日本電産株式会社http://www.nidec.com/ja-JP/の代表取締役社長の永守重信氏は、一代で日本電産をコンピュータのHDDを駆動させるスピンドルモーターの製造にかけては世界シェア70%を誇る巨大企業に育てあげた。常に前向きで積極的な考え方を説く、突出した独自の経営哲学の持ち主としても知られる。1944年京都府生まれ。
職業訓練大学校を卒業した永守重信氏は、1973年に日本電産株式会社を設立した。氏は海外に活路を求め,単身アメリカに渡り、大口取引先を開拓した。アメリカに続いてアジア、ヨーロッパへも販路を広げた。
永守氏は、また経営再建の名手としても知られる。不振にあえぐ企業20社以上の再建を手掛け、それらすべての再生を果たしている。
◆手紙やファックスで人間的な絆を深める
いまや携帯電話はビジネスマンだけではなく、若者の必携アイテムとなっている。街なかでも、電車のなかでも、公衆電話の横でも携帯電話に向かって話しかけている。このような電話人間であるはずの若い世代に、ことビジネスになるとうまく電話が使えないというおかしな現象が起こっている。電話が使えないといったが、正確ないい方をすると、相手に自分の意志が正しく伝えられないということだ。
極端な例では、電話で一五分、二〇分としゃべっておきながら、最後には「これから伺います」といって受話器を置くといったこともあるようだ。経営者の立場になると、こんなことも笑い話では済ませられない。
こうした結果になる原因は、大きく二つある。一つは、事前の準備ができていないということ。電話があまりにも身近な道具になりすぎたため、何も考えずにいきなり電話をかけはじめてしまう。これでは、うまく電話が使えるはずがない。たとえば、「わたしはスピーチが苦手で」という人がいる。謙遜ではなく実際にスピーチの下手な人というのは、たいてい練習をしていない。電話も同じで、前もってどういう内容の話をどういう順序でするのかぐらいは、メモにしておくぐらいの心構えが必要となる。
もう一つの原因が、普段から手紙や文章を書く訓練ができていないということである」手紙や文章を書かないために、言葉づかいや言葉そのものを知らないのである。友人やガールフレンドと話をするのなら、一〇〇か二〇〇のボキャブラリーでも充分話は通じるだろう。
しかし、ビジネスの世界では通用しない。言葉そのものを知らないのに、電話のかけ方はこうだ、電話がかかってきたときはこうしなさいといってみてもはじまらない。
わが社では、わたしが率先して手紙を書く。社員を褒めるとき、叱るとき、あるいは電話をすれば一分で済むことでも、わざわざ手紙にすることも多い。また、現場の各責任者には毎週ファックスでレポートを送らせ、その返事もせっせと書く。かつては年に三回、昇給時と夏冬のボーナスを支給するときに、全社員に自筆の手紙を書いて、そのなかで社員を褒めちぎった。
スピードばかりが優先される現代社会であるが、すべてに「ズバリ」が賢明とはかぎらない。手紙だからこそ深まる人間的な絆もある。いまわたしは改めて、手紙、文章を書く重要性を社員に訴えていこうとしている。
* 『 「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる 』 永守重信 三笠書房
「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる | |
クリエーター情報なし | |
三笠書房 |
1
日本電産永守イズムの挑戦 (日経ビジネス人文庫 ブルー に 1-32) | |
クリエーター情報なし | |
日本経済新聞出版社 |
1
|
|||||
|