人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(写真展編) ホセ・クーラ 2016年ドゥブロヴニク・サマーフェスティバル / Jose Cura / Dubrovnik Summer Festival 2016

2016-10-30 | 写真を撮る



ホセ・クーラが指揮者として、歌手として参加した、クロアチアのドゥブロヴニク・サマーフェスティバル2016。
これまでにオープニングコンサートについてと、来年の演出予定について、紹介しました。

今回は、フェスティバル期間中に開催された、クーラの写真展についてとりあげたいと思います。これは、被写体としてクーラを写したものではなく、クーラがカメラマンとして、これまでとりためてきた写真作品を展示したものです。

「私は自分が写真家だと主張したことはない。写真は趣味だ。世界を観察したいという私の欲求を大いに助けてくれる。」(2016年)

こう語っていたように、あくまで趣味としてだそうですが、ツアーで外国に行く時などは必ずカメラを持って、撮影しているようです。
そのことを知った出版社が、写真集の出版を持ちかけ、2008年に『Espontáneas』(スペイン語で、“自発的な”、“自発性”のような意味か?)を発行しました。
 → Amazonの紹介ページ

今回のドゥブロヴニク・サマーフェスティバルの写真展では、この『Espontáneas』におさめられたうちの14点が展示されたとのことです。




実はこの写真集『Espontáneas』の中には、日本で撮影したらしい写真もたくさん掲載されています。
例えば・・


















初来日の時なのか、大相撲の写真もありますが、いくつか見て分かるように、クーラがファインダー越しに見つめる被写体は、その多くが普通の人々であり、日常生活であり、また時には社会の底辺に生きる人々であったりします。
オペラ歌手の写真集と聞いてイメージする、豪華で華やかなスターの世界を描いたものとは反対の、リアルな世界です。社会に対する問題意識を常にもち、写真を撮ることが「世界を認識するひとつの手段」と考える、クーラらしい作品といえます。
もちろん、他にも、子どもたちを撮ったかわいい写真、微笑ましい作品もありますし、この写真集以外にも、動物を写したユーモラスなものや、また闘牛を撮ったショッキングな作品もあります。

こうした作品は、クーラのフェイスブックの写真コーナー≪José Cura Photography≫で紹介されています。ロゴ入りのサンプルですが、興味をお持ちの方は、ぜひご覧になってみてください。

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ドゥブロヴニク・サマーフェスティバル2016でのクーラの写真展『Espontáneas』、開催期間は、2016年7月13~20日でした。
場所は、ドゥブロヴニクの旧市街にあるスポンザ宮殿。16世紀に建てられた歴史的建造物で、かつては税関、造幣局、武器鋳造所があり、現在も公文書館として使われているとのことです。






●写真展を紹介したクロアチアの報道より

「展示された14枚の写真は、世界中を旅行した彼が、通行人や一般の人々の、生活の中で日常の瞬間を撮影したもの。モノクロ写真は、見知らぬ人々の運命を記録している。彼のカメラのレンズは、高級感や魅力的なものにではなく、人々の裸の生活に焦点を当てている」

「この写真を見て、ホセ・クーラによって撮影されたということは分からないだろう。普通の人々、ただの男・・これらの画像には、スターはどこにもいない。そこには、贅沢は何もない。赤いカーペットも、シャンパンの泡も...。観客は、ホセ・クーラの写真に、つぎのようなものを期待するかもしれない。人を魅了する世界の主要都市、有名な歴史的建造物、広大なアベニュー、豪華な内装、魅力的なホテルやレストラン・・。しかし、ノー。彼の関心は、他の動機によって描かれている。」

●フェスティバルのことや、写真について語るインタビュー動画 2016年7月ドゥブロヴニク
 → 動画があるHPへのリンク



写真展の開会にあたって、あいさつするホセ・クーラ。





●写真集出版のいきさつ――2008年インタビューより
――写真は私の情熱であり、人生を観察する方法

写真はあくまで趣味。ある人は絵を描き、ある人はものを書く。私は写真を撮るのが大好きだ。
少なくとも過去30年間、写真を撮ってきた。訓練して腕も向上してきたし、仕事上、多くの偉大な写真家と話をすることもある。
私は常に、趣味の一端として写真を撮ってきたし、それは私の情熱であるとともに、人生を観察する方法でもある。

写真集の出版については、考えたことがなかった。しかし、2年前に、スイスの出版社が私のところに来て言った。
「私は友人の家にあるあなたの写真の何枚かを見た。ぜひ写真集を発行し、あなたの写真を公開したい」
私は、「世界が本当に私の写真の本を求めているとは思わない」と答えた。

これに対して彼は、こう反論した。
「あなたは、リチャード・アヴェドン(アメリカ合衆国の著名な写真家)ではないかもしれない。しかし、あなたは有名なアーティストだ。あなたを好きな人は、あなたが物事を見る方法を確認したいと思うだろう。写真集は、彼らにとって、素晴らしいものになるだろう。」
これを聞いて、私はOKを言った。


会場となったのは16世紀に建てられたスポンザ宮殿。さりげなく観客のように映っていますが、この青年は実はクーラの次男ニコラス君。




若い参加者とも気さくに懇談し、写真に収まるクーラ。






クーラの左側の若い女性は、愛娘のヤスミンさん。大学で写真を学んでいるそうです。


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写真はあくまで趣味というクーラですが、プロのアーティストとして、常に世界を見る目、人間を見る洞察力を磨き、人間と社会のなかから真実をつかみだし、表現する――そういう日常のなかにいるわけですから、クーラが写真をとることを愛しているというのにも、納得させられます。

1人の全面的な解釈者、表現者としての完成をめざして、社会と人間、芸術にかかわるさまざまなものに好奇心と興味をもち、挑戦しつづけるクーラ。多くのことに手を出すことについては、常に批判がありますが、それらは決して無関係ではなく、客観的な世界に対して、観察し、主体的に働きかけるアーティストとしての生き方にすべて連なっているし、それぞれが合わさって、クーラというアーティストに豊かさと魅力をもたらしているのではないかと思いました。



*写真は、クーラのFB,フェスティバルのHPやFBなどからお借りしました。
 

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