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チューリップス・シスター第9話

2016-08-13 07:00:14 | 小説チューリップス-シスター


チューリップス・シスター第9話 双子の共有感情

2人の精神科医達は治療が必要である事は理解していたが、単なる精神治療や薬物治療ではない。
ただ、美咲の思いを受け止める事、しっかりと見守りながら時には、美咲に声をかける事だった。
美咲との信頼関係を作り出す事が最優先の対症療法であった。

しかし、メンタルクリニックの5人の精神科医は病院内での話し合いでは入院させて、もう一度、同じ治療をして叫ぶかどうか、それが本当かどうか確認してみたいという思いが強くあった。
経験豊富な精神科医は話し合いを聞きながら、精神科医と病院側だけで話す事ではないと思い、教会で皆さんで話し合いをした方が良いかもしれませんと提案をしたが却下された。
特異的稀な美咲の能力を持っていると見抜いていたかもしれない。
この時は仮説の段階であった為、フリーランスの精神科医は強く言う事は出来なかった。
神父との話し合いでの会話から、仮説ではあるが可能性を秘めていると考えたのだろう。
神父も病院内での話し合いに同席していたが、次元の違う世界という事は出来なかった。
結局、病院勤務ではない5人の精神科医の言うとおりに確認の為と神父は思い従う事にした。
この時の神父には、美咲の事はイエスとの誓いで良く理解していた、何が起きるのか気づいていたのかもしれない。
美咲との関わり方で、5人の精神科医の人生と運命的な出来事が起こる事が、神父の脳裏にはあったが確信出来るものではなかった。

病院内での全ての会話は、自然の中にいる精霊と空を舞う天使が美咲の耳に流していた。
2人の精神科医は、この先メンタルクリニックを運営する5人の精神科医にイエスからの罰が与えられるとは知るよしもなかった。

2人の医師とは、病院に勤務する精神科医と世界を回り診療に経験豊富なフリーランスの精神科医である。
美咲との信頼関係を作り出す事が最優先の対症療法とする意見交換の中で判断をしていた。
専門の精神科病院内で、2人の判断で強く話す事が出来れば、彼らの判断が優先される可能性もあった。
現実の世界では、5対2では何を言っても無駄、多数決なのが現実なのだ。
「話し合いの場所を変えませんか、教会の中で、もう一度だけ話し合いを持ち考えてはもらえませんか」
多数決で決められる事で、神父は少し考えた末に精神科医達に言った。

教会を中心として半径5kmの範囲内には、専門の精神科病院1軒、総合病院が1軒、個人で運営するメンタルクリニックが5軒、総合医の内科外科を標榜する診療所が2軒あった。
障害者施設は2軒、障害者と言ってもそれは見た目で判断された者達である。
障害者達の中には、真理や美咲のように将来に特異的な能力を持つ者達もいたが能力は開化するのは先の話である。
精神科医達は、神父に精神科専門病院で入院の準備を進めていく事を話している時にある出来事が起ころうとしていた。

とりあえず、精神科医達は神父の提案により再度教会での話し合いをする事になる。
精神科医が、何故か神父の提案を受け止めたのか、それは神父の心の中にいる精霊と天使が動かした。
病院では、現実の世界しかないが、教会の中では現実の世界だけではなく、心に宿る神イエスと聖母マリアからの導きがある。
神父は、教会の中で神による導きに、精神科医達が導かれる事を祈っていた。

教会の中で再び話し合いを始めようとした頃、美咲に変化があった。
「話し合いをする必要はない、聖域に訪れれば、すぐに導かれる」
神イエスと聖母マリアから伝令があり、神父は瞳を閉じて十字架を握り心の中で伝令に祈りを捧げた。
精霊と天使の導きそれは、美咲の部屋から教会の中まで聞こえてきた、美咲の叫ぶ声であった。
神父達は、急いで美咲の部屋へ向かった。
「どういうことですか」
「申し訳ない、何もわからないんだ」
精神科医達には、いったいどういう事なのか、理解する事は出来ず、ただ漠然と立っているだけだった。

今まで、ずっと言葉すらなかった美咲が、正座をして扉を向きながら叫んでいるのだ。
美咲の部屋から教会までは50m程の距離があったが、呼子笛を吹くように美咲の叫び声は聞こえていた。
美咲は、治療をすすめる医師らの言葉を心の声で聞いていた。
「私の邪魔をしないで、悪の邪気は消えてしまえ!」
話の内容を心で受け止めると5人の精神科医達に怒りの感情が生まれ1度目では怒りの声を叫んだが、2度目は教会の中にいる精神科医の脳と全身、そして精神科医の心の奥深く中へ侵入し怒りの声を叫んでいた。
この怒りの声は教会の中にいる5人の精神科医達にしか聞こえない美咲の感情と美咲の怒りの声であった。
この怒りは、自分自身で外敵から身を守ろうとする、美咲の感情である。

その声によって精神科医達は、脳への強い圧迫により異変があり、眼の瞳孔が開き、顔の皮膚が引きつり、膝をつき頭や顔をおさえる。
何故か、神父とセラピストと臨床心理士には、怒りを覚えた美咲の姿が脳裏に映し出されただけで脳や体には異変はなかった。
「この導きは、神イエスではなく聖母マリアでもなく、もしかしたら真理が守ってくれたのではないか」
神父は一瞬だけだったが、真理の姿を思い浮かべた事で感じるものだった。

「大丈夫ですか?」と精神科医達に何度も声をかけるセラピストだった。
セラピストが体をさすると、精神科医達は教会の椅子に座り何度か息切れがあり深呼吸をしていた。
「何が起きたのか、わかりますか?」
セラピストは精神科医達に声をかけたが、何が起きたか記憶にはなかったようだ。

セラピストは、美咲と長期間接していた事で、美咲と同類の精霊と天使が心の中にいた。
美咲はセラピストには心を開いていた、そして美咲はセラピストの心の中に同類の精霊と天使を宿していたのだ。
セラピストと美咲は、精霊によって信頼関係を持つ事が出来た。
神父は、美咲にとって自分の部屋が自分の居場所であり聖地なのかもしれないと思った。
そして、教会内での出来事は、真理と美咲の共有する能力で、成されたものではないかと考える神父だった。

「病院では無理かもしれません、美咲さんの部屋でお願いできませんか、美咲さんの居場所はこの部屋なんです」
神父は、精神科医達に声をかけた。
「美咲の部屋で見守り信頼関係をつくり、それから美咲を理解し自由の中で、対症療法だけで良いのか考えればいい」
神イエスからの神父へ伝令があった、神イエスからの伝令は神父を新たな道へと導いていく。

美咲の叫びは、美咲自信が叫んでいたのではなかった。
開化する予兆の段階の能力が働き、美咲を導く方向を変えようとする精霊と天使の言霊によって、5人の精神科医達に向けられたものであった。
美咲の叫びは、美咲の心の奥底にある開化に近づく為の能力である。
5人の精神科医達は、まだ表に出してはならない美咲の能力の一部を引き出してしまったのだ。
今の美咲の状態から特に自殺まで進行する事は考えにくいと判断し、美咲への精神治療は一時的に諦める事にした。
神父と5人の精神科医は、姉である真理にも会い話をしようとしたが話すまでもなく、神父からの伝えられていた事で更に驚くばかりであり信じられない様子であった。
言葉にする事が出来なくなっていた精神科医達である。

双子しかも一卵双生児で全く正反対の姿を見るのは極稀な事であったが、2人の精神科医や2人の臨床心理士は真理と美咲の見えない心の中では深い繋がりがある事を感じていた。
2人の精神科医や2人の臨床心理士は神父から真理と美咲の全ての環境や状態を聞いていた。
真理の瞳は輝き会話上手、冷静な判断ができる真理は、微笑みながら挨拶を交わす。
ただ、精神科医達と臨床心理士は、真理の瞳に吸いこまれるような自分の存在が消えそうになる何かを感じていた。
精神科医達と臨床心理士が、美咲の瞳を見た時と同じ感覚であった。
約30分程、精神科医達は真理と内科を標榜する診療所の別室で話をして、臨床心理士は静かに真理の話の記録を取る。

真理の笑う声や会話をする声は扉や壁を通り抜け、待合室まで聞こえていた。
叔父夫婦は、真理の声が聞こえ、少し心配げに患者の診療をしていた。
「先生、楽しそうだね、真理ちゃんの声はいいね、可愛い声で気分が楽になるよ」
「そうだよね、待ち時間が長く感じないよ」
待合室で診察を待つ患者さんからも言われるくらい患者達にも聞こえていたようで、苦笑いをする内科医の叔父と看護師の叔母であった。

5人の精神科医達の診断というよりは感想に近い判断をした、真理も美咲も何故か診断と判断させようとはしなかった。
2人の精神科医は、双子の姉妹に何かを感じていたが、それを5人の精神科医達に伝える事はない、信じられないと言われれば話は終わってしまうからだ。
姉妹に会って奇妙で不思議な感覚になり感じた結果を話すべきか考えたが、5人の精神科医達は叔父夫婦と神父に診断は困難と伝える。

この時の神父は、生きる環境の違いによって、表面的表現に違いはあるが、双子の姉妹が同様に持っているものは、もしかすると「憎悪」もしくは「殺意」ではないかという思いであった。
生活環境や表現の仕方も違う姉妹の共通点は、二人の瞳の奥にあった。
セラピストと一緒にいる美咲の瞳は素直で正直に見せてくれていたが、真理は笑顔を作るが瞳を隠すかの微笑みのようだった。
そして真理と美咲に変化が見られた、真理と美咲の表す表情が逆になっていたのだ。
神父は「憎悪」「殺意」とはどういうものか、行方しれずの母親の現在と父親の自殺について精神科医達に聞くと7人の精神科医達と2人の臨床心理士は気にしていた。
生活環境だけではなく、過去にある感覚と感情は、薄れていくが生きてく環境や出会いによって過去を振り返ってしまうトラウマやフラッシュバックという現実がある。
特に、真理の表現する笑顔の奥には、美咲の部屋で感じたものがあった。
真理と美咲は瞳に移されるものは違うものの「怒り」をあらわにするものは共有され同様の行動である。

5人の精神科医達によって、真理は教育の中で能力を目覚めさせ、美咲は教会での話を聞き「叫び」と共に眠っていた双子の能力だったが、双子の将来に予兆の段階で開化される能力を目覚めさせるきっかけを作ってしまった。
「美咲と真理に備わっている能力の共通点は、明暗・陰と陽・太陽と月ではないか」
神父は思い考えながら、甥からの手紙の内容を思い出していた。
それぞれに共に持って抱くものとしては、この時期の真理には「憂い・歓喜・慈悲」美咲には「怒り・憎悪・復讐」という全く正反対の感情があった。
感情とは、生まれ育ち方や人との出会い、そして日常生活の環境、社会環境によって変わるもの。
真理と美咲の場合も同じ、出逢いや環境だけではなく父母への思いが、双子の運命を変えているのかもしれない。

しかし、その能力は年を取る事に真理と美咲の抱く感情は同化し「憂い・歓喜・慈悲・怒り・憎悪・復讐」6つの感情をバランスをとりコントロールするのではないか。
神父の心情として、心の神イエス、聖母マリア、精霊、天使達によって導かれる事を祈り続ける事になる。
「真理と美咲は、この能力によって、新たな未知たる人生を生きる事になるのだろうか」
神父が常に思う事であり、真理と美咲と同じように神父自身も変わらなければならなかった。
真理と美咲が抱く「憂い・歓喜・慈悲・怒り・憎悪・復讐」6つの感情に寄り添う者になる事が神父の役割でもある。

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