あ・しねま・たいむ

今日も映画でまったり

未来を花束にして

2017-04-22 07:47:08 | 映画 2017
「思想も教養も富もない、私はひとりの母親。
ただ我が子のその手に、希望を繋ぎたかった」
これは、女性の参政権を求めて立ち上がった、
〝名もなき花〟の、真実に基づく物語です。

1910年代のイギリス。
女性を取り巻く社会状況は厳しいものでした。 
「女性は理性的でないから政治には向いていない」と言われ、
数十年に及ぶ女性参政権運動は、時の政権によって黙殺、
集会さえも弾圧され、
そのために、女性たちによる運動は過激化していきます。 
彼女たちは、人を傷つけないという信条のもと、
電話線を切断したり郵便ポストを爆破したりして、
女性の参政権を求める活動を続けました。
この運動では1000人以上が逮捕され、刑務所に収監されたそうです。
この運動を先導したのがエメリン・パンクハースト、
実在の人物です。 

モードは夫サニーと幼い息子ジョージの3人で暮らす平凡な主婦でした。
サニーと共に洗濯工場で働いています。
幼いときに洗濯工場での事故で母親を亡くしたモードは、
7才から同じ洗濯工場のパートとして働き、12才で正社員に。 
工場では、女性は男性よりもさらに劣悪な環境で、
低賃金、長時間労働を強いられていました。
指は曲がり、体中火傷の痕だらけになっている女性たち。
ある日モードは洗濯物を届ける途中に、
女性参政権を求めて活動する婦人社会政治連合の過激行動に遭遇しました。
これをきっかけに、女性参政権を求める活動家で、
過激な活動を展開しているイーディスと出会います。
最初は運動に無関心だったモードですが、
運動家たちの命をもかけた過激な活動を目にし、
また議会の公聴会で友人の代わりに、
工場での待遇や自身の身の上を証言したことをきっかけに、
自分が違う生き方を望んでいることに気付きます。
彼女は女性社会政治同盟(WSPU)のリーダーである、
エメリン・パンクハーストの演説を聞き、
デモにも積極的に参加するようになりました。
モードの行動をよく思わず、恥とさえ考えているサニーは、
モードを家から追い出し、息子に会うことも禁止します。
モードはさらに、工場長からクビを宣告されてしまうのでした。 


映画を観て、ショックだったことがたくさんあります。
いまは当り前に享受している女性の権利が、
これほどまでにないがしろにされていたのが、
たった100年前の話だったこと。
そして権利を求めて集会を行う女性たちに、
過剰な暴力で弾圧する警察にも。
女性に対して、男が血を流すまで寄ってたかって殴るってどうよ?
私の中のイギリス紳士のイメージが、ガラガラと崩れました。
あんたたち、みんな女性から産まれたんでしょうに!
と思ってしまったわ。


活動が過激になってゆくのは、
かえって賛同者が離れていくような気がするのですが、
弾圧が激しくなる中、仕方のないことだったんだね。

女性たちの帽子姿が素敵

エメリンたちの運動により、
イギリスは1918年に30歳以上の女性に参政権を認めます。
このとき男性には21歳以上に参政権が認められていて、
男女平等の普通選挙権が実現するのは、
1928年エメリンが亡くなった直後でした。
ちなみに、日本で女性が参政権を得たのは終戦の1946年です。

「すべての娘たちはこの歴史を知るべきであり、
すべての息子たちはこの歴史を胸に刻むべきである」 
メリル・ストリープの言葉です。  

監督 サラ・ガヴロン
モード・ワッツ キャリー・マリガン
イーディス・エリン ヘレナ・ボナム=カーター 婦人社会政治同盟(WSPU)の活動家 
サニー・ワッツ ベン・ウィショー モードの夫
アーサー・スティード警部 ブレンダン・グリーソン
ヴァイオレット・ミラー アンヌ=マリー・ダフ WSPUの仲間、職場の同僚 
エメリン・パンクハースト メリル・ストリープ 女性社会政治同盟WSPUのリーダー
エミリー・ワイルディング・デイヴィソン ナタリー・プレス WSPUの仲間 
2017年1月


イーディスを演じたヘレナ・ボナム=カーターは、
当時のイギリス首相で婦人参政権運動を弾圧していた、
ハーバート・ヘンリー・アスキス伯爵のひ孫にあたるそうです。