原題: THE WE AND THE I
監督: ミシェル・ゴンドリー
出演: マイケル・ブロディ 、テレサ・リン 、レイディーチェン・カラスコ 、レイモンド・デルガド 、ジョナサン・オルティス 、ジョナサン・ウォーレル 、アレックス・バリオス 、ナオミ・マーフィー
観賞劇場: シアター・イメージフォーラム
映画『ウィ・アンド・アイ』公式サイトはこちら。
<あらすじ>
NYブロンクス。とある高校の学期も終わり、ようやく夏休みを迎える。バスで帰宅する生徒たち。悪ガキたちのいつもの面子で車内はすでにお祭り騒ぎだ。彼らのいつもの話題は誰と誰がくっついて別れたの恋愛話、そして、くだらない仲間のスキャンダルだ。(公式サイトより)
NYの中では貧困率が高く、犯罪も多いブロンクスの(たぶん)公立高校のスクールバスが設定と考えれば、おおよそどんな生徒たちなのかはある程度予測がつくのかもしれない。いわゆる「WASP」っぽい子はこの映画の中には登場していないように思う。黒人、ヒスパニック、アジア系、そんな子たちが通う高校だ。
アメリカでは日本とは異なり高校は義務教育なので、どんな地域に住むかによって高校のカラーが大きく異なってくる。要するに治安のいいところ、住民の生活水準が高い所は必然的に学校の環境もいいですが、逆もまた然り。パブリック・スクール(私立)に行く子もいるとは思うけど、公立高校は学費が安いので、治安の悪い地域でも行かざるを得ない子も大勢いる。
こうした海外でのティーンエイジャーの生徒たちの学園生活を描いた映画は数多くあるが、どれもが日本のそれとは大きく雰囲気が異なることがわかる。それは生活環境が均質に近い日本と違って、諸外国は移民による多文化が進んでいたり、またそこからさらに生活格差も大きくなっているから。
日本でも高校については進学率の高さからして半ば義務教育化している部分はあるのだけど、ここまで地域間の格差が進んでいないせいか、本作に見られるほどの生徒たちのモラルの低さはないように思う。もしかしたら存在しているのだろうけどここまでくっきりと分かれてはいないだけで、今後生活格差が拡大していったら、当然として生まれてくる問題なのだろう。
誰もがその日だけ楽しければいい。もっと言えば、その瞬間だけ楽しければそれでいい。
いわゆる「その場のノリ」だけで生きている子どもたち。その基準は、「スクールカースト上位の子の気分のみ」という非常に厳しい環境を学校で求められていたら、例え反発したくてもできなくなる。多くは標的になることを恐れて、彼らの言いなりになるしかない。
あるいは自分の存在を殺してしまえば彼らに注目されることもなく自分の世界を保てる。そう考えている子ですら、スクールカースト上位の子に余計な揚げ足を取られたら屈するしかない。観ていて非常に面倒だし、こんなことに神経を使わなくてはいけない彼らの世界はややこしく映るが、意外とどっぷり漬かっている本人たちにとってはそれは「普通のこと」なのだろう。
「スクールカースト上位の子」は無理難題を力で押しつける子ばかりではなくて、女子ならば容姿がいいとかモテるということもそれに加わって来る。いわゆる女王様になれた子は、その地位を生かして女子に君臨する。嫌な奴だと思うけど結構従う子もいる訳で、パーティーに呼んでもらえるとか異性を紹介してもらえるといった見返りがないとそんなことはできないに違いない。
そして君臨する側は「子分」たちの従順を一様に疑わない所がかえって笑えてしまう。彼らはこうして自分たちが真にどう受け止められているかが全く見えないまま、思うがままにふるまって行く。
そんな「歪んだ高校の日常」をいいと思っている子ばかりではないことは当然だ。荒れている高校の中だって真面目な子は当然いる。そして「スクールカースト上位の子」たちだって一枚岩ではなく、本当の自分を隠している子も存在する。
本当の自分を知ってもらいたい。勇気を出して自分語りを始めたところで、日頃仮面をかぶって迷惑三昧をしていればそれも空しく終わる。本当の自分を知ってもらいたいなら、何故普段から勇気を出さないのか。人に日常不愉快な思いをさせても平然としている癖にそれを止められない勇気のなさに、生徒たちは憤っている。おちゃらけて保身に走る奴はいらない、付き合いたくないと思うのは至極当然のことで、そこに釘を誰かが刺す勇気も必要なことなのだろう。
彼らがバスの中で見せてくれる様々なストーリーは、そのまま大人たちの社会の縮図でもある。
この環境から抜け出したいけど、生活がままならず、あるいは周囲が気になって抜けられない。勇気だけでは矯正できない事情を抱える大人たちの真似をする必要はない。何故なら高校生ならまだやり直せるから。
思うがままの振る舞い方も、凶悪犯罪に比べればまだまだ可愛らしいもので、そこでさえ抜けられない勇気がないならこの先待っている人生には太刀打ちできない。本作はそのような警告にも取れる。
本当の自分を隠して、横暴に傍若無人に振る舞うよりも、ふとした時に分かるその素顔の方がずっとずっと素敵なことに、彼らは気がついているのだろうか。気がついていないとしたらそれは人生の大きな損失だ。一見お茶目な感じさえする茶番の中に、実は重大な警告が込められているのに、気がつく子と気がつかない子、ここでもまた格差が生まれてしまう。差を生むかどうかは自分の心ひとつ次第、どうか気がついてくれればと願ってしまう。
「彼ら」や「俺たち」ももちろん大事なのかもしれないが、本当に大事なのは「私」に他ならない訳なのだから。そこから自立していかないといけない時は、人間には必ずやってくる。
★★★★☆ 4.5/5点
あの兄弟が本当に兄弟だったのには驚き
しかし、あのバスには乗りたくないですね!w
いろいろ入れ替わり立ち替わりなのがよかったんじゃないかと思います。
こんなバスに乗り合わせたら、次の停留所で即、降りる!
ガムとかくっつけられたくない。 笑
周りを気にせず自分のスタイルを貫いていた漫画描き君やヘッドホンの子はかっこよかったですね。ああいうのは大人でもなかなかできなかったりするから
だったら何で若い時に人に迷惑かける?って。
>周りを気にせず自分のスタイルを貫いていた
それが一番カッコいいです。
他がするから自分も人に迷惑かけるっていうのが一番醜い。