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ぽっぽっ屋

2005-05-07 10:07:35 | ラーメン店調査 (51~55点)
もはやあまりにも有名な話であるが、この店を語るためには絶対に必要な大前提なので、少しだけ行数を割くことをお許し願いたい。

これまでにも何度か書いたように東京には「らーめん二郎」という三田を本店とする超有名店があり、その店の支店が都内各地に点在している。これらの各店には、三田店のお膝元である慶応生とそのOBを中心とした熱烈なファンが存在し、彼らが着実にその旨さを人々に布教していった結果、現在「らーめん二郎」とその一派は、東京ラーメンシーンにおいて欠かすことのできない一大勢力にまで成長を遂げた。

脂にまみれ、コッテリと濃厚ではあるが、しばしばコンソメにも例えられる位の切れ味の鋭いスープと極めて男性的な極太麺。加えて、肉の切れ端のようなチャーシューとどか盛りの野菜。それらが三位一体となって構成されるラーメンは、あまりにもインパクトが強く、独特の味わいがある(それがさらに凶悪な進化を遂げたのが「赤羽二郎」である)のだが、いったんハマってしまうと、それを定期的に食べないと生きてゆけない、あたかも薬物中毒患者のような様相を呈する。カロリーが高いことは解っている、食べ過ぎると体に良くないであろうことも理解している。にもかかわらず、彼らは日々「二郎」に向かい、そして己の業の深さを嘆くのである。彼らは一般に「ジロリアン」と呼ばれ、ラーメンマニアの中でも独特の存在感を放つ一派として君臨している。

最近になって、上記の彼らのように「二郎」に魅せられた人間や「二郎」で働いていたスタッフなどが独立して「二郎」の名を冠さない店を続々とオープンさせている。それが「二郎系」と呼ばれる一派であり、東京西部では「」「いごっそう」「どっとや」、東京東部では「ぽっぽっ屋」などがその代表的な存在である。

とりわけ、西部エリアの「」、東部エリアの「ぽっぽっ屋」は、ある意味では本家の「二郎」を超えたとの評も高く、「二郎」ファンにとっては貴重な存在である。まさに、東西を二分する「二郎系」の両雄だと言っても良かろう。

さて、「ぽっぽっ屋」であるが、店名は言うまでもなく映画の「ぽっぽや」をもじって名付けられたもの。「っ」がひとつ多いが、これで「ぽっぽや」と読ませる。この店は「堀切二郎」の影響を受けており、他の「二郎系」に比して少しみりんの味が強いスープがそのニュアンスを窺わせる。ただし、単なる「二郎」の模倣にとどまらず、具に大量の野菜を使用するなど、より深みのある複雑で濃厚な味わいを創出するための工夫は怠らない。

デフォルトは「ラーメン」と呼ばれる「二郎」のそれを彷彿とさせる一品であるが、研究熱心で野心的な店主がその天才的な才覚を持って編み出した「つけ麺」「油そば」「サラダ麺」「海の塩ラーメン」「味噌ラーメン」など、そのいずれもが極めてオリジナリティーが高く、斬新でなおかつ美味である。

僕は東京東部の江東区に住んでいるということもあり、本店・支店ともに「ぽっぽっ屋」には極めて足繁く通っており、上記のメニューについてはほぼ食べ尽くしているところであるが、どれを食べてもそのそれぞれに強い個性があって飽きることはない。

麺は、「二郎」及び「二郎系」は極太の縮れ麺を使うことで共通しているが、硬さについては店ごとにマチマチであり、例えば「三田二郎」「目黒二郎」「」などはどちらかと言えば軟らか目に調理してくるが、「赤羽二郎」「ぽっぽっ屋」などは極めて硬めに調理してくる。どちらも、店の創意工夫が活かされた結果そのような形になったのだと想像されるが、特に「ぽっぽっ屋」の麺は極めて硬くて歯応えがあり、「硬め」などで注文しようものなら、あたかもアルデンテのパスタと格闘しているような気になってくる。縮れも極度に強く、使っている麦のためだろうか、麺の色は心持ち黒みがかっている。見慣れない人にとっては個性的すぎて食べ始めるまでは少し違和感を抱くことだろう。

ただ、一端食べ始めれば誰もがこの傑作に心を奪われ、いつの間にか完食してしまうことだろう。「二郎」をさらに発展させたスープと、力強くいかにも麺を食べているといった印象のある極太麺の組み合わせならば、それも当然のことである。

「二郎」や「二郎系」にしてはやや少な目の分量も、女性にとっては歓迎すべきことだろう。同じ「二郎系」の代表格であっても「凛」がその凶暴な分量を主張しているのとは正反対のベクトルである。食欲のある男性であれば、大盛りを注文してもOKだろう。

具の分量も適度。しかも「ラーメン」には「二郎」にはないタマネギが加わり、スープの旨味に絶妙なアクセントを添えてくれる。オプションの味付け卵も半熟トロトロの逸品。

評価は「ラーメン」で(1)麺12点、(2)スープ16点、(3)具4点、(4)バランス10点、(5)将来性10点の合計52点。

全てのメニューがお薦めできるが、特に「油そば」と限定メニューの「味噌ラーメン」は絶品。間違いなくこの店でしか味わうことのできない傑作であるから、是非一度食べてみていただきたい。また、特筆すべきことであるが、実力店の割にはなぜか行列していることも少なくお手軽感がある。


所在地:小伝馬町
支店:勝どきトリトンスクエアー
実食日:03年2月

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