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ひょっこり猫が我が道を行く!

カオスなオリジナル小説が増殖中。
雪ウサギが活躍しつつある、ファンタジー色は濃い目。亀スピードで更新中です。

005 レオニード城

2012年07月22日 14時57分44秒 | 小説作業編集用カテゴリ

 戦闘に長けたハリードがパーティメンバーから外れ、私を入れた六人はポドールイのレオニードさんを訪れる為に、途中で魔物と遭遇しながら丘の上の居城を目指す。
 ロマサガの戦闘では五人が主流となり、もう一人のメンバーは補助で、非戦闘員となる。比較的体力の高いユリアンとエレン姉さまが前に出て、真ん中がトーマスで前衛が三人、サラちゃんと猫の私が後衛。お姫様のモニカちゃんには補助メンバーになって貰った。

「脳天割り、行っきますっ!」

 パコォォォン!

 ゴブリン愛用の棍棒で、閃いた技を駆使しまくる。
 昆虫やゴブリンを一発で仕留める事が出来なくても、この技を喰らった者は眠りに落ちる。その隙に皆でタコ殴りして貰うナイスな戦術、名付けて“ナイトメア殺法”は、比較的強い敵にも効果があるから、多分中盤までなら使えるだろう。

「やった♪ これで私も、もう立派なロマサガメンバーの仲間入りだっ!!」

 少しばかり嬉しくなり、調子に乗って棍棒を手に持ちグルグル振り回す。
 自らの白い頭の毛を少し逆立て、気分はFFの某チョコボ頭、ク○ウド・ス○ライ○!! 
 肉球から棍棒を取り落とすヘマもしなくなったし、ロマサガ3を冒険する為に、今の内から鍛えて準備は万端、勿論素振りも欠かさない。目指せ、千本ノック! フンフンフンッ!

「? リオ、何言ってんだ。ろまさがメンバーって何だよ?」
「なっ、何でもない・・・あっ、ユリアン後ろ!!」
「えっ?」

 問い掛けるユリアンの背後から、不意打ちに地狼が襲い掛かる。剥き出しの鋭い牙がユリアンの左腕に噛み付く寸前、凄まじい蹴りが地狼の横腹に炸裂した。喰らった衝撃に耐えきれず、雪原に転がりのた打ち回って、最後には息絶える。

「油断大敵だよっ。この辺に居る魔物をまだ全部仕留めてないんだから、気を抜かない!」

 助けてくれたのは、回し蹴りしたエレン姉さまだった。彼女は斧を使った攻撃も得意だが、体術も出来る。素早さを生かした接近戦を得意とする、憧れのお姉さまだ。

「ああ、悪かった。助かったよ、エレン・・・」
「さすがエレン姉さま、素敵ぃ!!」

 憧れの人にダッシュで抱き付こうとした時、皆の荒い息遣いが聴こえて来た。休憩無しで戦ってたから、体力の無いサラちゃんが地面に倒れそうだ。慌てて彼女の足を猫の体でしがみ付き、力を込めて踏ん張りながら尋ねてみる。

「サラちゃん、大丈夫? 体が辛いなら町へ戻ろう?」
「ありがとうリオちゃん、私は大丈夫だよ。もう少しでお城に着くし、このまま行こう」
 
 強がりで大丈夫だと告げるサラちゃん。
 その反応を見て、不服ととったエレン姉さまが突っ掛かり、両肩を掴んで強い口調で促した。

「サラッ、あんたは無理しちゃ駄目っていつも言ってるじゃないっ! あんただけでも町へ「イヤだ!!」・・・!」 
「ふげっ」
「リオちゃん!」

 エレン姉さまの両腕を振り払うように強く弾く。
 その反動で私の体は降り積もった雪の中へと引っくり返り、頭から突っ込んだ体をモニカちゃんに助け出して貰った。暫しの沈黙が続き、サラちゃんの瞳が揺らぐ。

「・・・私だって、もう子供じゃない」

 エレン姉さまに言い放つサラちゃんに、皆が驚いた。荒い息遣いでも、見上げて睨み付けるその視線の先は丘の上の居城にある。
 茶色と緑が混ざった様な瞳に力が籠もるその力強さは、この地で生きてる実感をしっかりと私に感じさせてくれた。エレン姉さまの言葉を遮り、真っ向から挑む少女は前へ進もうとしている。


(トクッ)
 ――それは、自らの宿命に抗うという覚悟から来るもの?
(トクン・・・)
 私はこの世界を、ゲームの世界の出来事だと認識してるのに?

「サラッ・・・!」
「まぁまぁ、エレン。そう目くじら立てるなよ。此処まで来て帰れなんて、サラが可哀想だろ」
「俺達もサラを見くびってたな。上から押さえるのは良くないし、このまま先へ進もう」
 
 食ってかかるエレン姉さまを宥め、ユリアンとトーマスが押さえつける。次第に落ち着いて来たのか、動きが緩慢になる。

「次は私がサラさんの代わりに戦います。だから、このまま一緒に行きましょう?」
 
 モニカちゃんもサラちゃんの歯向かう様を見て、自分が戦闘すると庇いだした。
 
「勝手にしなさい! もう知らないからっ・・・!」
 
 激昂してサラちゃんに背を向けるエレン姉さまは、その後誰とも口をきかなかった。険悪な雰囲気のまま、私達六人は丘の上にある居城にやっと辿り着く。

(楽しんで、それで終わりと思ってた。でも、どうしてこんなに痛いほど伝わるんだろう?)

 彼らの生に対する足掻きや執着が、愛おしいと思うのか――今の私ではまだ答えが出せなかった。

***

「やっと着いた・・・」

 私達六人は雪の降り積もるレオニード城に、息もたえたえで着いた。
 茶色い石造りのお城の背景に暗雲が流れ、遠くから蝙蝠の鳴く声と何かがせせら笑う不気味な声のオンパレード付き。ホーンテッドマンション=お化け屋敷を彷彿とさせるおどろおどろしさが、私達の背筋を寒くした。

「さすが吸血鬼の城だよな。雰囲気出てるよ」
「ああ、ここなら何でも出そうだ」

 幼馴染同士のユリアンとトーマスが城を見上げ、顔を蒼くして感想を告げる。
 私はこの中をゲームで網羅してるので、レオニード城に何が出るのか知っている。腐乱死体や骸骨、ゼラチナマスターや骸骨達の頂点に立つヤマさんまで、幅広い魔物がお待ちかねしてるとは、今の時点では語るまい。

「だ、大丈夫だよ! こんなの何とも無い・・・」
「あっ、エレン姉さま、待って!」
 
 立ち竦む仲間達の後ろから、エレン姉さまがいの一番で重厚な扉の前に進み出る。彼女を追おうと、モニカちゃんの腕から跳び下りたが――

 ギギギギ・・・

 エレン姉様が扉に触れようとした瞬間、勝手に両扉が開く。驚愕した彼女が取った行動とは、一番近くに居た私の白い体を抱き上げ、力強く抱き締め震え上がる事だった。

「ニャ、ニャオオォォ・・・い、痛いでゴザイマスル。エレン姉さまぁ・・・」
「!! はっ、ご、ごめんねリオっ。つ、ついビックリしちゃって・・・」
 
 ポキポキと体中の骨がきしむ音がして、カクカクと口から魂が飛び出そうになる。痛みに耐えかねて、私が咄嗟に出した悲鳴は猫の鳴き声だった。

 恐る恐る城の中に入ると後ろから轟く音が響き、自動的に鉄製の両開きの扉が閉じられた。凝った作りに感心していると、エレン姉さまがまた強く抱きしめて来た。嬉しいけど、コレはっ!!

「ニャオオォォ・・・」
「エレンさんっ!」
「お姉ちゃんっ!!」
「・・・はっ! リオ、ゴメンッ!!!」

 気を失いそうになる所を、モニカちゃんとサラちゃんに助け出される。普通に抱き締めてくれる分には嬉しいけど、彼女の強い腕力でハグされると複雑骨折になりかねない。生命の危機を感じ、自分で歩き出す事にした。

 壁に幾つもの蝋燭が灯され、赤い絨毯が敷かれている通路を私達は固まって歩き出す。
 内装は言うほど汚れてもいないし、明るく照らされ蜘蛛の巣も見当たらない。やっぱり人が一番目にする場所だけに、小奇麗にしていると見た。 

 奥へ進むと大きな窓があり、そこから景色が見える。
 暗雲からは雷鳴が鳴り響き、稲光が部屋の中を更に明るく照らし出す。
 部屋の中に置かれている蜀台には沢山の蝋燭が固定され、中央に置かれた椅子には肘を付き、ゆったりと座る一人の男性が居た。

「よく来たね。私がこの城の主、レオニードだ。モニカ姫の事はロアーヌ侯から伺っているよ」
 
 艶の良い背中まである黒髪が特徴の、背の高い男の人だ。
 肌触りの良さそうな、これまた黒くて品の良いローブを身に纏っている。この人が着てるのが本物の“今宵のローブ”!! ねだったら貰えるだろうか。

「初めてお目に掛かります、レオニード伯爵様。
 ロアーヌ侯ミカエルが妹、モニカと申します。この度は不躾な訪問にも拘わらず寛容な御挨拶、真に恐れ入ります」 

 六人が並んで立っている所、モニカちゃんが前に出た。進んで挨拶をして、自らのローブを左右掴みお辞儀をする所は、彼女の育ちの良さが窺える。立ち上がったレオニードさんがモニカちゃんの挨拶を受取り、手の甲に唇を寄せて紳士らしく振る舞う。

「今日は疲れたろう? 部屋を用意しているのでそちらで休むと良い。軽食だが何か摘まめる物を用意しよう。さぁ、この子に着いて行くと良い」

 言うと横に控えていた精霊が動き出す。
 この世界の精霊は、“アビス”の影響を受けて凶暴と化したのだが、レオニードさんの使役する精霊は、彼の支配下にあるんだろう。本当は人間と共存できる種族なのに、それが少し寂しくもある。

「あ、あのっ、レオニードさんっ!」 
「ん? 猫が喋っている・・・君の名は?」 

 目を見開き絶句して、言葉に詰まるレオニードさん。
 私を見て驚いてるけど、吸血鬼である貴方も驚きに値しますが? 彼への文句を抑え、少し頼みたい事が出来たのでとりあえず聞いてみる事にした。ゲーム画面上では知る事が出来なかったけど、聞いてみる価値大アリだ。

「名前はリオって言います!あの、それでモノは相談なんですが・・・」
「言ってごらん」
 
 ゴニョゴニョと言い淀む。断られるのか、否か。彼は紳士らしく、頷いて私の言葉を待っている。

「お風呂貸して下さい。それとトイレも・・・」
 
 三大欲求には敵わないが、乙女として其処は譲れない。泥が付き、雪に埋もれ、垢にまみれたこの体を一回は洗いたかった。



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