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ひょっこり猫が我が道を行く!

カオスなオリジナル小説が増殖中。
雪ウサギが活躍しつつある、ファンタジー色は濃い目。亀スピードで更新中です。

010 解き放たれた力

2010年02月28日 11時37分55秒 | 小説作業編集用カテゴリ
 あれ・・・私はどうしたんだろ。
 さっき迄ガウラといなかったっけ?
 この光眩しいよ。直視できない。

 ん??ココは・・・私の家だ!!
 はあ、やっと帰ってこれたのかな。
 あ、陽兄ぃだ。太一兄も、お父さん、お母さん。あれ、笹井もいるじゃん。
 
 ただいまっ! もう聞いてよ。私、今まで変な夢見ててさぁ、向こうの世界で猫になってたんだよ・・・どうしたの?? 皆暗い顔して。お母さん、泣いてる? 泣かないでよ、私ココにいるよ。
 
 私が見えないの?? 私はここにいるのに・・・
 お父さん、陽兄ぃ、太一兄ぃも、どうして泣きそうな顔してるの。

 泣かないでよ。皆には何時も笑って欲しいんだ。

 向こうでは私、猫の姿だけど
 どうやって帰るかわかんないけど
 今は無理だけど、いつか絶対皆の居るこの世界に帰ってやるんだから。
 そしたら笑って出迎えてよ。 


 だから・・・待っててね



「リオ・・・」
「ニャ!!(はっ)」

 気付くと眩い光の中に居た。どうやら少しの間気絶してたみたい。
 ヨロヨロと顔を上げると目の前に端正な顔のナイスなオニーサンが居た。誰だっけか分からなくて上から下まで眺めると。

「・・・!!!!」 
「リオ、どうしたんだ??どこか具合でも悪いのか??」 
「ニャ、ニャアアアアアッッ(ちょっ、ちょっと服、服着て服!!!)」

 全裸だーーー!! 
 取り乱してわたわたしてると不思議そうな顔でこちらを見やる。
 羞恥心知らないの? 一体全体何がどーなって、貴方はどちらさん??
 真っ赤になった顔を心配げに覗き込まれ、沸点に達しそうになる。言いたい事が出てこなくって腕から慌てて跳び下りたが――
 
 ボトリ

「フギャッ」
「リオッ」
 部屋に間抜けな音が鳴り響く。焦って腕から抜け出たため床に顔から突っ込んだのだ。鼻が痛くて悶絶していると、背中に暖かい温度と胸の鼓動を感じた。

「ニャ・・・!!(ヒャアッッ)」
「大丈夫かリオ、オレはガウラだ」
「ニャアアッ(エエエッ!!!)」
 
 その言葉に驚いて腕の力を抜く。体に回されてる指は人間独特の物だ??
 ゆっくり正面を向けられて、顔を見合わせた。
 髪は黄褐色で首元までの長さ、瞳は琥珀色・・・ホントだ、面影がある。優しげな顔、蕩ける様な眼差し・・・
 ぶつけた鼻を優しげに撫でてくれるガウラを見上げる。ガウラを人間にするとこんな感じなのか、眼福眼福。ゲプッ

「リオ、オレはお前の守護獣になったからあらゆる力が増幅したんだ。獣は勿論人間との会話も成立出来るし、こんな事も出来るようになったんだ」
 
 そう言うと私を優しく地面に下ろすと神経を集中させて、姿が歪んだかと思うと獣のガウラに戻ったのである。それをポカンと眺めていると。

「よし、服とやらを奴らに貰うとするか。行こう、リオ」 
 
 のそりと動き出す。
 私もガウラについて行こうとすると、光の柱は消滅した。魔力の込められた石の入った金属は、光の奔流に巻き込まれ見るも無残な状態。宝石の部分はひび割れていた。
 私が近付いて触ってもピリマウムは反応しない。壊してしまった事で、ホンのちょっぴり罪悪感を感じてしまった。
 明る過ぎたその部屋の全貌が窺えてきた。さっき迄あった牢は壊れて、天井に穴が空き、崩れた屋根から月が見え、ポッカリと部屋を照らしだす。

(・・・お月見が出来・・・ゲフンッ)部屋の中が半壊してるよ。 

 まず月を確認した時点で、月の中のウサギがペッタンペッタン餅を付き、その出来た丸い餅を三角状に盛って美味しく頂いている自分が想像できた。
 ボケっとしてるとガウラに呼ばれ、涎を流しながら慌ててまた付いて行く。存在を忘れてた王様たちの安否を(一応)気にして周りを見渡すと、部屋の一角にクリーム色の保護膜を発見した。
 建物の崩壊に巻き込まれないように何か魔法でも使ったんだろうと推測する。
 その中に王様とディルは静かにこちらを見て、番兵の人は腰を抜かして驚愕の表情を向けてきた。

「覇者殿、カイナを守護獣にしたな」
「ニャ!!(ハウッ、何かいけなかったかな?)」
 
 腕を組み、結界を解除した王様が、呆れながら目線を下に向けてきたのでうろたえる。すると獣の姿のガウラがグルグル唸りながら、私の前に飛び出て威圧感たっぷりに憤怒する。

「我が主を脅すとは貴様、命が惜しくないのか」
「脅してなどいない――で? 覇者殿の名前と、お前の名は?」
 
 ガウラに睨みつけられても物ともしない。普通に問われてそれぞれ自己紹介する。リオに守護獣ガウラと。それからついでに王様の名前も聞いといた。
“ハシュバット・イリオス・ディッセント”って言うらしい。まぁ、私は王様って呼んでるけどね。
 それぞれ自己紹介した後、フーンとじっくり私達を眺めてくる。照れくさくてガウラに寄り添うと顔をスリスリ寄せられた。

「ニャ、ニャオオン・・・(ガウラ、くすぐったいよぉ)」
 なんかスキンシップ過多じゃないか? 守護獣という名の主従関係になってしまったから?シッポがぞくぞくする。すると王様が一言。

「覇者殿、いや、リオ。気を付けないと自分の獣に襲われるぞ」

「――やはり消してしまおうか。リオ、承諾してくれるか」
「ウーーー、ワンワンッ!!!(そんな事俺が許すわけ無いだろ!!)」 

 馬鹿め!! と罵倒し、背中に黒い翼の生えた犬ディルが王様の前に移動し威嚇して来た。頼むからガウラを煽らないで。ってか王様、何サラリとトンデモナイ事っっ!! それにガウラ、何気に人格変わってなくない??? 
 グルグル唸りだす守護獣ガウラに、何か気を逸らせようとして涙目になりながらペロリと頬を舐め上げた。

「ニャア、ニャアア!!(ガウラ、えっと服、服を貰おうよ!!ねっ?ねっ?)」
「・・・そうだな、リオにオレの格好良い姿を見せたい」
 
 人間ガウラが服来た所を見たいなー、カッコいいだろうなーと強請ると、怒りに満ちた表情がウソみたいに惚けてまたスリスリッと顔を寄せられた。

「そういうわけで国王、服を寄越せ」
 
 獣状態のガウラは下から目線でガンつける。一応この国の王様って事、ガウラ分かってるのかなぁ? 黒犬ディルの額に青筋が見える・・・

「人に物を頼む態度じゃないな。私みたいに謙虚な姿勢を見せないと―――」
 
 なぁディル?と王様を守るように佇む黒犬に聞いてみると、クウーーンと一鳴きして所在無げに困ったような声を出していた。王様の不躾な態度は、守護獣でもフォローしきれないと見た!!
 私がニヤニヤしていると、コチラをチラリと見て「まぁ、良いか」と腰を抜かしていた番兵の人に服を取りに行かせ、結局王様に服を貰う事になったのである。

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