先日、新歌舞伎座で歌舞伎を見た話。
気軽な気持ち、
というかむしろ、親にお付き合いという半分義務感を持っての歌舞伎見物。
のはずが、
期待がいい意味で裏切られ、今年一のライブと断言できるほど、
ホントにすばらしいお芝居でした。
伝統芸能の重み、
と一言で片付けると軽々しくなってしまうけど、
歴史の重みといいますか、芸の深みといいますか、
型(様式)の美しさ、
生音楽(三味線とかお太鼓等)の複雑味、
と、演技との間合いの完璧さ、
ストーリーの斬新さ、
泣き笑いの緩急?やテンポのよさ、
衣装の美しさなど、
トータルでホントにすべてがすばらしかった!
語り尽くせないほど。
自称ミュージカルファンなのですが、
歌舞伎は、
踊りはもちろん、歌の要素(泣き(叫び?)というべきか)もありますし、
ライブの音楽もありますし、和製ミュージカルと言えなくもない。
今回は母からのたってのリクエストで力んでチケットを取ったので、
前から3列目、花道からも2列目という良席でした。
その視界や角度の良さも、感動指数が上がったひとつの要因かもしれません。
あとはこれ。
イヤホンガイド。
歌舞伎初心者、必須アイテムです。
休憩の時間などには、歌舞伎のざっくりした解説や、インタビュー。
演技の最中には「花道に玉三郎の登場です」というように
いわゆる副音声のような形で、解説が流れるのですが、
このおかげで、不案内なストーリーや役者のこともよくわかりますし、
舞台の演出や音楽隊についての丁寧な解説も、お芝居をスムーズに理解するために
とても役に立ちます。使用料700円に加え、ディポジットが1,000円必要ですが、
返却するのときには戻ってきますので、イマイチ自信のない方にはお薦めのアイテムです。
さて、演目はといえば、
ときが偶然10月で、
勘三郎(十七世・十八世)の追悼公演中だったこともあり、
勘九郎さんと、七之助さんの出番が多い作品となっておりました。
夜の部(16:30~20:45)
<配役>
一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
寺子屋
松王丸 仁左衛門、 武部源蔵 勘九郎、 戸浪 七之助、 涎くり与太郎 国生、 百姓吾作 松之助、春藤玄蕃 亀蔵、園生の前 扇雀、 千代 玉三郎
二、道行初音旅(みちゆきはつねのたび)
吉野山
佐藤忠信実は源九郎狐 梅玉、 早見藤太 橋之助、 静御前 藤十郎、
三、鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)
鰯賣猿源氏 勘九郎、 傾城蛍火実は丹鶴城の姫 七之助、 博労六郎左衛門 獅童、 傾城薄雲 巳之助、 同 春雨 新悟、 同 錦木 児太郎、 同滝の井 虎之介、 同 乱菊 鶴松、 庭男実は薮熊次郎太 市蔵、 亭主 家橘、 海老名なあみだぶつ 彌十郎
<見所(松竹HPより)>
一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)時代物の中でも屈指の名作
◆忠義のはざまで苦悩する夫婦の姿
武部源蔵は、妻戸浪とともに寺子屋を営みながら、太宰府に流罪となった菅丞相の子菅秀才を匿っています。その菅秀才を討つよう命じられた源蔵は、今日寺入りしたばかりの小太郎を討ち、その首を検分役の松王丸の前に差し出します。菅秀才の顔をよく知るはずの松王丸ですが、その首を菅秀才のものと認めて去っていきます。なんとか窮地を切り抜けた二人のもとに、今度は小太郎の母千代が迎えに現れます。源蔵が千代に斬りかかろうとすると松王丸が姿を現し、意外な真相を語り始め…。
<感想>
勘九郎と七之助が夫婦役で共演。仁左衛門さんや玉三郎さん、脇があまりにも、ものすごい配役で、豪華感たっぷりでした。
それにしても、玉三郎さんの「しなり」や「泣き」の演技は、圧倒的な存在感と筆舌し難い奥行きの深さがあります。
二、道行初音旅(みちゆきはつねのたび)華やかな歌舞伎舞踊
◆桜の花が満開の吉野を舞台にした華やかな舞踊
桜が満開に咲き誇る吉野の山中。都を追われた源義経を追うために、静御前は家来の佐藤忠信と共に旅を続けています。その道中、いつの間にか忠信の姿を見失った静が、義経から賜った初音の鼓を打つと、不思議とどこからともなく忠信が姿を現します。忠信が合戦の様子を語って聞かせていると、鎌倉方の早見藤太が家来を引き連れ、やって来て…。
<感想>
歌舞伎に、こんな踊りの演目があるとは知りませんでした。橋之助さんのユニークな演技、カツゼツと声量。梅玉さんと藤十郎さんの、ゆるやかで確実な踊りには、安心感のようなものを感じました。
三、鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)
三島由紀夫が御伽草子を題材に書き下ろした作品で、三島歌舞伎の中でも代表作のひとつとして知られています。おおらかで、笑いに包まれた舞台
◆一目惚れをした鰯賣の恋の悪戦苦闘
鰯賣の猿源氏は、大名の相手のみをする傾城蛍火に一目惚れをしてしまい、寝ても覚めても蛍火のことばかりを想って、仕事も手につかない有様。その話を聞いた父親の海老名なあみだぶつは一計をめぐらし、猿源氏を東国の大名に、博労六郎左衛門を家老に仕立て、廓へと向かいます。なんとか大名に化けたつもりの猿源氏でしたが、蛍火の膝枕で寝るうちに、寝言から鰯賣であることがばれてしまいます。嫌われてしまうと思った猿源氏でしたが、蛍火は自分の身の上を語り始めると…。
<感想>
上記の通り、三島由紀夫作。いわし売りの勘九郎、いわし売りが一目ぼれする姫役に七之助。見せ所はたくさんありました。七之助さんの女役は、ゾクッとするほどウツクシイ。けど、後姿を見ると、玉三郎さんの域まではもう一歩の感あり。
**********
古典って、イマイチ退屈なストーリーを深い演技で魅せるもの、
と勝手に思い込んでおりましたが、いやいや自分の世界の狭さを思い知りました。
一流の役者が演じる空間には、
何百年もの間に蓄積された、歌舞伎の奥行きの深い世界が顕然と存在します。
歌舞伎、はまるかも。
よ、中村屋!
この演目、十月大歌舞伎は、
平成26年10月1日(水)~25日(土)まで。
未体験です。
厳密にいうと、高校生の時学校行事の一つとして、観劇があり高2の時に、猿之助さんのなが~い、なが~い舞台を御園座へ見に行ったことがありました。
当時は、全く興味もなくまた宙乗りも私には魅力をかんじず…
少し歌舞伎に興味をもったのが、40代に入った頃…
ところが今までみることができてなくて…
やはり、見にいくべきよね!
絶対見るべき!とまでは言い切れないけど、機会あれば、一度トライしてもいいと思います。
あの、独特な空気感は、歌舞伎座でしか味わえないと思いますよー