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ひょっこり猫が我が道を行く!

カオスなオリジナル小説が増殖中。
雪ウサギが活躍しつつある、ファンタジー色は濃い目。亀スピードで更新中です。

021 暗転  ―2―

2010年03月02日 15時33分12秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 門の前で警備している兵士に私達が帰った事を伝えると、すんなり通して貰えた。
 王様の元へと進み出し、謁見の間に繋がる廊下を歩いていると、灰色ネズミのハンスが物陰に隠れて、私達を手招きして来た。自分のネグラにぜひ招待したいとのお誘いだったんだ。

 外へ一旦出ると、西の別棟の裏庭に出た。
 建物の小さな隙間からハンスが入り、中からしか開く事が出来ない、蝶番(ちょうつがい)の鍵をカチリと横に動かすと裏口の扉が開く。
 中に入ると正面と右横に二つの扉があり、右側にある押すだけで開く扉を開けると、更に階段で下った部屋に食糧保存庫はあった。今居る所が彼のネグラだ。

 地下にある為小窓は無い。光が漏れる訳もなく、二匹と一人は暗がりの中、井戸端会議を開いて話に花を咲かせる。つまり私達は暗闇の中で喋っているのだ。
 私は近くの物だけ見えるけど、ガウラやハンスは鮮明に見えるらしい。きっとナイトスコープ並に見えるんだろう。

「チュウウウッ!!(いやぁ、ガウラのおっさんが助かって良かったよ! オイラ、どうしようかと思っちゃったじゃないか)」
「ニャ、ニャアアアッ!(もうっ、ハンスは調子いいんだから!! 貴方が気絶した後、私凄く心細かったんだからねっ)」

 ガウラの腕の中でプリプリ怒り出す。
 ハンスはそんな私の様子を気にもしない様子で、厨房からくすねたチーズを食べていた。

「チュウ、チュウウ!(そんな怒る事無いだろっ! お詫びと言っちゃなんだが、ガウラのおっさんの群れに伝書カラスを送っといたんだぞ。おっさんの命は助かったってな!)」

 胸を逸らしてふんぞり返るハンスに、ガウラは目を丸くして驚いた。

「そうだったのか・・・ハンス、お前良い奴だな。これで無用な争いは無くなる」
「チュウウッ(オイラの家をカイナ達に壊されたくないもんでね。自分の身に降りかかる事については、機敏に動くんだ)」 

 ビッ!と親指を立てポーズを決めるハンス。
 私も親指立てたい・・・エイッ・・・ダメだ、肉球が邪魔をする。

「ニャアアア(でも、コッチの世界では伝書鳩ならぬ伝書カラスかぁ)」

 カラスってそんなに長距離飛べたかな?と疑問に思ったのだが、異世界だしいっか! と思うようにした。

「チュ、チュウウウ!(そういえば、ポネリーアで早速大活躍だって? やっぱり猫の嬢ちゃんはオイラの見込んだ通り、異世界の覇者だったんだな!)」
「ニャア、ニャア(私、言うほど何もしてないけど・・・)」

 ションボリしてガウラにしがみ付くと、彼は喉を優しく撫でてくれた。

「チュウウウッ(何言ってんだよ、ウミネコのネェさんにバッチリ聞いたぞ! 猫の嬢ちゃんが一匹で情報収集してるって。そんでその後、また別のトリから聞いたんだが巷(ちまた)のオス猫どもを懲らしめたってね! なんでも様相が白い猫のマッチョだと!!)」

 ちぎっては投げ捨て、オス猫どもをボコボコのケチョンケチョンにしたって、野良猫達の間で間違った情報が広まってるらしいと明かしてくれた。
 ハンスはマッチョの私を想像して、うつ伏せて体を小刻みに震わせている。手を激しく床に叩いて、最後には馬鹿笑いしていた。私のマッチョ像を想像したガウラも、次第に体を震わして、私がムッと睨んだら咳払いした。

「チュウウッ(そうだ、猫の嬢ちゃんはこの国を襲った魔族って知ってるか?)」
「ニャ?(えっ、魔族?特には聞いてないなぁ)」
「チュウウッ(もうすぐこの王宮の地下にある、“絶魔の牢獄”という場所で魔族をお目に掛ける事が出来るぞ)」

 ・・・なんちゅー怖いネーミング。魔物を閉じ込める為の牢屋か何かか?
 ガウラが閉じ込められて居た牢屋とは、また別の所だろうか?

「チュウウ(猫の嬢ちゃんも行ってみたら?)」
「ニャ、ニャアアア?(はっ、はあああ?やだよ、そんな拷問でもされそうな場所!!)」
「チュウウウッ!(男は度胸だ!なぁ、ガウラのおっさん!!)」
「リオは女だ。ハンス、わざわざそんな危険な所へリオを連れて行けるわけないだろう」

 馬鹿だなと、ハンスの首根っこを掴み上げ睨むガウラ。

「チュ、チュウウッ(オイラの情報魂が叫んでるんだよ!知らない事を知り尽くせって。なぁ、嬢ちゃんが一緒だと安心するんだよ。部屋の前まででも良いんだ。そこから一人で何とかするから!!)」 

 ハンスの執拗なまでの懇願に根負けして、一人と二匹はこの王宮の地下、“絶魔の牢獄”へ行く事になった。その判断を、私は物凄く悔やむことになる――

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