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ひょっこり猫が我が道を行く!

カオスなオリジナル小説が増殖中。
雪ウサギが活躍しつつある、ファンタジー色は濃い目。亀スピードで更新中です。

015 ポネリーアを救え! ―3―

2010年02月28日 13時37分58秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 ルートビッヒさんに目の前で用意されたのは、皿の上に盛られた握り飯と油紙に包まれたささやかな量の干し肉、陶器のコップに入った飲料水。私達5人は中央広場で配給されてるご飯を、エヴァディスさんと頂く事になった。

「今この国での食糧を配布しているのは嗜好云々より、空腹を凌ぐ程度のモノしか皆さんに賄えないんです」

 フリージアちゃん、エヴァディスさん、イルさん、ライさん、ガウラにどうぞと一人分の食糧を渡して行く。
 ルートビッヒさんに貰った食糧をその場に置いて確保して貰い、一旦その場を離れる事になった。
 エヴァディスさんが無表情で皆を促し、私達はテントから少し離れた場所にある壊れた配管から、水がチョロチョロ流れ出ている場所へ移動する。

 2階建ての上の部分が全焼している、外から中が丸見えで骨組みされた木材とかが顕になってこじんまりした民家と思わしき場所。家の裏側に大量の水を受け止める為の、広い面積の浴槽が放置されてあった。
 皆がここで手を洗う様を眺める。ここでなら人間一人、軽い水浴びなんかも出来ると思う。まだ臭くないよね? 自分の体をクンクン嗅いでるとガウラに頬ずりされた。
 テントの横の広い場所にシートを敷いている所へ戻り、ガウラと共に座り出す。私達と入れ替わり一時その場に居なかったルートビッヒさんが、両手に持つ皿を手に持ち近づいて来た。
 私の金色の眼に映る“ソレ”は、一際輝く。

「どうぞ、リオちゃん」
「ニャニャッ!(こ、これは!)」

 皿の上に盛られたネコまんま!!
 そう、ご飯の上に汁物をかけたゴチソウと言う名のご飯。
 チラリと見上げると、ルートビッヒさんの微笑ましげなその表情――
 さあ、遠慮無くお食べ。君の為のネコまんまだよと笑顔で告げられる。
 ゴクリと唾を飲み込む。この人には他意は無い・・・!!
 そうだ、私が“元人間”だと知ってるのはガウラだけなんだから!!
 けれどプライドが邪魔をする。私はいつから畜生に成り下がったのかと。

「・・・・」
「リオちゃん、どうした?」
「リオ?」

 ルートビッヒさんとガウラが心配気に私の様子を窺う。
 ガウラに悟られちゃ駄目だ。彼ならきっとやりかねない。私の為にネコまんまを取り下げろって。
 苦渋の思いでガウラと私の今後の為にも決断した。

「ニャアア・・・(何でもないです、頂きます・・・)」

 力無く俯き、腹を括る。
 私、今は猫なんだから、猫になり切ろう。(勿論トイレ以外。ここ重要)
 猫の私に求めてくれる人だっている。王様、フリージアちゃん、ルイ君、そしてガウラ。彼等は今の私を必要としてくれてるんだから。
 ポジティブに心を切り替えて、食べ溢しを恐れてかシートから離れた場所にお皿を置いて貰い、一匹寂しくネコまんまを口にする。


 ******

「それで召喚の間にマヌケ・・・いや、覇者殿が既に出現されていたのです」 
「イル、早くその口の悪さを直さないと、今度はガウラに氷で串刺しにされちゃうよ」

 既に臨戦体制のガウラが空気に冷たさを含ませて、イルさんを射抜く。昼食を食べ終えた私達は、エヴァディスさんに今迄の事の成り行きを順を追って説明する事にしたのだ。
 毛繕いしていた私は、近くに寄って来たガウラに抱き上げられて膝の上にイン。
 どこから取り出したのか、コンパクトなブラシで私の毛並みを丁寧にブラッシングしてくれている。

「昨日、プロテカの神殿の神官から伝馬で報告を受けた後、姫と僕等の三人で覇者であるリオちゃんを迎えに行きました。それはエヴァディス宰相ももうご存知ですよね?」

 イルさんの替わりにライさんが進んで話す。

「ああ、気絶した姫を医務室に運んでいる近衛騎士を目撃したからな」
「あの、本当におじ様やイルやライにご迷惑をお掛けしました。心からお詫び申し上げます」 

 頭を下げようとするフリージアちゃんを制し、エヴァディスさんは首を振った。

「姫が詫びる事は一遍足りとも無い。ただ、我ら臣下、両陛下にとっては心臓が止まるほどの衝撃を受けたのだと思う。ふがいない二人の騎士には其れ相応の報いを受けてはもらったが・・・」

 優しさを含ませた灰色の瞳で姫を見やった後、チラリと近衛騎士の二人を見る。
 蒼い顔をした彼等は昨晩の出来事を思い出していた。
 世間は祭りで賑わう中、兵士の訓練施設に問答無用と連れられ、木刀を一本ずつ放り投げられる。自らの叔父が放つ迫力ある闘気を前にして、一本取れるまで休憩無しと冷酷に告げられた。
 凄みのある顔で木刀を振りかざされ、処罰と言う名の訓練に何時間費やしただろう。勿論一本取れる訳も無く幾百の戦いを乗り越えたツワモノを前に、王族の近衛騎士であり、他の者よりかは幾分体力に自信がある自分達は、久しぶりに大汗を掻いて大の字になっていたのだ。
 遠い眼をしつつもライさんがフリージアちゃんに疑問を問い掛ける――

「僕は今でも謎なんだよ。どうしてリア様が気絶したのかってね」
「俺もだ。姫、何故気絶したんだ?あのマヌケ猫の何処が気に障ったんだ。アレか、きっと覇者だと期待した人物が猫だと知った時の呆然自失からだと俺は見るんだが?」

 そうだろう? と問い掛けた瞬間、イルさん目掛けて氷の矢が放たれる。攻撃を受けたイルさんが、心当たりのある本人を睨みつけた。該当する人物、ガウラが纏う冷気は霜が降り、太陽に照らせれてキラキラと煌めく。

「もしそうだとしたら何だと言うんだ?リオの事をこれ以上中傷すれば、今度は本当に貴様の脳天を打ち抜く」 

 琥珀色の瞳に氷のような冷たさを潜め、イルさんに牽制するガウラ。氷の矢はワザと外してやったとばかりに、彼のマントに突き刺されていた。頭にきたイルさんが剣を抜こうとした矢先、エヴァディスさんの静止が掛かる。

「イル、止めろ。お前の言い方が悪い。今度私の居る前で覇者殿を中傷したら私が相手をしよう。それで許してやって欲しい、リオ殿、ガウラ殿」
 
 イルさんの頭に手をやり、頭を下げ共に謝罪の形を取る。エヴァディスさんのその動作にガウラも私も目が点になった。

「ニャ、ニャアアア(エ、エヴァディスさん)」
「・・・、オレは別に構わん。リオの中傷をしないなら――」
「そうか。では、続きを話してくれ」

 シーーーン・・・

 ナニ、この空気・・・!ガウラの放った氷の矢が冷たさを演出して場が一気に沈み込んだ。
 しかし、そんな事気にしないKY<空気読めない>ガウラは今度は歯ブラシを取り出して、片手で私の口を器用に開けて歯垢を取り除く。
 皆の視線が私の間抜けな顔に(ゲフン)一点集中ときた。
 生き恥を曝すとは!! ここに王様が居なくて良かったよかっ・・・

「・・・ニャガガガ(ガ、ガウラァァ・・・)」

 両耳をぺたりとガウラの左手で押さえられ、更に皆が押し黙った。
 エヴァディスさんは目を白黒させて、イルさんはそっぽを向き、ライさんは体を震わせて笑ってるし・・・フリージアちゃんに至っては両の拳を震わせて悶えている。
  
「ここからはオレが話す。リオはその後牢屋でオレと出会うんだが、その前に狼獣人レイオンと接触した様だ」 

 私の口の中を覗きながら、決して傷つけまいと優しく歯もブラッシング。ガウラ、貴方はきっと良い旦那さんになるよ・・・これだけ気配り出来るなら、ガウラの奥さんになる人は幸せ者だね。
 彼の腕に爪を立てながら心の中で讃辞を送ってやった。

「レイオン・リディカン!そうか、あの狼獣人が・・・やはり奴もリオ殿に引き寄せられたのだな」
「そうだ。レイオンは狼共を代表する強者、奴程戦闘に慣れた猛者は居ないだろうな」
「・・・リオ殿の目の前に現れたと言う事は、いつかは奴も守護獣と成り得るだろう。だがしかし・・・」

 ハッとしたエヴァディスさんは首を振って、ガウラに続きを促した。
 一体何を言いかけたのかな?
 ガウラにブラッシングして貰いつつ話は続く。

「リオと出会った後は、オレは無理やり大広間に連れて行かれて宴の肴にされた。魔力を込めた宝石が引き金となり、獅子であるカイナの状態で一時この世界の共通語、ハヌマ語を話せる様になったんだ」
「その後魔族の襲来――だね」
「ニャガガガッ・・・」

 ああ、と返事をするガウラ。一心不乱に私の口の中を覗き込む。
 抗う事に疲れて、私は力無くガウラに身を任せていた。

「あの、リオ様の守護獣にガウラ殿がおなりになったのは、父が原因ですか?」

 フリージアちゃんが、グッタリと伸びている私を優しく擦ってくれる。
 女の子って、癒しってイイ・・・
 うっとりしつつ、横目でフリージアちゃんを窺うと、少し元気が無いみたいだ。どうしたんだろう?

「本来なら知能の高いカイナを群れから離すこと自体、危険だからな。国王はオレの仲間が自国に襲撃されるのを予想したんだろう。だからオレを処分する前に、リオに交渉したんだ」
「ニャガガガッ(そ、そうだったんだ)」
「国の為とは言え、申し訳ないです・・・」
「いい、オレが望んだ事でもあるのだから」

 フリージアちゃんは国を代表してガウラに謝っていた。
 王様が下した判断は、決して許されるものじゃ無い。だって、この国の人が助かっても、ガウラだけが被害に遭う。私だったら、きっと友達を見捨てたくなんか無い、絶対に――

「魔力を体内に大量に宿したリオは、見事に俺を守護獣に任命してくれた。それは、オレが死なない為の唯一の賭けだったともいえる」

「!!!」
「リオは覇者では無いと最後まで突っぱねていたからな。だがオレには分かった。この白い猫、コイツがオレの命運を握ってるってね・・・」

“宴が終わればガウラのおっさんは用済みだ――”
“カイナを処分されたくはないだろう?”
“そう簡単に殺られるつもりは無い”

 ハンスや王様、本人であるガウラさえもその後の処遇を知っていた。 
 ・・・だから、だからガウラは私に求めたんだね。自分の自由と引き換えに、“守護獣”と言う名の戒めを選んだ!!!

 ポッ、

「!?」

 ポタポタポタッ・・・

「リッリオ、どうした?痛かったか?」

 話し終えたガウラが、私の瞳から涙が零れ落ちているのを驚愕して慌てて口から手を離す。自然に流れ落ちる涙はガウラの薄緑の服に滲み込んでいく。

「ニャア、ニャアア・・・(い、痛くない。ガウラに比べれば、私なんか全然痛くないよぉ・・・)」

 涙を流しながら彼にしがみつく。ニャアニャア泣いて、喉が枯れるまで彼から離れなかった。体を擦ってくれる手はいつも優しい――打算でも何でも良いじゃないか!! 彼の命が助かったのなら・・・

***
 散々泣いた後、私は鼻水を垂れ流してガウラと共に先程手を洗った配管の所まで来ていた。顔を優しく拭いて貰い、ついでに口の中をゆすいで彼と一緒に近くの石垣に座り込む。

「リオ?」

 彼が困って引き剥がす迄ひっついてやろうと思ってた。
 ガウラは結局困る事も、私を離す事もしなかったのである。
 それを見かねたエヴァディスさんが「顔を洗って来なさい」と、気をきかせてくれたのだ。
 恥も外見もかなぐり捨てて大泣きした事が恥ずかしくて、ガウラから少し離れた場所でウロウロすると、時間をずらしてか私達がご飯を食べた後に国民が昼食を受け取りに来た。

 ガヤガヤ

「ちょっと、順番抜かしすんじゃないよっ!」
「うるせー!!俺はもう昨日の夜から全然食ってないんだっ!!ババァは内臓脂肪がタップリあんだからその分俺に回せ!」
「な、な、なんだってぇ・・・!?」
「押さないで・・・っ!皆さんの分の食糧はちゃんとありますから!」

 ルートビッヒさんや他の兵士の人が列を成している住民の為に昼御飯を配り出した。
 人員的に補佐するメンバーが少ないため一か所で配ろうと画策したのは良いが、人でごった返すと言う事に繋がった。つまり、ここには自力で動ける殆どの住民が中央テントに群がり出したのだ。

「ニャオオォォ・・・(ひ、人の波に流されるぅぅ・・・)」
「!リオッ」

 皆の所へ戻る道中、自分で歩いてボーっとしていると中央広場に面した場所に立ち往生し、ガウラの静止の声も聞かずに人の群れに突っ込んだみたい。
 そしたら人の多さの凄いこと凄いこと。気付いた時は後の祭り、沢山の人の足に隠れた私は、ガウラを見失ってしまった。
 どうなるっ?!私!!

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