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ポリシーレジェンド4話

2015-09-06 08:40:22 | 小説ポリシーレジェンド

同級生


何度か深呼吸をして冷静さを戻したユウコは、僕に声をかけた。
「ねえ、覚えられた?」
「無理だべ、後でゆっくり見てくけ」
「そうだね、すぐには覚えられないもんね」
「入学式までの間に、見ておくべ」
「あのさあ、いつも思ってたんだけど、その方言、やめれば」
「向こうに行けば、やめるべ、きっと」
「本当に?…できるの?」
「たぶんな、でもどうだべ?」
ユウコの声かけに、適当に答える僕だった。話は卒業アルバムの事に戻るが僕には添え書きのページで気になる事があった、
「なあ、ユウコ、気になる事があるんだ」
ユウコは驚いた感じで、え?って感じで瞳を大きくしながら僕を見つめた。そう驚いたのは、僕が卒業アルバムを見て、気にしているという事だ。
以前の僕は、ユウコに今のような思いで、恋をしながら話す事はなかったし、僕自身、不思議な感じだった。きっとユウコも同じような感じだったんだろうと思う。それから地方の方言を使わなかったからかもしれない。
「何か気になるの?」とユウコは照れくさそうに聞いてきた。
まるで僕が恋の告白をすると思っていたかのようにだった。僕はユウコの顔を見ていて、そう思いユウコの瞳から目をそらした。
そして卒業アルバムの添え書きのページを見つめていた。
「ん、ここのさ、また会えるよ。S.Kって誰だっけ?」
この言葉をかけた時、ユウコの表情は、ガッカリしたような感じで、また深呼吸をしてから以前からの冷静な顔に戻っていた。
「な、な、な、なんだよ、直也の馬鹿」と小さな声で呟いた。
「え?何だよって、なんだ?」
この会話だけで、僕とユウコは互いに照れながら駅の天井を見上げた。しばらく天井を見上げたままの状態で静かな小さな箱のような駅の中でユウコの小さな声が耳に入ってきた。
「加藤真一君、シンちゃんだよ、覚えてないの?」
「良く解からないんだ、記憶が曖昧でさ」
「そうなんだ、私は良く覚えてるよ、直也のライバル」
「ライバルって?」
「直也とシンちゃんは、何かと競い合っていた仲だったよ」
「ん?」
「喧嘩するか、しないのか、マジ切れだったんだからね」
「マジ切れ?」
そういえば、僕はマジ切れしていた頃の記憶がよみがえった様な気がした。
何となく、脳の記憶の片隅にあったような。
「転勤族の加藤真一君、お父さんの転勤であっちこっち転校してた人」
「ああ、思い出したような気がするけど、写真はどれ?」
ユウコは、卒業アルバムの写真を見つめる僕の顔を見て笑っていた。
「ハハハ、直也、シンちゃんは1年生の時、数ヶ月で転勤したから、写真はないからね」
「じゃあ、わからねえじゃねえか、誰が書いたんだ?」
「私が、シンちゃんの代わりに書いたんだよ、シンちゃんに頼まれたから」
僕は、呆然としながら、そうだったんだと思ったが、顔が仮面の同級生の顔を想像していて言葉を失った瞬間だった。
「直也、いま、何考えてるの?」と、ユウコは僕の肩を人差し指で軽く叩きながら言った。
「ハッハハッハ、変な顔を想像して見てたの?直也は面白いね、どんな顔?」
「ああ、ちょこっと笑える、仮面ライダー」
「はあ、それは保育園の時の直也じゃない?」
「そうかもな、顔がわからない時は、いつも仮面ライダーだしな」
「じゃあさ、仲間以外のクラスメイトって、みんな仮面ライダーなの?」
「ああ、そうさ、みんな仮面ライダーだったかもな、でも仮面ライダーは1人じゃない」
僕はユウコに、馬鹿にされると思っていた、けど違った。
「ヒーロー好きは、変わらないのか・・・・・・」
ユウコは、きっとそう思っていたのかな。
「ヒーロー、ヒーロー、ヒーロー」
僕が口ぐせにしていた言葉だったからな。
「あのさあ、本当にシンちゃんのこと覚えてないの?」
「覚えているような、覚えていないような、そんな感じだな」
「あ、そうなんだ、いずれ思い出すでしょ」
「ハハッハハッハハハッハ」
「ハハッハハッハハハッハ」
小さな声で僕とユウコは、2人で笑った。
それから、卒業アルバムの話から、別の話しに変わった。
「ユウコ、お前さ、カメレオンって知ってる?」
「もちろん知ってるよ。体の色を変えるんでしょ」
「そんなんだよ、ちょっと待ってて」
「ん、いいよ、でも何?」
ちょっとだけ、僕とユウコの会話が離れた時だった。
「あのさ、これなんだけど」
「ん?それ知ってるよ、誰でも読んでる絵本でしょ」
「誰でもって、俺は知らなかった」
「そうだろうね、直也は図鑑とか辞書とかしか観てなかったでしょ」
「ん?何で知ってるの?」
「誰からきいてたんだよ、自宅でいつも直也の周りには図鑑と辞書ばっかりってね」
「誰?」
「さあね、教えてあげない」
深く考える事が出来なかった僕は教えてくれねえのか、まあいいやって思った。
「きっと、直也の周りの仲間君達は、図書館で読んでたと思うよ」
「図書館?」
「直也は、まっすぐな人だけど、仲間のみんなは違うんだよ」
「何で?」
「だって、何で直也は、いつも成績優秀なの?」
「ん?」
「周りにいるはみんなは、直也とは違う、はっきり言って落ちこぼれでも直也と同じ馬鹿、真っ直ぐな直也と仲間でいる為にはカメレオンになるしかなかったんじゃない?」
「あいつらも、それなりに点数取ってたと思うけど」
「そうね60点以上は何とかね、でも直也は違うでしょ?」
僕は、点数の事なんて考えることもなかった事に気づいた時だった。
真っ直ぐで自由な僕と一緒にいる為には、あちこちから情報を取れる仲間でなければならならなかった事。ユウコは僕に話してくれた。僕は、いつも一緒にいて何でも話せればいいとしか考えてなかった。
でもユウコの話で仲間がいるという事は深いものがあるのだと思った。また話しは変わった。
「この絵本を見てる子供に、不良なの?って聞かれたんだけど」
「怒鳴ったりしたの?」
「いいや、怒鳴る気にはなれなかった」
「何で?」
「良く解からないし、子供の母親が不良じゃないからって言われたから」
「なるほどね、まるで直也みたいね」
「何で?」
「直也は、お母さんの言われる事には逆らえなかったでしょ」
「まあな」
「直也は、きっと成長したんだよ、短気のナオヤは消えたみたいね」
そういえば地元から離れられると思うと抱えた重荷が軽くなったような気がした僕だった。僕は自分というものが、はっきりと見えていなかったと思う。ただ、ある事からいつも逃げて、それでも何かと戦っていたのかもしれない。同級生達を守りたいという思いだけで、ただ真っ直ぐに生きて自分を本当に考えられなかったのかもしれない。これからは、ユウコの話で自分を大切にしようと思えた。
「ありがとうな、ユウコ、好きだ・・・」
「えっ?今、何ていったの?ねえ、もう一度聞かせて」
「いや・・・、何でも、何でもないよ」
「・・・、・・・、・・・」
「いつかきっと、シンちゃんと出会う事、あると思うよ」
ユウコが言った言葉の意味は、この時の僕は、良く解からなかった。そして仲間達よりも僕は小さな世界にいたのだと思った。中学を卒業すると実家のある公立高校ではなく、地元を離れ私立高校に行く事になる。受験した高校は地元の公立高校と私立高校ともに合格したが地元から電車では約1時間かかる私立高校である。そして直也は叔父の家から私立高校に通うことになっていた。
ユウコとの会話が途中で終わり電車が駅に止まった。
「電車が来たから、ユウコ、さようなら」
「直也、何で、さようならなの」
「もう地元にはいられない、思い出が多くてさ」
「また会う事はできないの?良い思い出もあるのに」
「良い思い出って、何?」
「覚えてないの?ボクシングで優勝したでしょ」
「覚えてるよ、でも何も変わってない」
「優勝した事で大島直也の姿は広がって暴力や恐喝やいじめが減ったでしょ」
「減ったのは分かるけど、なくなる事はないだろ」
「大島直也は有名になれた事は良かったと思う、暴力では何も変わらないって事は気づかせたと思う」
「気づいているのかどうかは僕には分からない」
ユウコは言葉を失ったが、離れた場所でいつか直也は気づいてくれると信じる事にした。
「直也、仲間達はきっと会いたがっていると思うよ」
「今は分からない何も、じゃあな、ユウコ元気でいろよ、仲間にも宜しく」
直也は改札口を通り電車に乗った。直也の後姿を見つめるだで声を掛ける事が出来ないユウコだった。そして僕は電車の中の出入口で立ちながら過去を振り返っていく。2時間先の駅に着くまで過去の自分の夢や仲間達との関係や様々な出来事を窓を先の光景を見ながら嫌な事も良かった日々を振り返る。


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完結版セイネンキレジェンドについて:しばらくお待ちください。
カテゴリーを変えました。小説ポリシーレジェンドに変更しました。
先にセイネンキシリーズ:長編小説(57話:最終回となります)
現在:蒼い時のドリームキャッチャーをゆっくりと投稿しています。
追記
蒼い時のドリームキャッチャー次は「小説セイネンキレジェンド」更新いたします

ポリシーレジェンド3話

2015-06-13 09:15:09 | 小説ポリシーレジェンド

恋愛中


僕には幼い時期から遊びの中で仲間達と良く冒険をしたものだ。家族ぐるみで海に行って遊んだ、森の中では親に叱られながらも木登りや洞窟の中で遊んだ。危険な場所では遊んではいけない、それは良く解かっていた。しかし僕らは、好奇心旺盛で何でも出来ると思って怪我をするのを当たり前のように思っていた。でも、怪我をするたびに、僕と仲間達の母親は全員集合って感じで、でも僕らは叱られているとは思う事はなかった。きっとママ友が集まる理由で、それに付き合わされていたのかもしれない。そんな事を思い出していた時、声をかけられた。
「何してんの?ナオヤ」どこかで聞いた事のある声だった。
「なんだ、お前か、誰かと思ったよ」
顔を上げると目の前には傘をたたむユウコが立っていた。その姿を見て、僕は、マジで驚いた。初めて驚くという感覚を持った時だ。人を気にするようになっていた僕は、何でいるの?とユウコに聞いた。
「もういないと思ったけど、店から外見たらナオヤらしき姿、見えたんだよ」
「そうか、で、あいつらは?」
「もう帰ったよ」
「そうか、そうか・・・良かった」
「何?良かったって何?」
「あいつらに、見送りはされたくなかったから」
「そうなの?、らしくないね」
「照れるの嫌だし・・・」
ユウコにだけには素直になれた僕だった。
「ナオヤの席ってさ、駅の入口が良く見えるんだね」
「いつも、何考えてたの?」
「別に・・・特には何も・・・」
きっとユウコは、僕の過去全ての気持ちを知っていると思った時で、深く聞かれる事はなかった。
「ねぇ、一緒に見ようよ」
「ああ・・・」
こんな会話から僕とユウコは待合室で一緒に卒業アルバムを見る事になった。ユウコは僕を気づかってか仲間達には、僕が駅にいる事を言わなかった。僕とユウコとの関係は幼なじみの中、恋愛対象にはなってはいないと僕は思っていた。それだけに昔ながらの親しみから気持ちを楽にしてくれる存在であった。妹分のクミコが消えてしまってからはユウコが僕を支えてくれていた事は確かだったと思う。でも、僕の思いとは別にユウコにとっては違っていたのを気づいたのは、この待合室でアルバムを見ている時だった。ユウコの気持ちを知った時、僕は、もう遅いんだと胸の内で思うようにしていた。
「ねえ、苦しくて辛かったでしょ」見つめ合った時にユウコは言った。
「ああ、でもこれからは少しは楽になれるだろうし何か変われるべ」
僕が答えるとユウコは、さり気なくため息をつき、そうなんだねと笑みを浮かべて、強がりなんだと思ったのかもしれない。そんな雰囲気の中だった。名前を覚えていない事を話した時、僕は真面目に話していた、けどユウコは微笑みながら小さな手で口を押さえ小さな声で笑った。そしてユウコは、ちょっと少しだけ離れて僕の隣に座った。今まで、こんなに近くにいた事ないよな。この時の僕はユウコと一緒にいた、あの頃の事は忘れていた。僕は、ちょっと近すぎるだろと思った。そして僕の体は熱くなったような気がする。そんな時、ユウコは照れる事もなく、いつもの静かで冷静に声をかけてきた。
「そうだと思ってたよ、みんなさ、お前だったでしょ」
「知ってたのか?」
「知ってたというか、昔からそうだったでしょ」
「ん・・・?」
「仲間にならないと覚えられないのは、小さい頃から変わってないもの」
「変わってない、俺?」
「記憶喪失みたいね」と言われて、少しムカッ!としたが冷静でいられた僕だった。ユウコが保育園の頃から僕を見ていたのを知った時だったからだ。待合室で2人でいると緊張して身体が熱くなっていくような感じだ。僕には初めて感じるものだった。一緒にアルバムを見ながら、顔と名前を指で差しながら教えてくれた。ユウコはクラス委員のトップでクラスメイトの全員の名前と顔を知っていた。
「ねぇ、覚えられた?」
「今すぐには、わからねぇべ、俺は天才じゃないよ」
「ほう、そうなんだね」
僕は床を見ながらだったけど、ユウコは僕の横顔を見てニヤニヤしていたように思えた。そんな僕を見てユウコは何を考え思っていたのかは解からない。
「あんまり、見るんじゃねぇ」
「見てないよ、こっち向いてみなよ」
「いいや・・・お前の顔は見飽きたから」
「そうなの?・・・嘘つき・・・」とユウコは小さな声で呟いていた。時間は流れるが、その間ユウコへの思いは募っていたが自分の気持ちを伝える事は出来なかった。ユウコに僕の過去を背負わせたくはなかったからだと思う。これが一番楽しい時間なのか、と僕は思った。そして、この時間が長く続いて欲しい、電車に乗りたくないとも思った。15分が経過、上りの電車が駅に到着するのは、余裕を見て後35分はある。きっとユウコと話せるのは、この残りの時間だけだ。僕はそう思った。そして、本当の僕と本当の優子との出会いだったのか?と、そうも思った。
恋をしている自分が、恥ずかしかった。でも…好きだったのか?
ユウコの事や話せる残り時間の事を考えていた時、少しの間、僕とユウコの会話は無言で途絶えた。2度目の下りの電車が駅に到着し、20人くらいの地元の人が改札口から出て、駅の出口で足を止め傘をひろげ帰路へと歩いていく。地元の人に僕とユウコの顔は知られていたし、僕らは声をかられたくなかった。2人で待合室の床を見ながらじっと動かずにいた。静かに2人だけで話をしたかった。何となくユウコの気持ちが見えるように感じていた僕だった。改札口からの足音が消え、待合室のベンチに座った人も消え、僕とユウコは2人だけになる。そして卒業アルバムを閉じて見つめあい、互いに笑みを浮かべるとユウコは僕に声をかけてきた。
「どうして、床を見てたの?」
「お前と同じだよ」
僕がユウコの言葉に答えた。
そして互いに照れくさそうに肩と肩を触れ合った。
「床見てた時、何考えてた?」と僕はユウコに聞いた。
「小さい頃の事」ユウコは答える。
「オレは保育園の時だな」
「どうして?」
「お前さ、オレがふられるとこ、見てたろ、思い出したんだ」
懐かしさの中にいた僕だったがユウコの横顔を見ると赤ら顔で照れてる感じだったと思う。そしてまた互いに照れくさそうに肩と肩を触れ合った。
お互いの気持ちの表れだったのかも。僕の隣でユウコは、何度か深呼吸をしながらベンチから立ち上がり、座るという事を繰り返した。そんな女性的なユウコを見るのは初めてだった。格闘技をはじめた頃は、強い人間だと思ってユウコの言うがまま僕は格闘技の試合に望んでいた。そんなユウコの姿を見て、時間の流れは人を変えるんだと思った。あの親子と出会って今のユウコを見て僕はそう思った、そして僕も変われるんだと。
変われると信じてみようと思った。そして、自分の本当の気持ちを持っているのだと気付いた。
そんな時ユウコも同じように思ってくれていたようにも感じていた。だってユウコもソワソワしてたし。


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ポリシーレジェンド2話

2015-05-30 07:07:28 | 小説ポリシーレジェンド

糸で編む


カメレオンのようにって何だ。ワンダーランド?何かの始まりなのか、何かに気付き何かを感じてた、けど、はっきりと理解するには、僕にはまだ、時間がかかりそうだ。あっという間に消えてきった、あの親子は駅の待合室に何をしに来たのだろうか。小粒の雨が降る中、ただ、絵本や週刊誌を見に来ていたのだろうか。そうだ、傘も差さずに僕の前にいた、そして空を見上げたあと、親子は傘を差さずに消えたはずだった。これは僕の妄想だったのか。でも、目の前のベンチの上に絵本は置いてある。絵本を片付けるために、親子が座っていた前のベンチで正座をして後ろ向きに本棚を整理し、そのベンチに座った。まあ、深く考える事もないか。しかし改札口が目の前にある景色に変わり独りでベンチに座っているのは憂鬱なものだった。横になったり、起き上がったり繰り返していた。外の雨は本降りになった、風も強くなった。そんな時、下りの電車が駅に到着し会社員や学生、家族、色々な人達が駅の改札口からゾロゾロと歩いて傘を差し駅を出て行く。
「こんな田舎町に帰ってくる人っているんだな」と思った。
この時の僕は駅の改札口を出る時には新しい生き方が見つけられると信じていた。
「バーガーでも喰うべか」待合室にいるのも暇だった。駅の出入り口の屋根の下で見る景色は、左側に交番があり右側にはハンバーガー店がある。
あの頃の以前にバーガー店から見た景色は左側に駅があり、右側には交番があった、これが当たり前の景色だった。少しずつ変わっていくのかもしれないと少しだけ希望か期待するような思いを感じた。空を見上げれば、まだ雨が止む気配はない。ハンバーガー店を見つめていると店内には黒服の学生達が陣取っていた。
「この時間帯って俺らだべ」
いつも仲間達とバーガーを食べシェイクを飲みながら先輩達から身を守る事ばかり話し合っていたのを思い出していた。
「もしやして?」
目を凝らして店内を見ると、あの横顔、あの髪型、あの癖、俺らの仲間だと思った。そして、いつも僕が座っていた場所には、メガネっ子のユウコ(優子)が座っているのに気がついた。そんな光景を見ていると、足がすくみハンバーガーを食べに行く事を避け、また本棚を後ろにしてベンチに座った。
「俺は何してんだべ」
仲間達や保育園から一緒のユウコに会えば自分の気持ちが変わってしまうと思った。
「暇だ、暇だ、暇だ」そう思っている時だった。
また幻聴、幻覚か妄想が始まったのか?改札口の横、5分前に僕が座っていたベンチには子供の母親らしき女性が座り週刊誌を見ている。そして子供は絵本を開きながら、置きっぱなしたペッチャンコの黒いカバンをチラチラ見て、絵本をベンチに置いてカバンを持ってきた。
待合室にいる、消えたはずの子供から声をかけられた。
「にいちゃん、これなに?」
「あっああ」
子供はカバン付いているアクセサリーが気になっていたようだ。
「大切な、お守りなんだ」
「お守り?変なお守り、羽が付いてる」
僕は少しイラっとしたが、興味津々の子供の姿を見れば、どんなに短気な僕でも子供に怒鳴る事は出来なかった。母親は週刊誌を読むのに熱中していたが、子供の声が聞こえると僕の方を向いた。
「あら、ごめんなさい」と母親は言った。
また誤るだけだった。僕は子供にお母さんの方へ行くよう声をかけたが何かと色々な質問してきた。それに答えていると前方に座る母親は口に手をあてて笑っていた。最後に言われた言葉がある。
「お兄ちゃんは不良なの?」
僕は答える事は出来なかった。
短ラン学生服を着て薄いカバンの装いは皆、不良だからねと教える親もいた。
「ごめんなさい」子供の母親は、また謝るだけだった。
「このお兄ちゃんは不良じゃないからね」
母親は子供に伝えてくれた事で僕はホッとした。週刊誌を見終わると目の前にいた親子は今度は傘を差し駅を後にした。
「なんだべ、幻想け?」
いつも喧嘩から逃れようとしていたり喧嘩に勝つ事を考えていた僕には不思議な出来事だった。この親子との出会いは僕の視界は目を覚まし幅広い視野を与えてくれたのかもしれない。
僕は変れるのかな、カメレオンか。でもな無理だべ。でも変れるのかな、カメレオンか?
少しの希望は、また少し僕の更なる希望となり心の糸は結ばれていくのかもしれない。5センチか10センチか、赤色の糸、オレンジ色の糸、黄色い糸、緑色の糸、紫色の糸、青色の糸、黒色の糸、白色の糸、様々な糸は誰もが持っているものかも。その糸を結び付けていけば一本の糸になり、様々な糸が結びついていけば、それはきっと良き経験として心に刻まれ心の成長になるのだろうか。しかし、その糸を結びつける事が出来ない誰かもいると思うが、人と出会い、人と話し、助け合う事に気づければ、その糸で必ず編む事も出来ると思った。
僕は幼少期の頃は、図鑑を見ながら母のそばに居た。そして・・・
「いろんな色の糸と糸を結んでいくとね・・・」と、毛糸を編む隣にいる母が僕に良く呟いていた。
毛糸で編まれ作られたマフラーやセーターを着る事によって、僕は大人になれるのか。僕が何故そんな事を考えるのか、それは手編みのマフラーやセーターを母が幼い頃から僕に着せた時の暖かさからだった。
「めっちゃ恥ずかしかった、でもポカポカして暖かかったし、ハハハ」
待合室の中また独りになった僕は、カバンの中にある卒業アルバムを取り出した。アルバムの中には教室ごとにクラスメイトの写真があり、この顔は知ってる知らないと思いながらページをめくった。そして最後のページの添え書きを見ていると、女子生徒全員の添え書きとクラスの仲間達6人の添え書きだけだった。しかし、見ていて気になる事があった。そしてもう1つのイニシャルだ。
「いったい誰なんだべ?」
女子ではオバタユウコだけしか名前では覚えていなかった。他の女子生徒はアダ名やお前と読んでいた事に気がついた。僕はクラスメイトの写真あるページを開き見返し、顔と名前を照らし合わせていた。
「イライラするべ、文字が小さすぎる、面倒くせえ!」
アルバムにある写真の下にある名前の文字は、教科書の文字よりも小さく苛立つ僕だった。
そんな時、聞きなれた声。
「遅刻はするし、電車にも間に合わなかったのね」
ふと頭を上げると顔を傘で隠したセーラー服姿の女性の声がした。
「君は誰?」


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ポリシーレジェンド1話

2015-03-14 15:11:40 | 小説ポリシーレジェンド


卒業アルバム

3月卒業式が午前中に終わって3日後には16時20分発の電車に乗る予定だった。本来3月中は学校に籍があるが、母さんは僕の心の傷を考え担任だった教師と校長先生で相談し合い、卒業式後すぐにでも親戚の家に行けるようになった。卒業式後の3日後学校へ行くと、電車に乗る日だったが、卒業アルバムが僕の邪魔をした。クラスメイトで卒業アルバムの最後の白紙ページに皆で添え書きを書く事になってしまった。僕はクラスメイトの机をまわり、誰よりも早く添え書きを書き終えた。そして時間を気にしながらも、アルバムが自分の所に戻ってくるのを待つ事になったのだ。
なかなか戻ってこない事で「まいったな」と、僕は時間を気になり始めていた。周囲を眺めているとクラスメイトの皆が笑顔で楽しそうにしてる。
僕の周りには、仲間達が少し距離を置いて寄り添ってくれていた。僕を気づかってくれる仲間達との会話はない。仲間達は地元の公立高校へ通うが、罪悪感を持ちながら僕はあえて、1時間先の私立校を選んだからだ。過去がある地元にはいられないという僕の思いを知っている仲間達はちらちらと僕を見るが全く会話をする事はなかった。
そんな状況の中「アルバム、早く戻ってこいよ」と何度も声に出さず思っていた。
落ちつかない僕を見て、仲間達は下向き加減でニヤニヤしていた。
「早くしろよ」仲間達は教室の中を歩きながら言ってまわってくれた。
そして、やっと卒業アルバムが戻り、学生カバンに入れ、手を上げてアイコンタクトでクラスメイトを見回した。
「じゃあな、みんな」一言だけしか見つからなかった。
「元気でね、またね、また会おうね」とクラスメイトは返事をしてくれた。
これだけの会話で僕は速足で教室から去る。見送りはされたくはなかった。校門を出ると振り返り校舎を眺めながら、もっと話したかったような気もしていた。そして腕時計を見て「まずい」と思った。
自宅に戻らず学生服を着たまま、学校を出たのは16時5分過ぎだったが、駅まで走れば間に合うと思った。息は荒れ駅に着いたのは16時19分のギリチョンだった。急いで切符を買った時には「あれ?」電車が動き始め目の前から離れていった。地元の線路を走る電車の本数は、下りの電車は1時間に2本あるのに、上りの電車は1時間に1本しかない。次は17時25分発で目的地到着時間は18時40分。公衆電話で叔父さんの家に電話したが記憶にある番号にかけても間違い電話になる。父さんや母さんに電話をすれば良かったかもしれない、でも何故か心配されたくない、独りでいたいと思った。
でも「まずいよな、叔父さん叔母さん、ごめん」きっと許してくれるよなと僕は思った。
思春期の僕は変なプライドはあるが、信念というものはなく未熟で優柔不断なところもあった。外は雨が降っていたため、僕は駅の待合室にある壁にあるコの字で木製のベンチに座り静かに電車を待っていた。その待合室の空間にいるのは、僕と顔見知りの駅員の2人だけだった。
「暇そうだな、本でも読んだらどうだ」と、駅員は僕に声をかけてきた。
そして駅員の声に誘導されるまま本棚を見つめた。
「絵本ばっかじゃん」
週刊誌や月刊誌を見たが、退屈で絵本のタイトルを見始めると、ほとんどが子供向けのような感じだ。でも「カメレオンのように」という絵本が気になった。まあいいか、と思いながら、その絵本を取り開いてみた。カメレオンのようにという絵本なのに、表紙にはクジラとイルカの絵が描かれていた。
「なんだこれ?」
面白そうだなと思いページを開きながら読み始めると何故か楽しくなっていった。カメレオンのように体の色を変えるイルカが主人公だった。
「イルカって青とか灰色だよな」そう思った。
その主人公は好奇心旺盛で海の中でどんな生き物とも仲良くなる。多くの生き物がいるのに体の色を変えながら興味を持たせ、その主人公の周りにはクジラだけでなく多くの生き物が集まってくる。でも絵本に描かれるイルカは独りぼっちだった。独りぼっちだからこそカメレオンのように体の色で自分を表現をして多くの生き物が集まるようにしている。悲しいような楽しいような、そんな気がして僕は笑った。
「ハハハ、久しぶりに笑ったべ」と思った。
心から笑えた頃、3年前の自分を思い出してしまった。その頃は多くの仲間がいて仲間以外に親友と思える3人がいた。仲間の中には学校の環境、先輩後輩の上下関係で裏切る事があったが許せたし、親友は決して裏切る事はないものと僕は思っていた。でもその親友の3人は僕の前から姿を消した。記憶から消そうとしていた出来事を絵本を見てから思い出してしまった。
「何で今さら」と思った。
待合室で独りで電車を待っている空間は、消したい過去の時間へと僕をふり返させる。そんな時、3、4歳くらいの子供が目の前に立ち、手を伸ばしてきた。
「お兄ちゃん、その絵本かしてちょ」と子供は言った。
「ごめんなさい、すみません」と子供の後に母親の声が聞こえた。
僕の心がよどみ始めた待合室の空間の雰囲気は一瞬にして変わった。過去の空間ではなく母と子の会話をする姿をみている。僕は過去を思い出す空間の中で目の前に映る親子に助けられたようだ。
「こんにちは、はじめまして」
僕は声をかけ、子供に絵本を手渡した。どうやらカメレオンのようにという絵本は、その子供のお気に入りの絵本だったようだ。絵本を読んで最後のページには気になる文章があった。
「生き物は自由に生きられる、いろんな生き方を自由に選べるのだから」
僕の生き方って、どうなんだろう、チョットだけ考えさせられた。そんな時に転勤族の両親がいて転校を繰り返していた同級生を思い出したが名前を思い出す事はなかった。駅内を見回すと何故か改札口の待合室いた親子の姿は消えていた。親子の帰る姿は見ていない、いったい何だったんだ。
ぼんやりとしながら、ふと待合室の時計を見上げると、まだ5分しか経過してなかった。僕にとっては、とても長い時間に感じていた。


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