに、舌で体中をなめるのと同じように、手のひらをなめた。テツオさんは、私の仲間になった。
「それじゃあさっそく泊まる所へ行きましょう」
「はい」
ヨネさんと、テツオさんと私は、ヨネさんとせいきちさんが昔使っていた家へ行った。
物置の二階になっているヨネさんたちが使っていた家は、モダンなソファーや家具が置かれていた。
「この家具は、私の夫が好きで集めた物なの。マンションから引っ越して来る時に、持ってきたの。テツオさん。自由に使ってかまわないから遠慮しないでネッ」
「はいッ」
ヨネさんは、ソファーが置いてあるリビング奥のドアを開けると寝室になっていた。寝室には、ベッドが二つ置いてある。
「布団は干さないといけないかもしれないわね」
ヨネさんは、クローゼットから敷布と枕、掛け布団を出して、リビングの吐き出し窓を開け、ベランダの柵に掛け布団を干した。この家は、外から入ってリビングがあり、リビング奥の右側がドアがついた寝室、リビング奥左側がキッチン、キッチンの奥に洗面所・洗濯スペース・バス・トイレになっている。バスとトイレには、寝室から直接入れるドアがついていた。
「テツオさんがその気になってくれたのなら、あなたの家に連絡しておいたほうがいいわね。連絡しておくから電話番号教えてちょうだい」
テツオさんは、少し迷っているようだったけど、ヨネさんに自宅の電話番号を教えた。
「ここには、食べ物以外はそろっているから、お腹がすいたら声をかけてちょうだい。庭や畑で育っている野菜は自由に採って食べてもいいからネッ。野菜は減農薬でつくっているから、そのまま食べても大丈夫だから・・・・」
「そうなんですか?」
「そうよ。野菜を作っている農家は、出荷用に虫に食べられないようにたくさん農薬を使って育てるのと、自分たちが食べるぶんに、あまり農薬を使わない野菜を作り分けているのよ」
「へー。知らなかった」
「じゃあ。連絡しておくから自由にしていてね。陽がかげる前に布団を取り込んで寝られる用にベッドメイクしてネッ」
「はい」
テツオさんは、とっても素直だった。
母屋にもどったヨネさんが、テツオさんの自宅へ電話した。
「村内様のおたくでございましょうか?」
「ハイ」
「わたくし、佐伯と申します。突然のお電話で恐縮でございますが・・・」
ヨネさんは、何か言葉を選ぼうとしていた。
「何の御用でしょうか?」
「はい。お宅のご子息様がわたくし宅へいらっしゃって・・・」
「んーーーーもう。テツオったらァ」
電話に出たのはテツオさんのお母さんのようだったが、ヨネさんが話を続けようとする前にガチャンと切られてしまったのだった。
「ああ。右側の二階建ての・・・」
「そう。今は使っていないけど、私と夫がここに引っ越してきたばかりの時に住んでいた家なのよ。そこなら、あなたひとりくらいいつまで使っていても大丈夫だから・・・・」
「・・・・・」
「そうしない?」
テツオさんは、下を向いたまましばらく何かを考えていた。
「僕みたいに、突然来た人をいつも泊めるんですか?」
「とーんでもない。あなたはとってもいい人みたいだし・・・。それに・・・・。あなたはひょっとして家出してきたんじゃなぁい?」
「・・・・・」
「お金もなくなっちゃったんでしょう?あなたにお金をあげることは出来ないけど、食べ物は畑で作ってるし、寝泊まりする家もあるから、しばらく泊まってもいいかなぁって思ったのよ」
「本当にいいんですか」
「嘘をいっても仕方ないでしょう。ただし、私のお手伝いをすること。というのが条件になるけど・・・・」
「そう言ってもらえるだけで、夢のようです」
「それじゃあいいわね!」
「はい。よろしくお願いします」
とっても嬉しそうな笑顔でヨネさんに頭を下げたテツオさんは、味噌まみれになった右手をどうしようもなく遊ばせていた。
「テツオさんねぇ。手についた味噌はなめるのよ。少しのものでももったいないんだからネッ」
「はいッ」
テツオさんは、私がいつも身繕いするときに、舌で体中をなめるのと同じように、手のひらをなめた。テツオさんは、私の仲間になった。
「それじゃあさっそく泊まる所へ行きましょう」
「はい」
ヨネさんと、テツオさんと私は、ヨネさんとせいきちさんが昔使っていた家へ行った。
物置の二階になっているヨネさんたちが使っていた家は、モダンなソファーや家具が置かれていた。
「この家具は、私の夫が好きで集めた物なの。マンションから引っ越して来る時に、持ってきたの。テツオさん。自由に使ってかまわないから遠慮しないでネッ」
「はいッ」
ヨネさんは、ソファーが置いてあるリビング奥のドアを開けると寝室になっていた。寝室には、ベッドが二つ置いてある。
「布団は干さないといけないかもしれないわね」
ヨネさんは、クローゼットから敷布と枕、掛け布団を出して、リビングの吐き出し窓を開け、ベランダの柵に掛け布団を干した。この家は、外から入ってリビングがあり、リビング奥の右側がドアがついた寝室、リビング奥左側がキッチン、キッチンの奥に洗面所・洗濯スペース・バス・トイレになっている。バスとトイレには、寝室から直接入れるドアがついていた。
「テツオさんがその気になってくれたのなら、あなたの家に連絡しておいたほうがいいわね。連絡しておくから電話番号教えてちょうだい」
テツオさんは、少し迷っているようだったけど、ヨネさんに自宅の電話番号を教えた。
「ここには、食べ物以外はそろっているから、お腹がすいたら声をかけてちょうだい。庭や畑で育っている野菜は自由に採って食べてもいいからネッ。野菜は減農薬でつくっているから、そのまま食べても大丈夫だから・・・・」
「そうなんですか?」
「そうよ。野菜を作っている農家は、出荷用に虫に食べられないようにたくさん農薬を使って育てるのと、自分たちが食べるぶんに、あまり農薬を使わない野菜を作り分けているのよ」
「へー。知らなかった」
「じゃあ。連絡しておくから自由にしていてね。陽がかげる前に布団を取り込んで寝られる用にベッドメイクしてネッ」
「はい」
テツオさんは、とっても素直だった。
母屋にもどったヨネさんが、テツオさんの自宅へ電話した。
「村内様のおたくでございましょうか?」
「ハイ」
「わたくし、佐伯と申します。突然のお電話で恐縮でございますが・・・」
ヨネさんは、何か言葉を選ぼうとしていた。
「何の御用でしょうか?」
「はい。お宅のご子息様がわたくし宅へいらっしゃって・・・」
「んーーーーもう。テツオったらァ」
電話に出たのはテツオさんのお母さんのようだったが、ヨネさんが話を続けようとする前にガチャンと切られてしまったのだった。