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還暦おやじの洋楽日記

Chicago III / Chicago

1971年に発表されたシカゴの3枚目は、「Chicago(シカゴと23の誓い)」と「ChicagoV」の間に挟まれて地味な印象を与える。でも血染めの星条旗のアルバムジャケット、兵士に扮したメンバーの付録ポスター、収録されたいくつかのメッセージソングにより、「シカゴ=反体制のヒーロー」というイメージが確立されたアルバムだろう。とは言えアルバム全体を通してのメッセージ性はそんなに強くなくて実際は内省的な曲やラブソングも多い。その後の彼等を見る限り、彼等自身もそのレッテルを剥がすのに苦労したのかも。だって僕には彼等がそれほどラディカルだったとは思えず、当時の彼等の来日時のエピソードとして、高貴な人の前で演奏するときに備えてタキシードをいつも携行していると聞いて、反体制のイメージが損なわれて失望したものだった。

1. Sing A Mean Tune Kid / 僕等の歌を
2. Loneliness Is Just A Word / 孤独なんて唯のことば
3. What Else Can I Say / 朝の光
4. I Don't Want Your Money / 欲しいのは君だけ

- Travel Suite - / トラベル・スーツ
5. Flight 602 / フライト・ナンバー602
6. Motorboat To Mars / 火星へのモーターボート
7. Free / 自由になりたい
8. Free Country / 自由の祖国

9. At The Sunrise / 僕等の夜明け
10.Happy 'Cause I'm Going Home / ハッピー・コウズ・アイム・ゴーイン・ホーム

11. Mother / 母なる大地
12. Lowdown / ロウダウン
- An Hour In The Shower - / シャワーの時間
13. A Hard Risin' Morning Without Breakfast / 朝食ぬきのつらい朝
14. Off To Work / 仕事に出よう
15. Fallin' Out / 堕落
16. Dreamin' Home / ドリーミン・ホーム
17. Morning Blues Again / 再び朝のブルースを

- Elegy - / エレジー
18. When All The Laughter Dies In Sorrow / すべての笑い声が悲しみに消される時
19. Canon / 聖典
20. Once Upon A Time / むかし、むかし
21. Progress? / 遍歴
22. The Approaching Storm / 近づく嵐
23. Man VS. Man ; The End / 人間対人間;終局

「シカゴと23の誓い」はデビューアルバムのアウトテイクが中心だったらしい。俄かには信じられない話だが、もし事実ならばこのアルバムこそデビューまでの資産を使い果たしたシカゴの真価が問われた最初のアルバムであり、新しい方向性を模索していた時期の作品と言える。
その試行錯誤は成功したものあり失敗したものありで、アルバムの冒頭を飾る「Sing A Mean Tune Kid」は後者のほうだな。1曲目があんまり良くなかったので最初の頃はアルバム自体の印象が良くなかった。「What Else Can I Say」はビートルズっぽいピーター・セテラの初期の作品だが、後の彼の作風の原点と思える。ファンキーな「I Don't Want Your Money」のボーカルが実はロバート・ラムであることは何年も気づかなかった。「シカゴがCSN&Yをカバーした」と評された「Flight 602」のスティールギターを演奏しているのがピーター・セテラであり、彼に手ほどきしたのがポコのラスティ・ヤング。その縁でジム・メッシーナがポコを脱退したときに後任のポール・コットンを紹介したのがピーター・セテラだったのはポコのファンには有名な話。ダニー・セラフィンのドラムソロ「Motorboat To Mars」から「Free」になだれ込む流れがカッコ良かった。爽やかな「At The Sunrise」とボサノバの味付けをした「Happy 'Cause I'm Going Home」の2曲が個人的には好きだ。
アナログでの1枚目は殆どロバート・ラムの作品。そしてアナログ2枚目の前半はテリー・カスの「An Hour In The Shower」が良い。複数の曲目に分かれているが実際はひとつの曲。アコースティックギターのイントロから始まり起伏に富んだブルージーなナンバーで彼の曲ではいちばん良いと思う。そしてアナログ最後の面を飾ったのがジェイムス・パンコウのインスト組曲「Elegy」。各メンバーのソロ・パートがフィーチャーされた「The Approaching Storm」が特にカッコ良くて、血湧き肉踊った。

シングルになったのが「Free」と「Lowdown」の2曲。「Lowdown」は後に北山修の歌詞がつけられた日本語バージョンがリリースされて実に赤面ものの企画だった。「Free」は今でも彼等のコンサートの定番のアンコールナンバーとなっている。
僕がラジオの深夜放送を聞き始めた頃にヒットしていたのが「Free」で、初めて買ったシカゴのオリジナルアルバムがこのアルバム。40数年の時を経て凄く久しぶりに聴き、懐かしかった。

(かみ)
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