札幌医科大学教授 理学博士 放射線防護センター代表 高田 純
昨年12月に第四回「真の近現代史観」懸賞論文制度において最優秀藤誠志賞を受賞された、札幌医科大学教授で非政府組織放射線防護情報センター代表の高田純様は、「震災後1年以上も経っているのに20㎞圏内は全く復興していない。福島の20㎞圏内で放置されている和牛がたくさんいるが、放射線で死んだ牛はいない。和牛畜産業の再建なくして復興はない。」と福島の問題について触れられました。
続けて核の脅威について、「日本は核武装国に囲まれているが、ミサイルが目の前に見えないため、その脅威に気付かない。中国の保有する核弾頭は273メガトンで広島の17,000発分であり、世界第3位である。北朝鮮はロシアの技術を背景に、既に日本を射程とする弾道ミサイルが配備されている。ただ、まだ核弾頭はできていないだろう。したがって、ミサイルの失敗を笑ってはおれない。」と警告されました。
さらに、「北の核の潜在的リスクは核兵器の密売とダーティー・ボム弾道ミサイルである。福島の原発事故を巡ってこれだけパニックを起こす国民性を見れば、核弾頭が爆発しなくても放射性物質で東京を核汚染させるだけで十分な効果がある。核弾頭が爆発するとはじめに熱戦で火傷を負い、次に衝撃波で高層ビルを押し倒す。私のシミュレーションでは、20キロトンの小型核で、2キロ圏内が炎上し、50万人が急性死亡する。中国のメガトン級の核であれば、山手線内部は壊滅し、330万人が急性死亡する。今回は予告があった方向に備えてイージス艦を配備していたが、実際には予告はなく、迎撃は困難だろう。国防は政治主導ではできず、科学的に取り組まなければならない。」と自身の研究によるシミュレーション結果を示され、核兵器の威力の大きさを示された。
その他、福島で行った現地調査の結果を紹介され、「福島県浪江町を平成23年4月に訪れ、黒毛和牛の調査を行った。2日間の調査で私が受けた放射線量は0.1ミリシーベルトに過ぎず、そこに1ヵ月以上いた牛は元気だった。広島の黒い雨には強烈な放射性物質が含まれていたため急性症状があったが、福島ではそのような急性症状はない。むしろ問題なのは、放置された病院の患者で少なくとも70名以上が亡くなっていることである。24年2月4日に浪江町の牛の放射線量の検査を行ったが、0.2~0.7キロベクレル/㎏で、飼料をきれいにすれば暫定基準値内に収まる。3月には2泊3日で民家に泊まり込んで調査を行ったが、そこで計測した放射線量は年間で20ミリシーベルト未満である。そこは政府発表では50ミリシーベルト超で帰還不可能とされている地域である。さらに家の周りと牧草地を除染すれば年間10ミリシーベルト未満にすることができ、和牛業を再建することができる。あわせて防波堤を造りながら瓦礫や除去した土を埋め立てる方法を官邸にも提言している。この20キロ圏内の復興なくして福島の復興はない。」と20㎞圏内の復興の可能性について、科学的根拠を示されながら説明されました。
勝兵塾第11回月例会での講話から
平成24年4月19日アパグループ本社にて