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『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』感想その1

2011-07-05 02:49:47 | X-MEN(HJその他)

そろそろちゃんと『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』の感想を書くことにします。実は昨日4回目の鑑賞をして来ました(笑)。初見時の簡単な感想はこちら

原題は『First Class』。X-MEN世界で「最初のクラス」というと、サイクロップス、ジーン(マーヴェル・ガール)、ビースト、アイスマン、そして天使の翼の方のエンジェルのチームを指しますが、この映画ではそれより更に前の世代を描いているので、これについては(珍しく)日本語タイトルの方が合っているように思います。

2006年『ファイナル ディシジョン』を以て映画三部作が終わった後、ウルヴァリン過去編、マグニートー過去編、そしてファーストクラスものと様々なスピンオフ企画が上がっていましたが、まず製作公開されたのはヒュー・ジャックマン主演『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』。
その他の企画はどうなったのか、今ひとつ熱心に情報を追ってはおらず、マグニートー編は作られないかも知れないなどという噂を耳にするくらいでしたが、結局マグニートーとファースト・クラスの企画が合体して作られたのが、この『ファースト・ジェネレーション』だったんですね。
但し今回、前の三部作及び『ZERO』とは設定等かなり異なっています。これを矛盾と捉えるより、新たなシリーズとして仕切り直したものと考えた方がよろしいかと思います。

かく言う私も、実は公開前には、別に観に行かなくてもいいかな、ウルヴァリンも出ていないし……などと今となっては信じられないようなことを考えていました。
それが、5月に別の作品を観に行った時、予告編を目にして、これは期待できるかも、と思い始めたのです。

そして6月、初見はでの感想は──

素晴らしい!

タイトルに「X-MEN」を冠したシリーズでは最高傑作と言われるのも嘘じゃありませんでした。それどころか……

2008年『ダークナイト』を観た時、私はこのブログで「今後アメコミを題材にした映画でこれを超える作品は出て来ないだろう」と書きました。
すみません!その言葉は撤回させて下さい!
もちろん『ダークナイト』は語り継がれるべき傑作ですが、自分にとっての「好き」度では『ファースト・ジェネレーション』の方が勝ります。好き嫌いだけの問題ではなく、脚本、構成、出演者の演技、テーマ性、エンターテインメントとしての完成度、すべてに於いて素晴らしかったです。

以下、ネタバレありの感想その1。

ストーリー:1944年、ナチスのユダヤ人強制収容所に送られた少年エリックは、母と引き離された悲しみから、金属を操るミュータント能力に目覚め、それは収容所の科学者(医師?)シュミット博士の知るところとなる。
同じ頃、ニューヨーク郊外の屋敷の一人息子チャールズは、キッチンに忍び込んだ少女が、青い皮膚と変身能力の持ち主であることを知る。自身も強力なテレパシー能力を持つチャールズは、同じミュータントとの出会いを喜び、レイブンと名乗るその少女を「妹」として屋敷に匿うのだった。

時は流れて1962年。エリック・レーンシャー(マイケル・ファスベンダー)はナチスの残党狩りをしながら、母の仇であるシュミットの行方を追っていた。
一方、遺伝学、特に突然変異種研究の権威として、若くして大学教授となったチャールズ・エグゼビア(ジェイムス・マカヴォイ)は、CIAエージェントのモイラ(ローズ・バーン)から、ミュータント軍団ヘルファイヤークラブを率い、世界の破滅を狙うセバスチャン・ショウ(ケヴィン・ベーコン)の追跡、捜査への協力を要請される。実はショウこそ、エリックの追うシュミットその人であった。
復讐のためショウの前に現われたエリックの存在を感知するチャールズ。
そして二人は出会った──

というのが、物語の導入部分です。
この後二人は、レイブン即ちミスティーク(ジェニファー・ローレンス)の他にも若いミュータントたちを集め、ショウの軍団に対抗できるチームとして鍛え上げて、お互い同士も親友と呼べる関係となって行くのですが……

とにかく、ストーリーの展開に無理や無駄がなく、途中でダレるということがありません。
チャールズとエリックの出会いと別れと、若いミュータントたちのエピソードがうまく結びついていますが、それを繋ぐのがミスティークの存在で、これは彼女の成長物語でもありました。

当時の国際情勢に目を向ければ、時あたかも東西冷戦のさなか。あのキューバ危機の影にミュータントたちの存在があった!という設定だけ聞くと、まさに「マンガチック」な世界観です。が、それが決して「バカバカしい」ものにはなっていないのは、第二次世界大戦中にユダヤ人として、またミュータントとしても、苛酷な経験を強いられたエリックの背景と、それによって形成された彼の人間不信、憎悪、怒り、悲しみ等の感情が描き込まれているからです。その描き方にも過不足なく、観客の感情移入を誘います。
冷戦中には、「宇宙人の侵略とか共通の敵が出来れば米ソも手を組むこととなって、世界に平和が訪れるのに」などという冗談めいた言説が流れたものでした。それがいかにおめでたい認識であったかということも、この作品では描かれています。だから、「人間ども」に対するエリックの憎悪と敵愾心、復讐心がますます増幅して行くという展開にも納得できるのです。
その他、キャラクターの感情と行動の結びつき、様々なエピソードの配分、台詞の一つ一つに到るまで、実によく出来た脚本だと思います。

また演出も、リアルなシーンとアクションシーン、それこそマンガ的なガジェットの配置など、絶妙なバランスで見せてくれます。
エリックの「クルーザーぶった斬り」や、終盤のX-MEN対ヘルファイヤークラブのバトルには胸躍るし、チャールズ&エリックのスカウトツアーや、若いミュータントたちの訓練シーンのテンポも楽しく、小気味よいものでした。
ショウのカジノの隠し部屋、クルーザーに潜水艦などは、マンガと言うより007シリーズの悪役っぽかったですね。冒頭エリックの復讐行もショーン・コネリーのジェイムス・ボンドのイメージで、というのは監督自身が語っていたこと。クリストファー・ノーランと言い、英国監督にとってボンドシリーズはアクション映画のお手本、また憧れなんでしょうね。
前作『キック・アス』も好評だったマシュー・ヴォーン監督、実は当初『ファイナル ディシジョン』の監督でもあり、撮影も途中までは彼の下で進んでいました。後を引き受けたブレット・ラトナー監督を悪く言うつもりはありませんが、『ファイナル』が最後までヴォーン監督だったらどうなっていたかと想像したりもします。そのせいかどうか、『ファースト』を観た後、意外にも『ファイナル』のあれこれが思い出されました。

書きたいことはまだまだありますが、今日はこのへんで。

「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」オフィシャルサイト

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