原題: TANZTRAUME
監督: アン・リンセル
出演: ピナ・バウシュ 、ベネディクト・ビリエ 、ジョセフィン=アン・エンディコット
鑑賞劇場: ユーロスペース
公式サイトはこちら。
一足お先に公開された『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』は本当は昨年のTIFFで観たかったのですがチケットが取れずにやむなく公開まで待ちました。
そして先月行ってきたんですが、正直初心者のため、映像が美しくてユニークな視点ということは伝わったのですが、ではピナ・バウシュの踊りとは? と考えた時に具体的にイメージとして浮かばなかったのが非常に残念で。
このドキュメンタリーが公開されるので、ぜひ補完したいという目的で行くことに。
ピナ・バウシュ wiki
類稀なるダンサー&コレオグラファーとして活躍した彼女は、2009年に逝去。
生前の主な作品として1978年に発表された「コンタクトホーフ」がある。 これは舞台上にできた空間を多数の男女がダンスの概念を超えた感覚の振り付けで表現する演目。 「群像ダンス」とも呼べばいいのだろうか。
『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』でも登場したし、2000年には「65歳以上の男女によるコンタクトホーフ」も上演されている。
本作は2008年に行われた「14歳から18歳の若者によるコンタクトホーフ」が作られる過程を、ドキュメンタリーとして撮影したものである。
ピナ・バウシュの舞踏は非常にユニークである。
いわゆるクラッシックバレエのごときものではなく、舞台上に多数の男女が登場するパターンも多い。
「春の祭典」を『踊り続けるいのち』で観たが、何と舞台上に本物の土を撒き、そこで男女が躍る。 当然のごとく彼らは泥まみれだったりする。 しかしその泥さえもダンスの一部であるかのように粛々と彼らは自分を表現する。
型にはまらない舞踏方式である以上、ダンサーは単に型通りに振付だけを踊ればいいというものでは当然ない。
彼らにピナは要求する。 「自分を解放しなさい」と。
そう、ダンサー1人1人の人格が求められ、素のその人自身を表現せよ、とでも言うべきか。 しかしそれは途方もない自分自身との向き合い、対峙である。 そして容赦なくピナは彼らにダメを出す。 それは違う、もっとできるはずと。
この方法を14歳~18歳のティーンエイジャーに適用するわけである。 人生経験も少ない彼らが一体その期待に応えることができるのか。
ピナの要求は形がなく、マニュアルもない。 そして答えはダンサーのなかにしかないため、完成形を作ることは非常に難しい。 若くてダンスが初心者という彼らにとって、戸惑う場面も多々ある。
しかしながら彼らには若さがあり柔軟性がある。 素直さがある。
何よりも彼らは、ピナが求めることをこなしていくことによって日々違った自分自身を発見できているという実感があったのではないだろうか。
実際はピナの代わりに、彼女の舞踏を知り尽くしている2人の女性ダンサー・ジョーとベネディクトによってそれらは口伝されていくのだが、彼女たちはピナの代弁者として少しもブレのない要求をしていく。 その彼女たちとティーンエイジャーたちとのやり取りの中で、若きダンサーたちは自分たちですらも思いもよらなかった世界を発見していくことができた。
彼らは言う。 「自分が変わった」と。
心の中で考えていたかも知れないけど、表現として出したことはない様々な感情・・・ 愛、恋、悲しみ、戸惑い、怒りなど・・・ をきちんと正確に出すことによって、1人の人間としても「人にどうあるべきか」を恐らくは考えたに違いない。 思春期という人格形成がなされる時代にこのような体験ができたことは彼らにとっては幸運だったのではないだろうか。
彼らの表現は躍動感に溢れていて、「人として」自らに与えられた課題をきちんと表現している。 そのこと自体に踊る意味があり、また踊らなければわからないものだった。
ピナ・バウシュの表現というものはあくまでもその人自身の内なるものの中に存在している。 そのセオリーをしっかりと見せてくれる作品でした。
★★★★ 4/5点
で、この作品どうしようか迷ってたのよねroseさんと同じく補完でみとこうかなとも思うんだけど、また『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』みたいなんだとやだしなぁと…。予告編から観るとどっちかと言えばこっちの方が普通のドキュメンタリーっぽいね。観てこようかな。
確かに書きづらかったですよね。 私も初心者なんでもっとピナのこと知りたかったし。
あれはトリビュートに近い性格の作品なんで、ピナ上級者向けです。
その点本作は私は大変楽しめました。
けど、アート系映画がそんなに好きじゃないなら、無理にとは言えないかなあ。
あくまでアート系は心で感じるかそうでないかなので、自信がなかったらDVDスルーでもいいかもしれません。 私はアート系好きなんで、これは観に行っちゃいましたけどね。
アート系でもそうでなくてもあんまり気にしないたちなんで、単純に作品がドキュメンタリーとして面白いんであれば行ってこようかしらん。ただ時間が変なとこしかやってないんだよねー。もちっと観やすくしてくれりゃいいのにさ…。
確かに『踊り続けるいのち』はそうなんだよね。
だから知識がないと記事にできない。 ということで私も書けなかったし。
こちらのほうがやっぱり、ピナの人となりとか実力がわかるわけね。
そして彼女に携わった人たちがどのように変化していくかということも。
そこを観れたのはよかったと思います。