the Saber Panther (サーベル・パンサー)

トラディショナル&オリジナルの絵画芸術、化石哺乳類復元画、英語等について気ままに書いている、手書き絵師&リサーチブログ

国立科博の絶滅巨獣

2009年08月02日 | 写真

野の国立科学博物館に行ってきました。

図らずも隣の西洋美術館(版画展が開催されています)を回ることにかなり時間を費
やしてしまったので(笑)、科博の方は主に、絶滅哺乳類の骨格標本だけを重点的に
見てきました。以下、知名度高めの大型種しか写っていませんが 取り留めのな
い箇条書き風レポートです。

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(近代建築の父、ル・コルビュジェが設計したという国立西洋美術館。中庭の緑葉と
壁の色合いが良くマッチしています。世界遺産登録の候補に入っているそうですが
:shock:、先日見送りになったというニュースがありました。)


-まず古代の肉食獣。

左から(全身骨格のみ) 北米スミロドン Smilodon fatalisホプロフォネウス
Hoplophoneus
sp.
ダイアウルフ Dire Wolf、ホラアナグマ Cave Bear

スミロドンfatalisは「ねこ博」に展示してあった本種の骨格と比べると、一回り大きく、
遥かにがっしりとした印象です。国立科博にあるホラアナグマはそのスミロドンよりも
少し大きいといった程度でしたが、雌の個体でしょうか。これらの手前には、大型の
雄のものと思われる、立派なホラアナグマの頭蓋骨も展示してあります。

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ホラアナグマ Ursus spelaeus

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ティラコスミルス Thylacosmilus atrox の頭蓋骨。
先にAleksandraさんがNatural History Museum Londonで撮ってきてくれたものを紹
介しましたが、この頭骨は意外なほど小ぶりでした。しかし犬歯-というより、まさに
「剣歯」と呼び慣した方がふさわしい代物ですが-はさすがに半端なく長大です。
有袋類(or, Sprassodonta)のティラコスミルスと剣歯猫の頭骨が一見したところそっく
りなのは妙な気もしますが、スミロドンに比べると眼窩がはるかに小さくて、もっと顔
面の側面に位置していることがわかります。

その他、肉歯目のヒアエノドンHyaenodon horridus やメソニクス目のシノニクス Sinonyx
jiashanensis
など、原始的な肉食獣の貴重な全身骨格を見ることができました。
P1000500.jpg picture by jagroar
P1000507.jpg picture by jagroar

 

-古代の草食獣群
P1000502.jpg picture by jagroar
モエリテリウム Moeritherium
モエリテリウム科は長鼻目の中で最も原始的なグループのひとつですが、現生ゾウ
の祖先には当たらず、直系の子孫を残さずに死滅したようです。生態は恐らくコビト
カバに似ており、半水棲だったということですが、異様なまでに胴が長いことが分か
ると思います。図鑑なんかのイラストではここまで極端に胴長な印象はなかったの
で、少し驚きました。
P1000479-1.jpg picture by jagroar
手前にある奇怪な頭骨の主は、モエリテリウムよりも数千万年の後に現れた原始ゾ
ウ、
ゴンフォテリウム gomphotherium

★蛇足になりますが^^

これまでで最古のゾウの祖先発見、体格はウサギ並み
(ナショナルジオグラフィック・ニュース)

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アイリッシュエルク(アイルランド・オオツノジカ) Megaloceros giganteus
幼い頃に何処かの(群馬だったと思いますが、定かじゃありません)博物館で全身骨
格を見て、その大きさに圧倒され、強く魅了された記憶があります。国立科博の個体
も大型で、且つ引き締まったその形態からは、生前の剽悍な姿がしのばれました。
ただ、肩高が(よく言われるように)2m前後もあるようには見えませんでしたが。


P1000438.jpg picture by jagroar
ウインタテリウム Uintatherium unceps

P1000519-1.jpg picture by jagroarP1000450-2-1.jpg picture by jagroar
インドリコテリウム Indricotherium transouralicum
ご存知、史上最大の陸獣として名高い、インドリコテリウム。巨大なのが当前です
が、それにしたってこのスケールは無茶苦茶です(笑) 写真では実物の迫力の万分の
一も伝わらないでしょう。
茨城の松花江マンモスと国立科博のインドリコテリウム、改めて両方見てきた上での
感想ですが、間近で見た全体的な骨格の大きさ-特に四肢長骨の重厚さ-は、やは
りインドリコテリウムの方に軍配が上がるかなーという感じです。あくまで、ただの主
観ですけれど。骨盤は松花江マンモスの方が明らかに幅広いのですが、肩までの高
さもどっこいどっこいというか、公式には4.5mとなっていますが、私見ではもう少し高
いかなという印象を受けました。実際どちらも甲乙つけ難い巨大さでして、これで
また茨城の方に見に行ったら、やっぱ松花江マンモスの方がでけーし!ということに
なりかねないわけですが。^^;
P1000522-1.jpg picture by jagroar
P1000524.jpg picture by jagroar


P1000454.jpg picture by jagroar
モロプス Moropus elatus
前足に大きなカギ爪を具えた、ゴリラを思わせるプロポーションの珍奇な奇蹄類、カ
リコテリウム科の一種。カリコテリウム科の多くは完全な森林性ですが、モロプスの
体型はある程度の機動力をうかがわせ、事実、もっと開けたサヴァンナ的住環境に
も進出していたそうです。

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ジャイアント・バイソン Bison latifrons

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トクソドン Toxodon platensis

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メガテリウム Megatherium altiplanicum
地上性ナマケモノの親分格だけあって、頭骨だけでもその尋常ではないスケール感
が伝わってくる、メガテリウム。

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アルシノイテリウム Arsinoitherium zitteli 

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コロンビアマンモス Mammuthus columbi


アメリカマストドン Mammut americanum
アメリカマストドンの顕著な特徴は、その岩塊のごとき重々しい骨格でしょう。Asier
最近の回帰分析では、
Warren Mastodon の名で知られる肩高2.9mの個体は、8tを
優に超える体重になったことが推定されるそうです。

P1000475.jpg picture by jagroar
デイノテリウム Deinotheirum
このデイノテリウムは種類が不明ですが、肩高は2.6mということであまり大型ではな
く、隣のマストドンに比べると骨格もずっと華奢で、胴体も短めです。長鼻類の中にあ
って、頭部が例外的に小さく見えることも、デイノテリウムの特徴の一つだと思いまし
た。なんにせよ、これら史上有数の巨ゾウの全身骨格が一堂に並べられた様は、壮
観の一言です。
P1000484.jpg picture by jagroar
(アメリカマストドンとデイノテリウム)


Extra

-地球館地下2階・恐竜フロア-

T.rex
P1000533.jpg picture by jagroar


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1 Comments

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インドリコテリウム (yuyu)
2013-02-04 16:59:08
インドリコテリウム(1922年命名)は、最近、パラケラテリウム(1911年命名)、さらにバルキテリウム(1923年命名)と同属とする説が有力になり、(もっとも以前から同属とする説はありましたが)学名は先に付けられたものが優先というルールでパラケラテリウムに統一されましたね。個人的には少し名残惜しい気がします。

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