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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『8月の家族たち』 (2013) / アメリカ

2014-04-19 | 洋画(は行)


原題: August: Osage County
監督: ジョン・ウェルズ
出演: メリル・ストリープ 、ジュリア・ロバーツ 、ユアン・マクレガー 、クリス・クーパー 、アビゲイル・ブレスリン 、ベネディクト・カンバーバッチ 、ジュリエット・ルイス 、マーゴ・マーティンデイル 、ダーモット・マローニー 、ジュリアンヌ・ニコルソン 、サム・シェパード 、ミスティ・アップハム

公式サイトはこちら。


見るからに豪華キャストっていうのもあるんですが、こういう、何となくごちゃっとしてる感じの作品が好きなんで早速行ってきました。

ピュリッツァー賞とトニー賞をダブル受賞したトレイシー・レッツの戯曲を映画化。オクラホマの片田舎。父親が突然失踪したことをきっかけに、病気のため毎日薬漬けの日々を送る毒舌家の母ヴァイオレットの下に、娘たちが久しぶりに集まる。長女バーバラは浮気した夫と別居中で、反抗期の娘にも手を焼いている。一方、次女カレンは婚約者を連れてきて、三女アイヴィーも恋に夢中。自分勝手な母親とそれぞれの人生を歩む娘たち、そして彼女らを取り巻く男たちの本音が次第に明らかとなり、家族の秘密が暴かれていく。(映画.com)


若干ネタバレありかも。





ここ最近、アメリカ中部を舞台にした映画が多い。共通するのは「家族間の行き詰まり」。『ネブラスカ』(観たけどまだ書いてない・・・滝汗)もそうだった。どちらも家族がうまくいっていない、とにかく日常が充実していないのが共通点。

不穏な空気の始まりは映画の最初から既にある。アルコール中毒の老詩人と、口腔癌の化学治療によって薬漬けなその妻という設定からしてあまりハッピーとは言い難い。
そして老詩人の失踪をきっかけに、この家の空気を重たくしている家族たちが次々と集まってくる。老詩人の妻・バイオレットの3人の娘たち自身もそれぞれ悩みを抱えている上に、そのパートナーとの関係も上手くいっていないか、上手くいっていたとしても不安が付きまとうものばかり。そしてバイオレットの妹・マティとその夫チャールズ夫妻も駆けつける。

どことなくしっくり来ない、調和というものが感じられない雰囲気のこの一族の積年の問題について一気に浮かび上がってきてしまうのが「食事会」。結婚式や葬式などで親戚が一堂に介した時によくおこる現象ではあるけど、この一家の場合は掘れば出る出るというか出過ぎ。バーバラとビル夫妻の婚姻が風前の灯であること、アイビーの人目を忍ぶ恋の行く末、周囲をいらだたせるカレンの行動とその怪しげな婚約者。マティ夫妻の息子であるリトル・チャールズの愚鈍さには何か謎があるのだろうか。

結局この数々の問題については、全てが収束することはなく壊滅の方向に行ってしまう。バーバラ夫妻の結末にはカレン達が何気に関わり、そしてアイビーの結末にはもっと多くの人々が関わっていく。マティたちまでもが予想外の方向に走っていく。
そして全ての遠因にはバイオレットの影がある。バーバラばかりを可愛がった代償が、アイビーに心を閉ざされることであり、カレンの不安定な行動につながっていく。しかしバーバラもまた被害者なのかもしれない。彼女の愛情がバーバラに向かった理由、それは後半で語られてアイビーの結末にもつながるものだから。さすがに身内に裏切られたと知ったら人間普通正気ではいられないはずだけど、バイオレットはもしかしたらそこを一足飛びに飛ばしてしまうことでなかったものにしてしまうのかもしれない。しかしそれはなかったことにはできないはずで、その証拠にバイオレットは薬物依存にも近い状態に心と身体を壊してしまっている。壊れた母親は当然娘たちの気持ちなどお構いなく最終的には全てが離れていく、最後に残ったのはあんなに自分が忌み嫌っていた家族ではない人間だったのが大層な皮肉である。

どの家にも絡みついたまま解けない紐のような人間関係は存在する。いつから絡まったままなのか、絡みつき方が緩む気配があるかないか、それを検証する人もいるのだろうが多くはその困難さに解決できぬままなのだろう。むしろ肉親であるからこそ消えないわだかまりが発生し、遠慮会釈のない対応に日々深く傷ついていくことになる。

最近では「毒親」という言葉がある。親のはずなのに子の心を蝕んでいくような親のことだ。または実母に対していい感情を持てないという娘も多くなってきている。核家族と個人主義が行き渡ると、義両親よりも気楽な存在のはずなのにどういう訳かしっくりいかない母と娘の関係をカミングアウトするケースも増えている。
この映画の場合は、他の家よりも様々な問題がありすぎると言えばそうなのかもしれない。だが家族という、最も濃密だが困難な人間関係に行き詰る人の行動にしんどくも共感を覚える。責任や愛情があってもそれだけで関係を最後まで続けられない、人の心の弱さ。血縁とわかっていてもいっそのこと背を向ける方が楽というのも、また不幸である。そんなしんどさを見せられてしまうけど、どの俳優も演じきっていてたっぷりそのやるせなさに浸れてしまった。


★★★★ 4/5点






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12 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
ボーさん (rose_chocolat)
2015-09-26 18:50:06
・・・と思ってるとわかんないですよ。
人生何があるかは最後までわからんのです。。
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しみじみ (ボー)
2015-07-09 07:12:29
うちは平和でよかったわー。
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maru♪ちゃん (rose_chocolat)
2015-01-05 09:12:52
映画で観てるだけならいいんだけど、
リアルで周りにはいてほしくないですね(笑)
どこでも人間関係崩れちゃうと大変です。。
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メリル・ストリープがスゴイ! (maru♪)
2015-01-05 00:23:07
バイオレットは厄介な人なんですけど、何故か憎めないところがありますね(笑)
映画で見ている分にはおもしろいキャラです。
自分の母親だったり、職場に居たら嫌ですけど・・・(o´ェ`o)ゞ

アメリカ人でも日本人でも人間関係は大変なんですね(゜-゜)
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sakuraiさん (rose_chocolat)
2014-07-08 18:04:24
家族のよもやま、あるあるですよね。多かれ少なかれ。
最後確かに投げっぱなしかもですね。
でもあれって何かリアルじゃなかったですか?現実的。映画のようにうまくはいかないってことなのでしょう。
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たぶん (sakurai)
2014-07-07 13:09:53
いつになくらしい役だった、サム様が、早々に退場してしまったのが、私にとっての残念要素だったかなと。
クリス・クーパーがやけによかった!!
多かれ少なかれ、家族のトラブルなんぞ、ウサウサありますが、やけに投げっぱなしで、もやもやがたまる。
そんなもんですかね。
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悠雅さん (rose_chocolat)
2014-05-26 08:17:23
俳優さんたちはみなさん凄かったですね。
メリルさん、私はあんまり好きな作品って実はなくて、
彼女の大きすぎる演技が映画には何となく合わないなと思っていたのですが、本作は何故かちょうどよく感じました。
彼女のダイナミックさが生きましたね。

舞台の映画化ってどことなく整然としすぎてて、映画に比べると作りこんでいる部分が目立つんですが、
本作はあまりそれを感じさせなかったです。
そのくらいリアルに感じられた訳でした。
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舞台作品の映画化 (悠雅)
2014-05-25 21:03:11
こんばんは。
内容も内容なんですが^_^;
わたしは、舞台の映画化作品が結構好きでして、
如何にも、舞台らしい台詞の応酬と、登場人物の造形をきちんと体現できる名優たちをずらりと揃えた贅沢な作りを、
とても楽しませてもらいました。
それぞれの俳優さんたちの演技、やっぱり素晴らしかったです。
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まっつぁん (rose_chocolat)
2014-05-25 08:39:19
>日本との感覚差
なーんにもないアメリカ大平原での孤独と、
狭くて世知辛い人だらけの中の日本の大都市の孤独との比較ってできそうですね。
東京の孤独と、地方都市での孤独とはまた全然違うし。家族のつながり方も全然違う。

どれが一番孤独なんだろう? 
言えることは親が腐ってしまうと他の家族も機能不全になっちゃうってことでしょうね。
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毒親 (まっつぁんこ)
2014-05-25 06:11:58
「ネブラスカ」といいこの作品といい日本との感覚差を感じました。
アメリカ中部は広くてどこまでいっても平原で人いない。
日本は狭くて人だらけだけど知らない人ばっかり。
孤独感の質が違い家族のありかたも違う。
かえって日本のほうが孤独感も強く毒親も発生しやすいのではないでしょうか?
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migちゃん (rose_chocolat)
2014-05-25 01:57:53
ハッピーじゃないからリアルというか、
あるある~って思えるんだろうね。
家族ならではの話でした。
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Unknown (mig)
2014-05-25 01:47:38
こんばんは。
ベスト10に入れるほどじゃないけど、うんコレ良かった。
ハッピーエンドではないからこそ良かったんだと。

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