矢沢あい『NANA』 12巻

2005-04-07 15:16:59 | 読書
NANA 12 (12)

集英社

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人気があるとの事なので勧められて読んでみたら面白い!これ、少女漫画ではなくもうちょっと上、ハイティーン以上を対象にしているのですね。人間の、特に若い女性の脆弱な精神部分を中心に描かれていて、軽率とも思えるセクシャリティを持つ登場人物の揺らぐ気持ちや辿る道筋が、漫画とは思えないほどリアルさを伴って迫ってきます。ちりばめられた詩的なモノローグや、キラキラと輝く絵柄、どれをとってもどこか切なく、胸を締め付けられます。
主人公は二人の「NANA」と言う名前の女の子。それぞれが想いを抱いて上京し、成行で一緒に住み始めます。バンドのヴォーカルとしてデビューを目指す「ナナ」、男を追って上京した「奈々」。お互いの壊れそうな部分を支えあいながら奇妙な友情で繋がる二人と、彼女達を取り巻く男性達でストーリーは進みます。
読みながらずっとドキドキしたり、涙を流しそうになりながら「今時こんなに感情移入出来る漫画があるんだなぁ」と思っていましたが、いつ頃からでしょう・・・徐々に「奈々」の方が許せなくなったのは。憧れのミュージシャン・タクミと会った次の日に軽い気持ちで寝て、その後優しいノブと付き合い、どちらが父親か分からない子供を宿してタクミのプロポーズを受けてノブと別れ、ナナと二人で住んでいた部屋を出るときも何も言わずタクミに付き従っているだけ・・・自分の弱さで周囲を振り回し結果的に傷つけてしまう、そんな女が私大嫌いなのですよ(笑)友人に言われた事があるのですが、私は黒髪の方のナナに似てるんだそうです。いえ、私はパンクじゃないですよ?(笑)タバコも吸いません。服はヴィヴィアンではなくゴルチエが好きです。でも、ナナにはとても感情移入してしまいます。奈々に惹かれる気持ちも分かるのですよ。保護して守ってあげたいと。
でも、私だったらあんな風に裏切られたら一生許しません(笑)その前に好きだったら好きだっただけ裏切りは許せない。人を振り回すのもいい加減にして下さい、と。なのでその後の展開はムカムカムカムカ(笑)

でもまぁここは作者の意図するところなのですよね。どうしようもないやるせなさと脱力感と。ここが「平成の作家」だなと感じさせられました。「昭和の作家」は読み手を満足させることは義務でしたからね。私はもう随分大人になってしまったので、共感できる漫画が少なくなりました。でも矢沢あいの漫画はどれも、まだ10代の頃の明るく・切なく・夢と希望に溢れた気持ちを思い出させてくれます。現代の都会に生きる繊細な少女を描ききるという意味で、矢沢あいは時代を代表する作家だと思います。ただ、「ご近所物語」の方がお薦めですけどね。納得の行くお話なので(笑)

ちなみに『NANA』が中島美嘉主演で映画化されます。キャストが漫画から抜け出たようで楽しみですね^^ 成宮君がノブ役でぴったり。でも松田龍平がレンって・・・いいの?(笑)

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