ぷちとまと

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グレート・ギャツビー(1)

2007年04月02日 02時05分34秒 | 雑記
スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』
・村上春樹訳
・野崎孝訳
・原書で楽しむ英米文学シリーズ(斎藤兆史監修)

3月は『グレート・ギャツビー』の翻訳を2冊読み、映画のDVDを1本観て、先週から英語で読み始めました。本エントリーでは、そのうち翻訳もの2冊を中心に、軽く触れたいと思います。今後原書も含めて読み較べていきたいと考えており、この作品についてのエントリーはしばらく続く可能性があります。他にもっと好きな小説はありますが、『グレート・ギャツビー』は、いろんな角度から眺めたいと思わせる作品です。それだけの素材が出ているのですから、自分の力の及ぶ範囲で味わい尽くしたいものです。


●きっかけ

最近この作品を読んだ人の多くがそうだと思うのですが、村上春樹の翻訳が出たことがきっかけです。彼ほどの作家が生涯で最も影響を受けたと言い、自分で翻訳を出してしまう作品とはどんなものだろうかという興味を持つのは、そう不自然なことではないでしょう。


●背景

第一次対戦後のニューヨーク。ジャズエイジと呼ばれ、禁酒法によって闇の酒場が栄えた「狂乱の1920年代」が舞台です。


●おもな登場人物

ニック・キャラウェイ
・この物語の語り手。
・中西部出身だが、東部で証券会社に勤務。

トム・ブキャナン
・ニックの大学の同窓。
・デイジーの夫。

デイジー・ブキャナン
・ニックの又従兄弟の子。

ジョーダン・ベイカー
・ニックとブキャナン邸で出会った若い娘。
・ゴルファー。

マートル・ウィルソン
・トムの愛人。

ジョージ・ウィルソン
・マートルの夫。
・自動車修理工場を営む、みすぼらしい男。

ジェイ・ギャツビー
・ニックの隣人。
・自宅の豪邸で派手なパーティーを開く謎の男。

ニックだけでなく、トムにデイジーにジョーダンにギャツビー、主要な人物は全員東部の出身でないというのが、大きなポイントになっています。


●村上訳の新しさ

イワン・ツルゲーネフの『あいびき』を二葉亭四迷が訳したテキストがあります。

たとえば「もしそうでもなッたらモウわたしの事なんざア忘れておしまいなさるだろうネー」という、恋人との別離を前にした女の子のセリフですが、今読むといかにも古くさくて物語に入り込んでいけず、共感できる読者は少ないのではないでしょうか。

野崎訳についても同様です。決して悪い訳ではないのですが、特にセリフが古いです。中西部出身者の田舎臭さを出そうとしたのかもしれませんが、ちょっと違うだろという気もします。

その点、村上訳は現代風の作品として読めます(訳者あとがきにも本人がそう書いています)。

そして、野崎訳からはおそらく感じなかったと思うのですが、村上訳には「この文はきっと原文が美しいのだろう」と思わせる部分がいくつかあります。それが正しいのかどうかはこれから検証することになるのですが、普段英語を読まない一読者が、原書を手に取ってみたというのは事実なのです。

かといって、野崎訳を否定するつもりはありません。否定していれば、上に書いたような読み較べの対象にはしませんから。


●「オールド・スポート」問題

ただし、村上訳への批判もあるようで、ギャツビーの口ぐせである"old sport"を「オールド・スポート」と表現したことに賛同できないという意見が多いようです。野崎訳のように「親友」でいいではないかと。それも理解できます。

ですが、村上氏が20年悩んだ挙句「オールド・スポート」にしたのであれば、それはもう受け入れようではないかというのが、僕のスタンスです。だって、20年間悩んだ人なんて、他にいないと思いますもん。

以前キムタクが「メイビー」を連発していたドラマがありましたが、それと同じではないでしょうか。「たぶん」とか言ってたら、それはもう全然別のドラマになってましたよね。

もし「メイビー」を連発する男が実在していたら、かなりダサいですよね。イギリス仕込みの「オールド・スポート」を連発するギャツビーから、そのダサさを読み取ればいいのではないでしょうか。「親友」では、そのニュアンスは全く伝わらないと思います。

ということで、「オールド・スポート」に違和感を覚える諸兄は、いちど「メイビー」を思い浮かべてみてくださいというのが、僕からの提案です。


(つづく、メイビー)

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (投資で生活する男)
2007-04-02 04:10:03
こんにちは♪


私のブログで
こちらの記事を紹介させて頂きましたので

いきなりですみませんが、
ご連絡させて頂きました。

紹介記事は
http://tousinews.blog85.fc2.com/blog-entry-398.html
です。

これからもよろしくお願いいたします^^
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ますます ()
2007-04-04 13:15:20
所見力というか、読書眼が増したねー
すごい!惚れ惚れ。

ギャツビーの本は読んでないけど、
blog読んでてシックリと納得したも。

返信する
ありがとう (シモネッタ)
2007-04-05 00:26:04
>豆さん

久々のコンタクトでありがたい賛辞をいただきまして、照れますな。
自分では全然書けてないと思うし、それ以前に消化できていないんだけど、それでも何か感じてくれたのなら、それは作品の力かな。
何が面白いかを具体的には表現できないんだけど、後でじわじわ来るんですよ。今はその核心に、少しでも近づきたいという段階です。

これからもよろしく、オールド・スポート。
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