空中ブランコ (文春文庫 お 38-2)奥田 英朗文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
直木賞受賞作の「空中ブランコ」もちょうど文庫化されていたので「イン・ザ・プール」に続いて読んでみました。
前作ではサラリーマンや高校生など一般人が患者として登場したのに対して、本作では、スランプに陥ったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のヤクザ、送球のコントロールができなくなっていまったプロ野球選手、強迫症・嘔吐症の女性流行作家、と特殊な職業の人たちが登場します。
感心するのは、こういった特殊な職業を設定に置きながらも、登場人物たちが精神を病んでいく様子を自然に、かつ、面白可笑しく描いている点。
作家は同業だし、野球選手もイメージしやすいでしょうが、空中プランコ乗りやヤクザが職業上抱えているストレスやプレッシャーなんて、なかなか普通じゃ想像つかなさそうな題材を絶妙に料理しています。
上記四編の他にもう一編収録されているのが「義父のヅラ」。
シリーズの他の作品では患者が伊良部総合病院を訪れることで初めて伊良部医師と会うことになるんですが、この「義父のヅラ」では伊良部と医大時代の同級生で同じく精神医をしている男が主人公となる点でややパターンを異にしています。
この話が一番面白かった。
終盤のドタバタは思わず声を出して笑ってしまいそうになりました。
「金玉神社前」…実は自分もあの歩道橋の下を通るたびに同じこと考えてたんだよね!