傍流点景

余所見と隙間と偏りだらけの見聞禄です
(・・・今年も放置癖は治らないか?)

現時点ではハズレなし!~TIFF中間報告

2005-10-29 | 戯言・四方山話・メモ
 月曜から木曜まで、職場帰りの六本木は流石にキツかった…というより、私にとっての天敵№2・寝不足が堪えてると言うべきか。(天敵№1は蒸暑さだけど)そんなわけで、今も頭にモヤがかかっているので、簡潔にご報告。

 TIFF前半戦の4本、いずれもハズレなしの良作・傑作揃いであった。
 まあ、私がセレクトしたのはどれもある意味、安全パイ的なものばかりだったけども、それでも日本モノに関してはどっちに転んでも仕方ない博打ではあったので、まずは『狼少女』『ゲルマニウムの夜』の2本が、水準を遥かに超える出来映えだったことが嬉しい(2人の監督の若さも含めて)。
 木曜に観た『ドラゴン・プロジェクト@精武家庭』では、久しく観てなかった軽快痛快!香港カンフー・アクション・コメディ!ってノリが楽しめたしね。
 しかし、なんと言っても期待を上回る素晴らしさに感動・鳥肌・泣き濡れたのは『ウォーク・ザ・ライン』であった。私が音楽モノに弱い、ということも関係すると思うし、ここ最近ジョニー・キャッシュばかり聴いてたとか、やっぱり痩せたホアキンがカッコ良過ぎ!とか、いろいろ割増したほうがいいのかもしれないが、敢えて言う。『ウォーク・ザ・ライン』は傑作である!……日本ではあまりウケないと思うけど。
 個別の作品についての感想は、後日改めてアップ…できれば、する予定。鋭意努力する所存であります。

 さて、ちょっとしたコボレ話としては『ゲルマニウムの夜』で、観客席に内田裕也翁がいらしてたことがビックリでしたね!
 モダーンな白髪鬼のような裕也翁、当然ティーチインでは客席から、場を締めくくるスピーチをしてくださいました。開口一番が「大森君(監督)、新井(主演)良くやった!」と大激賞。その後「俺と世界各国映画祭の歴史、俺と仕事した偉大な監督たち」なるお題で一席ぶったのち(笑)「今年の東京国際映画祭は『ゲルマ~』のような作品があって本当に嬉しい。大森は、キューブリックや三島由紀夫に負けない監督になる!」(大意)とまで。いやぁ~~それはちょっと、比較があまり…(略)とはいえ、裕也御大の絶賛もわからずではなく、大森監督の才気と尋常でない気合がビシビシと伝わる作品だったことは確か。原作を知っている者から観ても、原作の精神を掴んでいる秀作だと感じました。
 ともあれ氏の激賞に、ティーチインに来ていた大森監督(南朋君と、当然だけどソックリ。但し、あんちゃんの方が硬派度高し!)そして急遽参加してくれた新井くん!も大変頼もしく思われたことでしょう。
 ……私も、まさかこの場所で御大に拝謁できるとは予想もしてなかったので、遠くからではありましたが、嬉しかったです(笑>だってやっぱカッコいいしね、裕也翁)!

 既に今日だけど、土日は後半戦3本。今度はどんなハプニングに遭遇するのかしないのかわかりませんが(笑)楽しみです。

目玉はマーク・ロマネク

2005-10-28 | 徒然(sound&vision)
 シリーズ1弾(スパイク・ジョーンズ、ミシェル・ゴンドリー、クリス・カニンガム)は、私にとってはいまいちソソラれないメンツだったのだけど、本日発売のディレクターズ・レーベルvol2には、激しく気持ちが動いている。ただし今の私に4枚組+ボーナスディスク入りのBOXセットを即買出来るほどの胆の太さはなく;; 割引価格だった密林で予約カートに入れたものの…検討・保留中。とはいえ、私の最大の目的はマーク・ロマネクだけなのだが。

 私が初めてミュージック・ビデオの監督としてのマーク・ロマネクを初めて意識したのは、'93年のデヴィッド・ボウイのPV “Jump, They say”であった。ティン・マシーンでのリハビリ期間を終えて再生したボウイの完全復活アルバムとなった『Black Tie, White Noize』第1弾シングルカットの曲であるこのビデオを観て、当時の私は心底感激したのだ。「ああ、遂に本当に、彼は戻ってきた!」と。アルバムのみならず、プロモーション・ビデオでも挑戦的に、視覚を通して受け手の感性を試すようなボウイがアーティスト性を取り戻した、と。
 詩が暗示するシニカルな悲劇を、実にスタイリッシュに撮っている本作を観ながら、こういう画を撮れる(しかも“Look back in Anger”以来初めてボウイの顔面を「醜く」している!)監督の大胆さにもニヤリとした。
 ボウイのPV監督と言えば、70年代後半から80年代はなんと言ってもデヴィッド・マレットなのだが、マーク・ロマネクはマレットに近い毒のセンスを持ちつつ更に、現代的なヴィジュアル・スタイルを持っている人だなあ、と思った。

 次に彼の名前を観たのは、ボウイとも関係の深いトレント・レイズナーのNine Inch Nails“closer”であった。この作品には、ひっくり返った。実にゴシックと猟奇趣味の極北、禍々しいヴィジュアルのサンプリング状態。しかもアーティスト本人(つまりトレント)の臆面もない被虐願望の晒し方に、コチラの頬も引き攣ってしまうほど。(両腕緊縛で吊り上げられ、目隠し状態で「I wanna f**k you like a animal !」と叫ぶトレントの果敢さには頭を垂れるしかない、という感じ;;)
いや、どれだけ変態じみていようと、グロであろうと、全体をセピア色でくすませた画面、視覚イメージはひたすらに美しい。ある意味、モダンアートの世界…なのかもしれない。(事実、このPVはロマネク・コレクションの一部としてMOMA博物館所蔵になってるという。うーん)
 
 そして、最近ではなんと言っても最晩年のジョニー・キャッシュが、そのNINのカヴァーを唄った(!)“Hurt”である。私はこのビデオで初めて、写真でしか見たことのなかったジョニー・キャッシュが唄う姿を、観たのだ。
 以前、NIN関連の記事でも書いたことがあるが、私は今年のサマソニで聴くまで、NINの“Hurt”で泣けることなど無かったのだけど、ジョニー・キャッシュ・バージョンから受けた衝撃は凄まじかった。原曲にほぼ忠実なアレンジなのにも関わらず、唄い手が変わるだけで、こんなにも聴こえ方が違う曲だったとは。
 ジョニー・キャッシュが唄う“Hurt”は紛れもなく彼の唄だった。死期の近い老人の唄だった。
 そしてこのビデオ自体に、殆ど映画に匹敵する重みがある。4分にも満たないミュージック・ビデオの中心にいる老人。ジョニー・キャッシュという1人の偉大な老人が生きた時間の凝縮、その底の見えない深さに、その一片に触れた思いがして、気づいたら涙が流れていた。
(PVを観て泣いたのはパール・ジャムの“Jeremy”以来である。この作品の監督はマーク・ペリントンなのだが、彼についても機会があれば書きたいと思う)
 恐らく、向こう10年は“Hurt”を超えるようなミュージック・ビデオには出会えないだろう。そのくらいの傑作である。

 マーク・ロマネクは、自己の撮りたい映像・技術で素材をいじりまわし結果的に自己満足的な印象しか与えられないタイプのPV監督とは、まるでステージが違う。文字通り“アーティストのプロモーション的映像”だけに専心するタイプではないことも、言わずもがな。彼は、まず第一にアーティストの特性・その表現の核を掴むことに長けている。加えて、それを土台とした詩の映像的解釈といった自身の表現力と、アーティスト自身の個性とのすり合わせ方が抜群なのだ。
 上に挙げた3人のアーティスト以外にも比較的メジャーな、大物を数多く手掛けていて、私も全てを知るわけではないが常に面白い作品を撮り続けているように思う(詳細データは、冒頭のリンク先参照)。今回のDVDでも25作品が収められ、アーティストのインタヴュー、コメンタリー等の特典もあるそうなので、絶対買うのは既に決定!

 …なのだが。繰り返す問題は、バラかハコかである。優柔不断で、オマケ付に弱い私としては、ハコのお得感も捨てがたい。
 ステファン・セドゥナウィは、トリッキーやマッシヴ・アタック、ネナ・チェリー、しかも黒烏まで撮ってるうえに、特典映像にはルー・リード出演のショート・フィルムがあるというので、これもほぼ買い。しかしアントン・コービンは…まあ英国NWファンであればマストでしょうが、私自身はそれほどでもないので微妙だし(笑)ジョナサン・グレイザーに至っては作品を観たこともないからなあ…。
 まあ、いましばらく検討の猶予を、というところだろうか。今回は、第1弾よりも私の好きなロック系アーティスト/バンドが多いので、ハコでも後悔はしないとは思うのだが。(結局ハコ買いの方向に傾いているらしい^^;;)

**********************************************************************

 ところで、マーク・ロマネクは既に劇場映画デヴューを果たしているのだが、それが私の苦手な俳優が主演なのでどうにも積極的に観る気がしなくて困っている。えーと、ロビン・ウィリアムスの『ストーカー』なのだが、やはりココまでロマネクのファンをアピールする以上は観たほうがいいのだろうね・・・そのうち気が向いたら観てみよう・・・(>消極的^^;;)

今更な映画覚書~邦画編

2005-10-23 | 映画【劇場公開】
 明日から一週間、怒涛の映画祭通いである。なもので、ここしばらく観たものに関しては、なるべく早く感想文を挙げてきたのだけど、その前に。諸事情で絶不調だった8月からの3ヶ月の宿題を大放出!…って、単に覚書というそもそもの意義を遂行するためですな。まず今回は日本モノから。(洋モノがあと4本残ってます;; コレは映画祭後かなあ…)

○ リンダ・リンダ・リンダ('05/山下敦弘監督) 
 実はこの映画、今夏観た日本映画の中では『妖怪大戦争』と双璧を成すほどに愛してしまったのである。
 軽音楽部の女子高生達の、最後の文化祭。高校時代軽楽部に所属していた過去があると、もうそれだけでも胸が懐かしさで一杯なのだ。あったよ、あった…こんなこと、あんなこと。あの頃の誰かに似た面影の彼女たちの姿。でも決してノスタルジーだけじゃない。時代が違ったって、感じることは皆同じ。屋上の空気、部室の匂い。些細なことでの仲間割れとすれ違い。そして1人ぼっちだった韓国人留学生を臨時メンバーにして、文化祭までになんとか形になろう徹夜で練習。そんな彼女たちの周りで起きる、小さくて大きな出来事。それ以外の特別なことがあるわけじゃないけど、彼女たちが共有する時間は眩しくて、瞬間は常にみずみずしい。ダレて、弛緩するときさえも。
 上手く演奏するなんてことは、別に大切なことじゃない。ブルーハーツのファンの人には悪いけど(笑)「これならすぐ出来るよ~良くない?」ってノリで曲を選んだのもグッド! そして「皆でやりゃあ、なんだって楽しいんだよ」… 
 全員ウッカリのうたた寝で、遅れに遅れた彼女たちがやっと登場するラストシーン。ブルーハーツの曲は青春ってヤツを無駄なく簡潔に表してくれる。下手くそだけど元気で楽しげな彼女たちの音と姿に、自然に観客が集まる。そのシーンのあまりの幸福感と、ほんの少しの切なさに正しく涙で滲んでスクリーンが観えない! という冗談みたいなことになっていたのだった。とにかく本年度のガールズ・ムーヴィーはコレで王手!

○ 魁!クロマティ高校('05/山口雄大監督) 
 もしかしたら私ったら雄大監督のファンなのか?と思うほど、彼の映画は公開される度に劇場で観ている。しかも毎回レイトショー(笑)。それでも観てるんだから…うん、ファンです。そのことを今回は認める結果になった。
 安すぎるが故に破壊力抜群の脱力ギャグ映画一本槍な姿勢で日本映画界を突き進む彼には、是非とも今後もくだらないお笑い作品を量産して欲しい。
 本作はこれまでより気持ち予算多めのようだけど、相変わらず潔いバカが大炸裂! 原作もバカだけどね。しかし、俳優もスタッフも誰1人として迷いはない。真剣そのもののバカっぷりに、今回も笑いすぎて疲れましたよ、ええ^^)
 こと今作で改めて感じたことがあるので、1つ提案。世のイケメン俳優と言われる人たちは、雄大監督の映画に積極的に出演したらいかがだろうか。雄大映画でテレも気取りもかなぐり捨てた、本気で下品な馬鹿演技出来るようになれば絶対に株が上がるから!と、自信を持ってお勧めしたい次第である。

○運命じゃない人('04/内田けんじ監督)
 こういう作品を観ると、つくづく私は“お話がよく出来ている”ってだけの映画には興味がないんだなあ、と実感する。
 脚本はとても丁寧に練り上げられていると思う。いわゆる、1つの出来事を登場人物それぞれの視点から語らせるという内容で、ある人物にとっては幸せなことが別の人物にとっては人生の危機だったりする。エピソードの繋げ方もスムーズだし、PFFで大賞獲得というだけに平均点はめちゃめちゃ高いとは思うのだけど…あくまで私にとってだが「ただそれだけ」の作品であった。勿論、観たいと思う人には普通にお薦めは出来るけど、好きって感じではなかったです(嫌いでさえない。要するにひっかからないというだけ)。
 あ、どうでもいいことだけど、主人公の男性のキャラとルックスが、TVドラマ【いいひと。】をあまりに彷彿させるのが、やや苦笑でした。

『真夜中のピアニスト』('05/仏)

2005-10-20 | 映画【劇場公開】
 ロマン・デュリスって、なんと私の大好きな『ガッジョ・ディーロ』(トニー・ガトリフ監督)のステファン君だったんだ! とパンフレットを読んで気が付くというオオボケをカマしてしまった。人懐っこい笑顔と素直な感情がちょっとした仕草に溢れるステファンを演じた彼が、あの映画とはまた違う煌きを身につけて帰ってきたようだ。
 監督のジャック・オディアールの作品を観るのは、私はこれが初めてである。フランス映画に対してどうも妙な偏見があるせいか(笑>ゴダールのせいだろうか)あまり仏もの自体観てこなかったのだけど、彼のデビュー作は、かのテリー・ホワイトの名作【真夜中の相棒】を映画化した『天使が隣で眠る夜』だったらしい。これは是非とも観なくてはいけない!と決心してしまった。

 『真夜中のピアニスト』は実に、私がハマるタイプの、息苦しいほどにエモーショナルで“音楽的”な映画であった。
 テーマが“音楽”だから、というだけではない。カメラ、それ自体がまるで旋律を奏でるように、人を、情景を、映していく。ときに闇の激しさを暴力的なリズムで刻むかと思うと、一方では緩やかに、優しく包むような光を捉えていく。その陰影が美しい。そして主人公であるトム@ロマンだけではなく、登場する人々の感情がときにぶつかり、調和しながらスクリーンから溢れてくる。それを感じているだけで満ち足りる映画だ。
 物語は、父と亡母、世の中の泥に浸かりきった世界と、美しさと愛の世界、2つの矛盾を抱えて揺れる青年トムの話である。やくざ紛いの仕事を半ば絶望的に受け入れ、しかし目指したい夢は諦められぬ宙ぶらりんな彼が、いくつかの大切な出会いと大きな悲劇を経て、どのように決着を付けていったのか。惨い暴力で奪われたものから解放され、何が残り、得られたのか。
 音楽を愛する者でなくとも、この結末には胸を熱くするだろう。大袈裟な仕掛けはないけども、ささやかな光と暖かな夜の余韻に、気持ちが安らいでいくのであった。

 ただ、私にちゃんとクラシックの素養があれば更にこの映画を堪能できたのに、と思えば残念な気持ちもあるが、こればっかりは仕方ない。トムが聴く、もう1つの音楽ジャンルであるエレクトロ・ビート系はまだ良しとしても…彼がピアノで弾くのに選ばれる曲にも意味があるようなので、クラシック、ことピアノ曲が好きな人なら、より本作を深く味わえるに違いないことも付け加えておこう。

 …というところで、最後はミーハーで〆るけど、本作のロマン・デュリスは本当に良いね! この人は目元はとても奇麗で魅力的なんだけど、ややバランスが崩れてて、あまり上品じゃないところが良い(笑)。普通の気のいいあんちゃん風でありつつ、野生的でとがった色気もある。ついでにナチュラルに女好き光線が出てるのも、益々イイね! 『ガッジョ・ディーロ』の頃よりオーラの輝きが増してて、今がノッてる時期なのだろう。待機作が再びタッグを組んだトニー・ガトリフの新作『Exils』(邦題は『愛より強い旅』…って、なんかダサいなあ…) らしく、コチラもほんっと楽しみである。フランス男には殆ど気を惹かれたことはないのだが、彼のことは今後もちょっと注目していきたいと思う。

『ベルベット・レイン(江湖)』('04/香港)

2005-10-19 | 映画【劇場公開】
 嗚呼~懐かしいなあ・・・と、思わず苦笑してしまうような映画であった。懐かしいといっても、私が頻繁に香港映画、しかも黒社会モノを中心に観ていたのは7、8年前の話なんだけど、当時でも「コレは結構イケてるんじゃない?」と思った作品と、同じ雰囲気があった。ま、イケてると言ってもそこは【香港映画にしては】という大前提があるわけで(苦笑)たぶん日本のVシネマで佳作を見つけたときと似たような感じである。
 このテのジャンルものは、話なんてどれも似たり寄ったりのお約束なんで、あとはどう見せるのか?どう語るのか?が監督の腕の見せ所なわけだが、本作の監督であるウォン・ジンポーはまず語り口を巧くひねってて、そこに若さと気概を感じて嬉しくなった。
 ただ、映像の切り取り方や色合いは奇麗だし情感の盛り上げ方も結構良いんだけど、かなりMTV的(それも10年ぐらい前のセンス^^;;)な撮り方をしてて、そこはもっと抑制を効かせて欲しかったかも。そして宣伝文句に【次世代の王家衛】などと言われてるそうだけど、それは大間違いって感じ(笑)。王家衛じゃなくて、『古惑仔』シリーズを撮っていた頃のアンドリュー・ラウに近いと思うけどな、MTVっぽさも含めて。基本はアイドル宣伝映画って意味でもね。

 そう、やっぱり香港娯楽映画の基本は明星アイドル様!ってな訳で出演陣について。
 アンディ・ラウは、いつものアンディでした(笑>基本的に苦手な人なんで、おざなりで申し訳ない)。それより個人的にはお久しぶりなジャッキー・チョン@張學友でっせ! このコンビと言えば王家衛の『今すぐ抱きしめたい(旺角卡門)』である。私はコレとジョン・ウー監督の『ワイルド・ブリット(喋血街頭)』のジャッキーに号泣した思い出がある(私は本家本元・亜州超大歌聖を、俳優としてかなり好きなのだ)。まして今回の役柄も『今すぐ~』とほぼ同じで、それだけで結構胸に迫るものがあったりしてね。いやあ、この人はホント器の小さいドチンピラな弟分役が似合い過ぎで、泣けるよ…(笑っちゃうんだけど^^;;)。
 そして、この二大明星の胸を借りる形で向こうを張った新星アイドル双璧ショーン・ユーとエディソン・チャン。本作のショーンは・・・アンディと対になる役柄のせいもあるけど、『イニD』の彼の方が個人的には好きかなあ。ってことは、ジャッキーと対するエディソンの役のほうが新鮮さはあった。いやあ~私はずっとエディソンは取り澄ました仏頂面のイメージしかなかったので(>失礼)そのへんのヤンチャ坊主みたいなヘラヘラ笑顔に吃驚である。しかも、そのヘラヘラの影に滲むしがない少年の哀切さ、兄貴分であるショーンへの一途な慕い方(じゃれつき方)が、かなり切なくて良かったなあ。

 ともあれ香港映画界の新人発掘・バックアップ事業を手堅く進めているアンディ・ラウとエリック・ツァンの余裕と心意気も感じる作品だったので、これからもガンガン香港映画完全復活への道目指して頑張って欲しいものである。


 ところで。既に某巨大掲示板・映画板の中華電影ファンの間では話題沸騰(?!)トレイラーのあまりに間違ったゴージャスな出来に「スーパー歌舞伎?」との声多数の『プロミス~無極』。うーーむ、私も唖然でした…チェン・カイコー@陳凱歌監督、まがりなりにも巨匠と呼ばれた過去をあっさり捨てた激安ゴージャス路線で株大暴落なのか、ココ一発でハジケるのか・・・『覇王別姫』、いや『黄色い大地』『人生は琴の弦のように』は遥か遠くになりにけり、ですねええ。個人的には、スーパー歌舞伎というより、中華のバズ・ラーマン化してどうする?ってな不安で一杯なのだけど、どんだけトンでもないことになってるのか、楽しみです、はい。(結局楽しみなのかよ^^;;)
 トレイラーといえば、今日観た映画館でかかった作品群がどれもB級な感じでなかなか脱力モノだったんだけど、思わず仰け反ったのが『シルバーホーク』! おおおう。007に出ようが『グリーン・ディスティニー』に出ようが、初心を忘れぬミシェール姐さん@楊紫瓊の漢気に撃たれましたよ!!(更に製作総指揮までしてるしね。凄過ぎる…)いまだ最強のアクション・ヒロインである彼女の勇姿、目頭と頬を押さえつつも拝みに行かねばなるまいね。

『空中庭園』('05/日本)

2005-10-18 | 映画【劇場公開】
 ありそうで無かった、日本のサバービア(郊外)ものかな?と、映画が始まって暫くは思っていた。確かに、一面ではそうだ。舞台となるのは、整然と画一的で限りなく間な風景の新興住宅街。物語の中心にいる京橋家は、「何事も包み隠さず、タブーを作らないことが私たち家族」というルールの元に暮らしているという。まず、このルールからして既に空々しく、それは家族間の風通しの良さとは無関係な、病的な何かを感じさせる。
 ルールを決めたのは京橋家の主人・貴史@板尾創路ではなく、妻の絵里子@小泉今日子だ。彼女は常に満面の笑みを浮かべて2人の子供たち(マナ@鈴木杏、コウ@広田雅裕)と楽しげに喋り、ピンクの服を身につけ、家事の合間にベランダに作りあげた自分の庭の手入れに精を出す。何処から見ても“良妻賢母”のお手本のような女性なのだが、それが非常に不自然で、無理をして“作られている”印象を与えるのだ。そしてバビロンの空中庭園を模した、絵里子がベランダで育てる庭の“過剰さ”。明らかにバランスが悪いこの庭。それは何故なのか---

 おそらく特に女性には、いろいろなことを感じさせる作品ではないだろうか。
 思えば豊田利晃監督は、常に葛藤を抱え、その今居る場所の閉塞から抜け出ようと、ときに周囲と自らを傷つけてでも、戦いあがく人間の姿を描いてきた。たとえ彼らの戦いやあがきが報われることはなくとも、その魂の切迫やヒリヒリとした痛み、その後の哀しいけれど奇妙な解放感の余韻に、私はいつも深く打たれた。そして、これまでの彼が撮ってきたのは皆男性であり、しかも青春期の若者たちだったが、今回は30代後半の家庭ある女性、というだけなのだ。(初の原作付き、作者も女性ではあるが)そこに男女という差はあっても、人間としての描写に違いなどない。

 この映画のヒロインである絵里子は、とても愛情深くきめこまやかで、真面目で頭もいいのだろう。そして人に対する要求も多いぶん、自らも目指す理想が高い完璧主義者なのだ、と思った。だから、自分の落ち度とは思われないようなことで不当な扱いを受けたり、思うような愛情や描く理想が裏切られると、それを許せず、頑なになる。けれど傷ついていることを人に知られたくないから、彼女は笑顔の壁を作る。“良い家族に恵まれた幸せそうな奥さん”の笑顔で自己演出する。しかし内面との乖離は止めようがなく、どんどん不安定になる。自分で築いた壁に追い詰められて、歪んでしまった壁に囲まれ、出るに出られない。けれど、自分で作った壁を壊すのは自分自身でしかないのだ。
 夫や子供たちも、絵里子の“不自然さ”に影響を受けないわけはなく、それぞれに微かな憂悶を抱えつつ、しかしそれほど深刻であるとは思っていない。特に夫は暢気な小心者で、鬱憤晴らしの浮気(しかも二股)バレのほうが心配なわけだが、子供たちは敏感に、予兆のようなものを察している。母と、この家族の底辺から膨らみつつある危うさを心配している。
 その危うさが最大限に膨れ上がって切り裂かれるのは、夫の浮気相手でありつつコウの家庭教師となったミーナ@ソニンによってだ。そして・・・絵里子の母・さと子。
 すべてはこの母娘の関係の拗れが発端であった。この映画が描いているのはだから、“家族”というより母娘の、いや、妻となり母となっても心は不安定で傷ついた子供のままだった“娘”が辿った道程なのである。

 “家族”への思い・その在り方というのは、事実として千差万別だろう。生育環境は人によって違うし、また「かくあるべき家族」というのも、自分が思っているものと、他の家族が思っているものとも違うかもしれない。「理想の家族」というものは、表面的なサンプルとしてはいろいろあっても、彼らの内実さえ完璧、ということもあまり無いのではないかと思う。どこかに問題があり、誰かに不満の種や隠し事は当然のようにある。たとえ世間一般からすると「不幸」な環境にあったとしても、子供は親を選べないというが、親も子供を選べない。である以上、ときに不可解だったり理不尽だったりするこの存在を、どんな思いがあろうと受け入れ、認め、そのことに慣れるしかない。

 そして“幸福な家族”を続けるための、1つの結論を本作は提示する。京橋家には、確かに亀裂が入り、ひび割れる寸前まではいったものの、決定的崩壊には至らない。絵里子がたとえどのような企みをもって築いた家族であろうが、彼らと共に妻として母として暮らした歴史は必要とされ愛され、“家庭”は大切に維持されるものとして、夫や子供たちに支えられているのだ。彼女はとても幸運な女性だと思う。幸運だということに気付いたことが、彼女の癒しとなる。キリキリと思い詰めなくとも、理想とは違っていても、隠し事があっても、家族はやっていける。彼らがこの“場”を必要としているのだから、ひびが入っても歪んでも、少しずつ矯正して維持していけるのだ。そのために多少無理して「つくる」ことも努力も必要かもしれないけど、たいがいのことは乗り切っていけるのだろう。そんな京橋家の未来を予感させて、映画は終わるのだった。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 最後にやはり言わずにはおけないだろう。せっかく、これまでとは違う要素をたっぷり入れて、しかし紛れもなく豊田監督らしさ溢れる作品を撮りあげたにも関わらず、逮捕劇でミソがついてしまったのが心底残念でならない。本当に大バカヤローだ!と思ったね。
 今更何を愚痴っても仕方ので、豊田監督には兎に角、この落とし前はキッチリとつけて欲しい。そして、どれだけ時間がかかってもいいから、再び彼が映画を撮れる日を待ちたいと思う。
 パンフレットには、原作者である角田光代の書き下ろしが掲載されていて、これが目玉となっているけど、豊田ファンとしては主要スタッフの皆様のインタヴューのほうがよりありがたみがある。当たり前だけど、映画は監督と俳優だけで出来てるわけじゃないので、彼らがこの作品に賭けた情熱や働きを無にせず、小規模でも公開出来たのは本当に良かったです。勿論出演者の人達も、キャスティングが相変わらず的確なのもあるけど、皆素晴らしかったよ!(・・・瑛太と永作博美はビミョーでしたけど・・・個人的に^^;;) 俳優として、この作品に出たことを後悔はして欲しくない、と心から願います。 

『セブンソード(七劍)』 ('05/香港)

2005-10-11 | 映画【劇場公開】
 本作は、今年のベネチア国際映画祭でなんとオープニングを飾ったそうである。欧米の映画人は知ったであろう。『グリーン・ディスティニー』や『ヒーロー~英雄』の如き華麗でロマンティックな世界だけが武侠映画ではないのだと。土煙のなか駆け抜ける人馬、過剰にワイヤーを使うのではない、緊張感たっぷりの殺陣。その血生臭い剣戟の美を。

 などと、知ったふうなことを書いてはいるものの、実のところ私はそれほど武侠映画に詳しいわけでもなく、数も観てない。だが、徐克@ツイ・ハークが『刀』以来の本格武侠映画を作っている、と聞いたとき「ついに本家が立ち上がったか!」とワクワクした。先述したアン・リー監督の『グリーン~』がハリウッドで成功してからというもの、中国本土からは思いがけずチャン・イーモウが『ヒーロー~英雄』『ラヴァーズ』を作り、世の中ちょっとした武侠ブームである。
 しかし、現代の武侠映画を牽引してきた香港映画界から何故出てこない? と内心歯噛みしていたファンも多いはずだ。そして香港映画界の武侠代表ときたら『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ(略してワンチャイ)』シリーズでリー・リンチェイをスターにした徐克をおいて他にいない! …きっと本人もそう考えていたはずだ(笑)。めちゃくちゃ気合も入ってただろう。
 そして、ついに日本でも姿を現した『セブンソード~七剣』。なんと2時間35分という大作! 徐克なのに!
 さらに驚くのが、話の筋は簡単ながらその実、重層的で味わい深いドラマがきっちり展開されている! 徐克なのに!(失敬)
 この際、七剣を授けられた剣士たちのキャラ立ちが弱いなんて、まったく問題ではないと感じた。本編主題にあまり関係ない人間を目立たせても却ってややこしくなるから、別にいいじゃん、と思うんだけどな~。(笑 >目立たなかった穆郎@周群達と辛龍子@戴立呉は確かに気の毒だったけど、ディレクターズ・カットは4時間あるというから、きっとそこでちゃんと彼らの出演部も増えていることでしょう)

 話の大本であり案内役である武元英@チャーリー・ヤンと韓志邦@陸毅が、清朝の出す賞金目当てに残虐非道の限りを尽くす風火連城@孫紅雷に狙われた村(反清組織である天地会の人間で構成されてる)を救うべく助っ人の首領・傅青主@劉家良と出会い、楚昭南@甄子丹とヤン・ユンツォン@黎明の2人の対照的な剣士を中心として“七剣”が集結する。そして主に彼ら5人の背景が、物語の支流として主題に絡み合う。
 主題とは、その打ち倒すべき敵・風火連城、彼をも含んだ因果と恩讐である。傅青主は偶然とはいえ、元英を救ったが、かつて明朝の役人として元英の住む村人を苦しめた過去がある。そして傅青主と風火連城は、当時の上司と部下であった。楚昭南の場合、風火連城の奴隷妾である緑珠との関係が深く関わる。また武元英たちの場合は、ヤン・ユンツォンの出自と天地会の関係も絡んでくる。
 彼らのどろどろとした因果・人間模様と共に集団戦闘アクションを描ききる2時間35分、決して長くはなかった。起承転結がハッキリあり、最後には大きなうねりとなって映画の全体像がドーンと浮かび上がってくるような作りになっているのだ。
 しつこいようだが、まさかこんなに見応えのある映画を徐克が撮ってくれたとは、望外の喜びであった。機会があればぜひとも再鑑賞に望みたいと思っている。

 ただし、ワンチャイのような軽快・豪快な娯楽映画ではないことは確かで、娯楽ということにこだわるならば、もっと話をすっきりさせて、その分アクションの割合を増やせば良かった、という人の意見もわかる気はする。
 よって、やはりこれは個人的趣味の違いだと思うのだけど、私は実は徐克作品ではワンチャイより『刀~ブレード』のほうが断然好みなのである。あちらも、お話はちょっと壊れてた部分があるが、登場人物たちの激しい感情がのたうつドラマがあった。そして東洋バーバリズムというべき荒削りで砂っぽい画面作り。主題である復讐劇のクライマックスにおける、ワイヤーに頼らずに地面を滑るが如き高速技の応酬。
 本作の味わいは、明らかにワンチャイではなく、『刀』に近いのである。だから『刀』が良かったと思う方々には、きっと本作が傑作であることに同意してくれるのではないかと思うが、いかがだろう。(もしかして、それは少数派なのだろうか・・・)

 『グリーン~』『ヒーロー』も決して悪くはない。傑作だとも思う(特に『ヒーロー』)。
 しかし、あれが武侠なのだと思われてもなあ…という齟齬感があった私にとって『七剣』は紛れもなく「これぞ武侠映画!」という満足感を味わせてくれた作品であり、近年では一番の武侠傑作だと思っている。4時間版のディレクターカットDVDも購入意欲満々で、日本版の発売を希望したい次第!
  
 さて最後に。キャラ立ちどうの言われているらしい本作だが(笑)確かに一番魅力的だったのはこともあろうに悪役・風火連城だった気がする。
 武侠映画の悪役は常に魅力的なのだが、彼もまたその残忍さの裏に覗かせるニヒリズム、子供じみた偏執ぶりがたまらない。嫌悪感より憐れみを誘うキャラクターである彼が、もっとも印象的なのは以下のシーンだろう。
 ♪かわいい子どもたち、健やかに育ちなさい♪というような童唄を口ずさみながら、血みどろになって戦っている自分の兵を見つめて、風火連城は笑う。「…昨日まではかわいい子たちが、今日は野獣だ。見ろ、こいつらは野獣そのもので殺し合いをしてるじゃないか」
 彼の笑いは妙に引きつれていて、殺戮の悦びと無常感の悼みに満ちている。徒の悪党ではない。彼には彼の、こうなるしかなかった人生があることをにじませる。
 そんな奥深さをもって風火連城を演じた孫紅雷、中国映画界には本当に凄い俳優がザックザクいるんだなあ~と、その底知れなさに唸る作品でもあった。

映画祭のくせに

2005-10-11 | 映画【劇場公開】
 こんなにチケット高いなんてどーゆーことよ?!(怒)とか思いつつ、先の土曜発売された東京国際映画祭の早朝チケ取りに挑んできた。
 事前の友人たちのありがたいご協力のおかげで、観たい作品はとりあえず全部ゲット。今年はファンタを1本も観ない代わりに、3年ぶりぐらいに頑張って7本も取ってしまい、半分顔が引き攣ってますが…まあ、去年と違って玉砕チケが無かったのはラッキー♪
 もう今回はとことんミーハーに徹しているので、何より嬉しいのが『ウォーク・ザ・ライン』が取れたことである。上記画像のMan in Black(ジョニー・キャッシュ)に扮した凛々しいホアキンをご覧頂きたい。この男前がゲストで来るっていうんだもん! 盛り上がらずにおれようか!!(って、ナマがリバウンドしてる可能性無きにしもあらずだが…)故ジョニー・キャッシュの伝記映画、しかも故人本人より直々に指名を受けているという点でも『Ray』と比べられそうだが、まーそういうのは観るほうには関係ないもん(笑)。クールな若きジョニー・キャッシュ@ホアキンと、キュートなジューン・カーター@リース・ウィザースプーンの、アメリカン・カントリー・ミュージック界を彩るラブ・ストーリーとしても楽しみである。
 ほか【特別招待作品】では、ロマン・ポランスキーがどう撮るのか興味深い『オリバー・ツイスト』。オフィシャルを見る限り、美術が非常にいい仕事をしているようなので期待!

 アジアものは香港系に絞り、以下の2本。日本のスクリーンで拝める日は無いと諦めてたアクション・コメディ『ドラゴン・プロジェクト(原題:精武家庭)』が観れることがまず嬉しい。しかもイニDでの豆腐屋オヤジが記憶に新しい黄秋生が堂々主演ですからね!
 そしてスタンリー・クァン監督の新作『長恨歌』。『ロアン・リンユイ』以来(だったはず)の彼独特の耽美な女性映画の世界に浸りたい。

 日本映画系では、まず先日もチラリと情報を書いた『ゲルマニウムの夜』に最大級の期待と不安^^;;を込めている訳だが、『紀雄の部屋』で「おおっ!」と思った深川栄洋監督の新作『狼少女』も楽しみ。
 ゲストが豪華なクロージング・ナイト上映作『大停電の夜に』も、映画祭らしい余韻で締めくくってくれるといいな、と思っている。

 今月4週目、平日は六本木通い・週末は渋谷通いに備え、風邪&咳込み気味の体もきっちりメンテしておかなければ!ですな^^;; (映画鑑賞時に咳込むのだけは避けたいです、ハイ)

神無月鑑賞希望映画メモ

2005-10-07 | 映画【劇場公開】
 感想文がたまってる。ライヴ3本、映画5本、本4冊…備忘録になってないじゃん!って自分で突っ込みですが、まあボチボチいきますわ。
そして、秋は映画シーズン。映画祭のラインナップも、私的にはここ2~3年では一番充実してるうえに、フツーに観たい映画の数もまた半端じゃなく多い!(泣笑)…財布は泣いても、心が豊かになれればイイのよ!と綺麗事をほざきつつ^^;;メモメモ。

旅するジーンズと16歳の夏 …大好きな青春女子モノ、はずせる訳がありません。予告が可愛くてグッときました。

ベルベット・レイン  …久々に正調香港ノワールもの(無間道は、正調とは違ったので)で期待出来そうな映画。スクリーンで観るのはご無沙汰しちゃってた張学友の主演が嬉しい! そしてココでもセット売りのエジソンとショーンが(笑)大明星双璧を向こうにまわし、とれだけやってくれるのかも見物ですねー。

スクラップ・ヘブン  …李相日監督は好きです。うまいけどこれ見よがしじゃない、軽いけど深い繊細さを感じるとことか。しかも加瀬亮と栗山千明のファンとして、これは観ないわけにいかないでしょう!

ブコウスキー・オールドパンク  …問答無用。タイトルが総てを語るチャールズ・ブコウスキーのドキュメンタリー!

空中庭園 …作品は作品として、公開は本当に喜ばしい限り。ヒリヒリと屈折した男子の魂ばかり撮ってきた豊田監督が、どのように女性の心情を描いたのか。早く見届けようと思ってます。

真夜中のピアニスト …予告が結構面白そうで、あまり仏系男優に心動かされることはないのだけど、この人にはちょっとそそられましたので。ミーハーな理由だねえ(笑>でもルパンはなあ~・・・)

そして、ひと粒のひかり …原題『Maria Full of Grace』、待望の日本公開!! 

世界 …チラシが凄く美しかった。評価の高い賈樟柯の作品、今まで観る機会がなかったけれど今回こそは観たいです。新しい才能の出会いに期待を込めて。

青い棘 …予告を初めて観たとき「萩尾望都?トーマの心臓??」と思いました^^;; ダニエル・ブリュールの相手役らしい俳優さんが「ヘルムート・バーカーの再来!」などと評されてたけど、ルックスを見る限りではポール・ベタニーに似てるなあ、と思ったのですが・・・実際は如何に(笑)?

ティム・バートンのコープス・ブライド  …個人的には、チョコ工場よりコチラが楽しみなんですよね~。やっぱバートン監督は人間じゃないものを中心にした映画のほうが好きなので^^)

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 以上10本、うち半分でも今月中にちゃんと観れれば自分を誉めてやりたい!ってことで。
 さて今夜は『理想の女』鑑賞予定である。原作はワイルドの【ウィンダミア卿夫人の扇】久々の文芸映画。ヘレン・ハントの魅力が堪能できるといいな、と思っています。

素敵な4人組&私的映画情報メモ

2005-10-06 | 映画【劇場公開】
★『ファンタスティック・フォー』('05/米国)監督:ティム・ストーリー
 アメコミ祭りとして(笑)実は今月の映画の日、『SIN CITY』の前菜としてF4再見! 9月にも試写にお誘いしてもらったのだけど、やっぱイイなあ~このオールドスクールにアメリカン娯楽映画な感じが。今年のアメコミ映画では一番の王道だよな~と改めて思う。
 アメコミでは息長~い人気のある『ファンタスティック・フォー』、私はタイトルと基本設定しか知らないけど、そういう人でも十分楽しめる映画じゃないかな。 めちゃくちゃオモシロい!て訳ではないんだけども、実に正統的でレトロSFというか、懐かしの戦隊モノっぽい雰囲気もありで、いわゆるアメコミの一般的イメージに一番近いタイプの作品である。
 MARVELものなのに、あんまり苦悩系の人がいないのが逆に新鮮だったね(笑)。暗~くウダウダするヤツがいないし、ジョニー@火の玉ボーイなヒューマン・トーチ役のクリス・エヴァンスがアホでかわいくて、ベン@岩男ザ・シングとのコンビで笑わせてくれる。というか、全体的にヒーローものだけどコメディ・タッチでライトなヒーローもの、というのが良いんだなあ~。いや…もっと言えばヒーローっていうより妖怪な4人組だしなあ~^^;;
 私のお目当てだったヨアン・グリフィスなんて、ただでさえ整いすぎて笑える顔なのに、それが堅物ハンサムな天才科学者リード@ゴム人間なMr.ファンタスティックなんだもん! 爆笑以外の何者でもなく。アメコミものにひっぱりだこなジェシカ・アルバも、化粧濃い目だけどWow!なサービスショット有りで(笑)透明美女スーを危なげなくこなしてて良かったんじゃないかと。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

○故梶原一騎の実弟・格闘家にして作家である真樹日佐夫先生の代表作『ワル』、何度目かの実写化が先生の弟子(?)でもあるらしい三池崇史監督×哀川翔のゴールデンコンビで!だそーですね。
 翔さんと慶子さんのカップルって…予想できないんだけど…。 三池さんの真樹プロものは『ファミリー』以来かな? ともあれ、いささか不安もありつつ楽しみです、ってコトで。

○TIFFでも上映されることが決定した花村萬月原作・荒戸源次郎事務所プロデュースの『ゲルマニウムの夜』公式HPオープンしてた模様。
 監督は、大森南朋くんのあんちゃんにして白塗り大駱駝艦の麿赤兒ご長男・本作が長編デビューの大森立嗣氏。ですが我的トピックは、この主役が新井浩文ってことですよ! うあ~『GO』『青い春』からファンなのよ、新井くん。そんでもって今まではヤンキー役が専ら当たり役だったのに、今回は曲がりなりにも“美少年”って形容が原作にある役なんですぜ?ひぃー(苦笑)。・・・いや、まあ萬月なんで例のごとく美少年は罪深く汚れまってる訳ですが。
 キャストもおののくほどに豪華、公式ではかのドナルド・リチーのお言葉などもあり、軽くめまいがします。何はともあれ、こちらも期待と不安に胸をざわめかせつつ楽しみです。

○既に多くの映画サイトでニュースになってますが、以前私も映画バトンの「これから観たい映画」の一つのなかで紹介させて頂いた『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会の皆さまの活動、その熱意が実り、ついに日本公開実現の運びとなったようです! めでたい!

○池袋・新文芸座の今週末からの特集も相変わらずスゴイ!
【戦後60年企画第6弾 ATG 挑発のフィルモグラフィ 】
 TIFF直前だけど、ATGものは好きなので出来たら観たい映画がたくさんです。梶芽衣子がお初役という『曽根崎心中』や、傑作『竜馬暗殺』と併映する志麻姐の『心中天網島』、寺山修司二本立てや大島渚映画の日などは観たいんだけどなあ(土日はともかく平日の池袋は厳しいかも;;)

『SIN CITY』('05/米国)

2005-10-06 | 映画【劇場公開】
 “Coming soon”などと大嘘を書いて、コチラをご覧になってくださる酔狂な皆様には大変申し訳ないことをした。
 4月にはMaking Bookを買い、どんな映画雑誌よりイイ仕事してた月刊Playboyを熟読して、公開初日を指折り数えた映画である。勿論初日に観た。にも関わらず、どうしても再度観て自分の感じたことを確かめたくて、昨日見直した。そして、やはり---と確認した。一言でいえば、これは私にとってはちょっとした問題作であった。
 そんな訳で、毎度うんざりするほど長い文章だと自分でも思うが、今回はいつもより長くなるので、どなたさまもお覚悟召されい(笑)。

 誤解のないように書けば、私は本作を愛している。大好きだし、たぶん再びリピートすると思うし、その度に「SIN CITY」にどっぷり浸かれることだろう。DVDだって当然買うことを決めている。だって本当に、ロバート・ロドリゲス監督は原作の『SIN CITY』の世界をそのまま、映像に起しているのだからスゴイことだよ、これは。(ちなみに、原作となった「Hard Goodbye」「Big Fat Kill」「That Yellow Bastard」は読んでいる。個人的に好きなキャラがドワイトなんで、「Big~」が面白いと思うのだが、、、映画化したんだし、翻訳本出して欲しいですね)
 明かりを消して暗闇で観るような、いかがわしい深夜テレビの映画を思い出して欲しい。ビザールでレトロなパルプ・フィクション風味がたまらない、復刻フィルム・ノワール。紙からフィルムへと転写されたロマンティック極まりないハードボイルド。孤独な男たちのモノローグ、暴力、切ない愛のファンタジー。フランク・ミラーが白と黒でスタイリッシュに描き出した街が、生きた俳優たちの身体を得てスクリーンで再現される快感。勿論キャスティングは文句のつけようがない。細部にまで行き届いた配役の妙、俳優たちがノリにノッて「ここで見つからないものなど何もない、SIN CITY」の住人になりきっているのだ。ここまでやれば、完璧である。観終わったあと、安い酒をあおって煙草を一服したくなる。そういう映画であることはまったく正しい。
 フランク・ミラーは大満足だろう。原作ファンも、ロドリゲスの天晴れな心意気に乾杯するに違いない。 私とてそれは同じである。フランク・ミラーの原作ファンとして、感嘆せずにおられようか。

 …だがしかし。映画ファンとしては…この作品はあくまでも例外、問題作と重ねて言わざるを得ない。
 これは本当に個人的なことだが、以前にも少し書いたように、私は原作付の映画に関しては必ずしもそれに忠実である必要はないと思っている。むしろ、文章や漫画をそのまま映像にするなんて無理があるし、だいたいそのままやるなら実写映画にする必要がない、と思っている。近年で言えば、例えば松本大洋原作の『ピンポン』。あの映画は漫画そのままのシーンは多かったものの、ただそれだけのものであり、ハッキリとつまらないものだった。物語と絵面の上っ面だけをなぞって再現しましたよ、というだけのもので原作ファンとして私は、むしろ不愉快だった。(かと言って、アニメならいいのか、というとこれもまた別問題なのだけど)キャスティングされた俳優たちの演技も、ちょっと違うよなーという感じだったしね。って、そういう愚痴をココで書くのは反則ですね、すみません。しかも、興行ありきとしか思えなかったあの映画と、今回ロドリゲスが原作に対する強い愛着のあまり「俺は“ロドリゲスのSIN CITY”を作りたいわけじゃない。作りたいのは“FミラーのSIN CITY”なんだ!」とまで言わしめた本作を比べるのは、根本的に間違っているのも承知。

 それでも…やはり今作には、映画ならではのサムシング・スペシャルは…フルCGで創出された悪徳の街と、キャスティングされた俳優、そしてつけられた音楽という聴覚で楽しむ要素が加わった、という以外は無いのも確かだった。台詞もカット割・アングルに至るまで、原作とほぼ同じだもの。
 勿論、原作そのままやったからといって、すべての映画監督がここまでの完成度で撮りきるわけはない。そこは断じて違う。やはりロドリゲスのオタクな娯楽映画屋としての卓越したセンス~フィルムを繋ぐリズム感や音、俳優選択眼~がモノをいうのであり、彼は映画監督としてのエゴ・自由を捧げてまで『SIN CITY』の世界を映像化したかったのである。その狂気に近い熱い侠気を前にすると、本作に対する個人的なジレンマはとりあえず棚において、手放しで大絶賛はせずとも、愛を表明せずにはおられない。
 だから、本作はあくまでも「フランク・ミラー&ロバート・ロドリゲス」だけに許される例外であるとしたい。ここまで原作重視の完璧なコラボレーションは、彼らだから出来たことだ。本気でやれば完全映像化が出来ることを証明されて良かったね。おめでとう、Fミラー。そして、ロドリゲス!

 SIN CITY続編映画は、私の一番好きな「A Dame to kill for」を中心にする、と既に決まってるようだけど、そのときにはもう少しロドリゲスらしさ、みたいなものを出した映像化が観たいな(私はマリアッチ・シリーズとFDTDの大ファンなんだよ!)。今作の出来映えのおかげで、ロドリゲスへの信用もバッチリになったと思うので、フランク・ミラーもきっとそれを望んでるはずだもの。

 最後にキャストについて。今回はもう、いつもは嫌いだったり苦手だったりする人まで、文句なしに素晴らしかったのだけど、予想外にハマってたのはデヴォン青木@ミホ! 最初にスチールで観たときには「なんかこの人は丸顔過ぎるし、ミホとは違うなあ」と思ってたけど、すみませんでした! Deadly little MIHOが「殺人兵器ミホ」と訳されるのはどうかと思ったけど、デヴォンのミホはカッコ良かったね~。ミホの、いかにもコミック的なキャラなのにクール、というギリギリなバランスを保った存在感は良かった。と思ったら、案の定Fミラーが彼女の演出に付きっきりだった模様(笑)。
 この作品は男優がカッコ良くなきゃお話にならないので、彼らがいいのは当然として、女優陣までこだわった妥協のない配役と、彼女たちの成りきりぶりにもウットリであった。ありえないくらい原作と同じなロザリオ・ドーソン@ゲイルに、クライヴ・オーウェン@ドワイトならずともノックアウト(笑)。そして、蝙蝠男始に続きカメオ並の出演時間だったとはいえ、今作での役はぴったりで嬉しかったのはルトガー・ハウアー@ロアーク枢機卿。しかも、何気にブレードランナー・リスペクトっぽい最期の演出に、ニヤニヤしてしまったのだった。