the Saber Panther (サーベル・パンサー)

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★暫定 ♦大型ネコ科動物 Big Cats♦ サイズランク★ 2022年改正版 (1位~40位)

2022年02月15日 | ライオン系統特集(期間限定シリーズ)

★暫定 ♦Big Cats♦ Size Ranking★ 2022年 revised edition

(バルボウロフェリス・フリッキ(ネコ科のシスター科、バルボウロフェリス科の最大種)


♰=絶滅種/亜種

※寅年に際して古いガンドントラの記事をアーカイヴしましたが、あの中で試みていた『暫定 Big cats サイズランク』を、現在までに集積しているデータを基に、アップデートしてみました。
この記事は期間限定で上げておく予定です。

ここでサイズというのは、体重(絶滅種については推定体重)のことです。平均(推定)体重20kg以上のものを対象としました。
'Big cats'というと厳密には大型ネコ科動物(より具体的には、ヒョウ属種+ピューマ、チーター)を指しますが、ここではより広義にネコ亜目・バルボウロフェリス科とニムラヴス科の「キャットフォルム」の大型種をも含めています。

学術的資料にみられるデータに準拠してはいますが、主題の性質上、判断材料に乏しいことは否めず、私の解釈に基づいて作られたランキングにすぎません。

また、リファレンス可能な資料の詳細についてまだ付していません。まずは略記と復元画のみを。いずれにせよ、参考までにとどめてください。

すべてのイラスト All Images and text by ©the Saber Panther(All rights reserved)



Peta-Cat Class  ペタ・キャット級 (450kg and above)

モスバッハホラアナライオン a.k.a. ステップホラアナライオン The Steppe Cave lion (Panthera fossilis / Panthera spelaea fossilis)♰
ネコ科史上最大の頭骨(全長485㎜)。既知のその他の骨格寸法もネコ科史上最大級。
更新世中期のギュンツ氷期の頃(71万年~42万年前)に最大の体格に達したが、この時代のP. fossilis を特にCromerian lion(クローマーライオン)とも呼ぶ(ギュンツ氷期のP. fossilis 標本が出たドイツ(モスバッハ、マウアー)、フランス(シャトー)、ポーランド(ビシュニク)の化石動物相をCromerian complexと総称することに由来する)。
以降、時代が下るにつれて小型化したとみられるが、更新世後期のスぺレア種(後述)よりは常に(平均的に)大型であった。サイズのみならず、スぺレア種とは形質が明瞭に異なる。 


Panthera fossilis のプロファイル



ステップ・ホラアナライオン 父と子

 
更新世ボルネオトラ The Pleistocene Bornean Tiger (Panthera tigris spp. sensu lato.)♰ 
ネコ科史上最大の下顎骨(部分。この下顎骨長に基く推定の頭骨全長はおよそ480㎜)。ジョージ・メイソン大学のSherani(2019)が査読済み学術論文で初めて公にした古代の巨大虎。現生の大陸トラ亜種のプロポーションに基く推定体重は、480kg±60kg(Sherani, 2019)。下顎骨の一部が知られるのみゆえ、不明瞭な点が多いのは否めないか。このトラは完新世の島嶼の絶滅亜種、「ボルネオトラ」とは異なる。更新世当時、東南アジアのスンダ諸島は大陸と地続きであったため、後代の島嶼のトラにみられる小型化は生じていなかったのみならず、現生の大陸亜種より大きかった(e.g., 更新世ボルネオトラ、ガンドントラ)ことが分かる。
 


Giga-Cat Class  ギガ・キャット級 (320kg - 420kg and above)

ウルグアイサーベルタイガー The Uruguayan Smilodon (Smilodon populator spp. sensu lato. / Smilodon nacator / Smilodon populator necator)♰ 
複数の頭骨がスミロドン属最大級(392mm, 400mm, 408.4mm) 


ウルグアイ産スミロドン メガテリウムの若個体に、不意打ちで襲いかかる場面)


アンフィマカイロドゥス / ニムラヴィデス・ラハイシュププ The North American Giant Proto-Scimitar toothed cat (Amphimachairodus / Nimravides lahayishupup)♰
ネコ科史上最長の上腕骨(460.5㎜)。肩高、体長など、おそらくボディー・ダイメンジョン的にはネコ科史上最大級。
分類は変転し混乱が見られるが、アンフィマカイロドゥス属かニムラヴィデス属のどちらかに属する剣歯猫であることは、間違いない(北米にはマカイロドゥス属種は分布しなかったため)。直近の二つの分類研究(Jiangzuo et al., 2022, Wang et al., 2022)にて、ニムラヴィデスへの帰属が提起されている。

ラハイシュププ種 生体復元画 アンフィマカイロドゥス属のヴァージョン

 


ラハイシュププ種 生体復元画 ニムラヴィデス属のヴァージョン
※アンフィマカイロドゥスとニムラヴィデスとでは、頭蓋-下顎の形状に差異が大きい



アデイロスミルス・カビール The African Giant Proto-Scimitar toothed cat (Adeilosmilus kabir)♰
推定上腕骨全長450㎜超で、ラハイシュププ種に匹敵する
 
アデイロスミルス 生体復元画)

 

ナトドメリライオン The Natodomeri Lion (Panthera leo spp. sensu lato.)♰
更新世の純正ライオン。比較的状態の良い頭骨が一つ見つかっているのみだが、その頭骨のサイズが最大級アメリカライオンのものに匹敵する 
ナトドメリライオンのプライド(更新世の真正ライオン古亜種))


アメリカライオン The American Cave lion (Panthera atrox)♰

ガンドントラ The Ngandong Tiger (Panthera tigris soloensis)♰
ネコ科史上最大の大腿骨(480㎜) 

   
スミロドン・ポプラトールアルゼンチンサーベルタイガー The Argentine Smilodon (Smildon populator (type specimen))♰
肢長骨の骨幅がネコ科史上最大



ライガー The Liger雄ライオン×雌トラのハイブリッド)
体重は幾分誇張される傾向が見受けられる。例えば、フロリダ州T.I.G.E.R.Sの有名な個体「Hercules」は500kg前後といわれていたが、実計量の結果は418kgだった(もっとも、ライガーは過度に肥満する傾向があるとされ、実際に500kgを超えていた時期もあったのかもしれないが)。また、死後解体の骨格寸法は、アメリカライオンのタイプ標本よりも小さかった。既知の最大頭骨は全長432㎜×頬骨弓幅279㎜(対して、アメリカライオン(Panthera atrox)のタイプ標本(タグ= UCLA 14001)の頭骨全長467.5mm、頬骨弓幅304mm)。ライガーが巨大であることに疑いの余地はなく、一部の古代のヒョウ属種が想像以上に大きいとみるべき。

The Largest Liger in the world

Uploaded by ©Tiger TeamWork

(動画のライガーは、Myrtle Beach Safari(アメリカ、サウスキャロライナ州)で飼育されている雄で、名前はOden(オーデン)。2021年時点で世界最大のライガー個体とのことで、動画では体重900ポンド(408㎏)、後足で直立した高さは、11フィート(335㎝)以上になると紹介されています。これらが実際の計測値であるかは不明ですが、人と比較すると、いかに大きな動物であるか実感されます。先史時代の大型ネコ科動物を、彷彿させるに十分な迫力といえるでしょう)

 


アンフィ
マカイロドゥス・ホリビリス The Asian Giant Proto-Scimitar toothed cat (Amphimachairodus horribilis)♰
剣歯猫最大の頭骨 

(左:アンフィマカイロドゥス・ホリビリス 右:スミロドン・ポプラトール

 

Mega-Cat Class  メガ・キャット級 ( - 300kg and above)

キタヨーロッパシミターネコ The North Sea Homotherium (Homotherium crenatidens)♰
ただし、crenatidens種は現在は無効化している

欧州北西部産ホモテリウム



ケルシールルス・マジョール The Quercy's Gaint Nimravid (Quercylurus major ※ニムラヴス科)♰
ニムラヴス科の最大種で平均300kgほどとされる。シミター型剣歯の持ち主で、かつダーク型剣歯猫のようなずんぐりした体つき。この形態コンビネーションは稀であり、ネコ科、ニムラヴス科、バルボウロフェリス科の中で、下記ゼノスミルス属種(クッキーカッターネコ)とケルシールルス属種の、2例しか知られていない。



Super Big-Cat Class  スーパービッグ・キャット級 (150kg - 290kg and above)

ユーラシアホラアナライオン The Eurasian Cave lion (Panthera spelaea)♰
現生のトラ、ライオンよりも大型。一般にホラアナライオンというとこの種(スぺレア種)を指す


スミロドン・ファタリスキタアメリカサーベルタイガーThe North American Smilodon (Smilodon fatalis)♰
カリフォルニアのラ・ブレアで多量の骨が見つかっていることから、最も広く知られ、研究も進んでいる剣歯猫が、本種。
現生のトラ、ライオンと比べて体長では大きく劣るが、骨格の全体的な重厚さから、推定の体重では上回っている(同様のことが下記ゼノスミルスにも当てはまる)

スミロドン・ファタリスの群れ


クッキーカッターネコ The Cookie Cutter Cat (Xenosmilus hodsonae)♰
ゼノスミルス属種。シミター型剣歯猫だが、ダーク型剣歯猫よりも更にずんぐりした体つき

ゼノスミルス属種)



ベンガルトラ The Bengal Tiger (Panthera tigris tigris)

インド・バンダヴガル国立公園の有名な支配雄だったベンガルトラ、'Bamera'のポートレート。かなり古い絵です。
一緒にいる方は、虎がつく役名で大河に出演されていた記憶が…)

   
⑯「南部ライオン 'The Southern Lion' (Panthera leo melanochaita)
最新の遺伝情報に基づく分類で現生ライオンは2亜種に絞られており、そのうちの一つ、P. leo leo にはインドからアフリカ中部、アフリカ西部にまで分布する個体群が含まれるため、従来の「アジアライオン」、「アフリカライオン」という単純な分け方は、もはや通用しない。ここでは、より大型である亜種P. l. melanochaita を、試みに「南部ライオン」と呼称してみる。具体的には、南部ライオンには現生ライオンで最大のアフリカ南部産と、二番目に大きなアフリカ東部産の個体群が含まれている。対して上述のP. leo leo(インド、アフリカ中~西部産および、野生では絶滅したアフリカ北部産を含む)は、「北部ライオン」の呼称が好適と思われる。

アムールトラ The Amur Tiger (Panthera tigris altaica)
アムールトラと絶滅亜種カスピトラは、遺伝的に同質であることが判明している。


バルボウロフェリス・フリッキ The Barbour's Saber-toothed cat (Barbourofelis fricki ※バルボウロフェリス科)♰
ネコ科のシスター科、バルボウロフェリス科の最大種。体重200kg程度と推定されている。

(バルボウロフェリス属種)


ヨーロッパジャガー The European Jaguar (Panthera gombaszoegensis)♰

ヨーロッパジャガー

 

ホモテリウム・ラティデンス The Scimitar toothed cat Homotherium latidens)♰
最も典型的なシミターネコとされる。現生「南部ライオン」より少し小さい程度。

ホモテリウム・ラティデンスのパック


ディノフェリス・ピヴェタウイ 
Dinofelis pivetaui)♰
マカイロドゥス亜科・メタイルルス族の最大種。剣歯猫のうち、メタイルルス族の剣歯猫群はヒョウ属との形質的類似が最も色濃い。
D. pivetaui
は最大種で、体重160kg級。

((中央)アンフィマカイロドゥス属種 (右)ディノフェリス属種  
メタイルルス族の犬歯形状は側腹圧縮型というより円錐型に近く、長さも控えめ、かつ顎の力も(剣歯猫にしては)強いことから、
ここに描かれているように、獲物を咥えて木に登るという芸当も可能だったかもしれない)



Big-Cat Class  ビッグ・キャット級 ( - 140kg and above)

ホプロフォネウス・オクシデンタリス Hoplophoneus occidentalis ※ニムラヴス科)♰
ニムラヴス科の大型種。極めて長大な犬歯と四肢遠位部の短いがっしりした体型のコンボは、
スミロドン属(ネコ科)、バルボウロフェリス属(バルボウロフェリス科)と並ぶ「ダーク型剣歯猫」の典型。


スマトラトラ The Sumatran TigerPanthera tigris sumatrae


メガンテレオン・クルトリデンス Megantereon cultridens)♰
中型のダーク型剣歯猫。スミロドン属の直系祖先に位置づける説は、現在では否定されている。


パンタナル・ジャガー The Pantanal JaguarPanthera onca spp.)
ヴェネズエラからブラジルの密林帯に生息する、現生ジャガーの最大個体群。2010年代からの継続的な個体群調査により、成獣雄では体重100kg超の個体が珍しくないことが分かった。
亜種P. o. palustrisとして分類されていたが、各地のジャガーの個体群は遺伝的に同質であることが判明、全ての亜種分類が無効化するに至った。

現生パンタナル・ジャガー



ロングダントラ The Longdan Tiger Panthera zdanskyi)♰
古代のヒョウ属種で、トラ、ユキヒョウ系統に連なる、トラのシスタータクソンだと考えられている。大型のジャガー大。
甘粛省の更新世地層でほぼ完全な頭骨が見つかった。

ロングダントラ


ジャイアントチーター 
The Giant Cheetah Acinonyx pardinensis)♰
現生チーターよりも著しく大きく、雄では体重100kgに達した。


ジャイアントチーター


ミラキノ二クス The North American Cheetah Miracinonyx inexpectatus)♰
更新世北米に生息。チーターとは分岐系統が違えど、収斂進化でそっくりな形態を得ていた。
初期の、クーガーとの類似が色濃い種類のほうが大型。


サンサノスミルス・パルミデンスSansanosmilus palmidens ※バルボウロフェリス科)♰
バルボウロフェリス科の中型種。


Medium large-Cat Class  ミディアムラージ・キャット級 (under 85kg)

メタイルルス・マジョール Metailurus major)♰


ヒョウ 
The Leopard (Panthera pardus


パラマカイロドゥスプロメガンテレオン・オジージャ Paramachairodus / Promegantereon ogygya)♰
本種を、メガンテレオン、スミロドンに連なるダーク型剣歯猫の系譜(スミロドン族)の基底種に位置づける説がある。

パラマカイロドゥス属種)



クーガー The Cougar Puma concolor


ユキヒョウ The Snow leopard Panthera uncia


チーター 
The Cheetah Acinonyx jubatus



Medium-Cat Class  ミディアム・キャット級 (under 50kg)

イソワール・オオヤマネコ The Issoire Lynx Lynx issiodorensis)♰
オオヤマネコ属系統の基底種に位置づけられる。
現生ユーラシアオオヤマネコよりも大型で、相対的に短く頑丈な四肢、大きな頭部などはヒョウ属に似る。


㊳(パレオパンテーラ・ブリテエ Palaeopanthera / Panthera blytheae)♰
トラ・ユキヒョウ系統の基底種の一つで、発表当初はユキヒョウの直系祖先ともされた。
もっとも、直近の分類研究(Hemmer, 2023)では新たに提起されている分類群、パレオパンテラ属に含められ、むしろ、ウンピョウとの近縁性が取りざたされている。


スンダウンピョウ The Sunda Clouded leopard Neofelis diardi
ウンピョウ属の場合、大陸本土の種類(N. nebulosa)よりもこちらの方が体つきががっしりしており、
頭骨形質も剣歯猫との収斂の度合いが強いとされる。

 

 

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