第一部から居るメンバー
主人公 リオ
守護獣 ガウラ
灰色ネズミ ハンス(使い魔)
ハーティスの姉 ルビリアナ・レット・クロウ
黒山羊の悪魔 バフォメット(通称バフォちゃん、オス)
闇夜の中に閉じ込められた
紫色と群青色に染め上げられたこの世界が
どうしてこんなに落ち着くのか
誰か答えを私に下さい
猫である私は守護獣ガウラに、魔族のルビリアナさんは黒山羊のバフォちゃんにそれぞれ抱き上げられ、灰色ネズミの使い魔ハンスは私の頭の上で寛ぎながら、整備された土の上を歩いていた。
地面にしっかりと根着いた高い植物の茎の先には、ソラマメに似た常備灯が頭上高く設置されて、常にポッカリと照らし出している。
地中に埋め込まれた巨大な紫水晶や、青金石のむき出した鉱石のおかげで、逆に見えない所は無い。闇に支配された世界とは言っても、周りが見える様には実に工夫されていた。
「“底の知れない深い穴、(アビスロード)”を通って来たでしょ? あの星々も私達魔族が星に似せて作ったモノなの」
内部から常に光らせている紫水晶に近づき、ルビリアナさんは手で撫でた。それぞれの指の間から、紫色が溢れだす。
「ニャ、ニャアア(ホントの星じゃなかったんだ)」
「私達は太陽や星の実物を、ここで見る事は出来ないから・・・“偽り”の星を地底トンネルで真似る事にしたの。太陽の光は、地上からほんの少しだけ拝借して輝かせてるわね」
「・・・? お前達の魔力で、ここでも散りばめる事が出来るんじゃないのか」
「この世界の色を染め上げる事が出来るのは、王族の最上位に君臨するファランティクス様のみ。許可が下りないからデルモントでは出来ないし、鉱石を散りばめる事は出来ても光輝かないわ」
バフォちゃんに横抱きされた状態で喋るルビリアナさん。
彼らが作り出す“魔石”で、あの地底トンネルをプラネタリウム状態にしていたんだ。
太陽と星について想いを馳せる・・・ファインシャートに住む人間を憎む気持ちは、ここから始まったんだろうか? その答えはまだ聞けそうにないみたいだ。
空を突き抜けるお城へ目指す道中、石やレンガ造りの建物と呼ばれる窓と、外に取り付けられた階段から、隠れる様に私達を不審に覗き見ている複数の影を見かける。恐る恐る身を乗り出し、口から発せられた言葉は――
「!」
「あそこに居られるのは!!」
最初は警戒して遠巻きながら眺めていた複数の生き物が、ルビリアナさんを確認すると喜びを表して入口から飛び出してきた。
その物体は勢い余って地面にこけて、後に続くように出て来た者達を同様に、次々と自らの体で倒れさせる。下敷きになった彼らから、くぐもった一言。
「お帰りなさいませ、ルビお嬢様!」
「お、お帰り、なさいませ・・・お嬢様!」
「お・・・帰りなさいませ、ルビお譲さまぁ・・・ぐえぇ、二人とも早くどいてぇ」
「あらあら、大丈夫? 皆、良い子にしてた?」
ローブを着こみ、顔だけをひょっこりとさらけ出しているペンギンに似た生物が上から順に慌てて立ち上がり、私達を囲み一同頭を下げる。ルビリアナさんは顔を破顔させて、物凄く嬉しそうだ。
ズ・・・
「?」
ズリズリ・・・
「何の音だ?」
歓迎を受けていると、何処かから何かを引きずる音が聴こえてきた。
私を抱き込む力を強め、警戒するガウラと一同は周りを見回す。近くにある四角い二階建の建物の入口から私達の声を聴き付け、巨大な唇の付いた植物が根を引きづって近付いてくる。
「彼は何でも食べれる子よ。人間共が使う名称は“人喰い植物”だったかしら。ちなみに名前はボビーちゃんよ。可愛いし、紳士なの」
「ニャ、ニャオ・・・(紳士・・・)」
二メートル以上背のある大きさでバフォちゃん達を上から見下ろす。自らの腕に咲いているカトレアに似た赤い花を自らのツタで引き千切ると、ルビリアナさんに恭しく贈り付けた。
「ゴフ、ゴフ(お嬢には赤い花がよく似合う)」
「まぁ、どうもありがとう。大切にするわ」
右耳の上辺りの髪の部分に赤い花を挿して、極上の笑みを浮かべる。ボビーちゃんは照れた様子でモジモジしていた。いや、正確にはツタや茎をうねうねとくねらせているだけだが。
「また今度ね。時間が取れた時に、皆の家へお邪魔するから」
「ルビお嬢様が来て下さるのなら、包丁奮ってご馳走狩ります!」
「私達の家へ来てくれるの、是非とも待ってます!」
「お嬢様、大好きです!!」
どさくさに紛れた告白に似た台詞を聞き、バフォちゃんの腕から降りたルビリアナさんはオデコの部分にキスをする。舞い上がり昇天した彼らをボビーちゃんに任せ、一同は目的地へと進みだす。
*****
彼等と別れ、頂上の見えない城にやっと着いた。
デルモントの町の中央に位置する、紫色の巨大な城・・・
「ニャアアア(近くから見ても頂上は見えないんだね・・・ん?)」
てっぺんが見えないと思ったら、城が空中で浮かんでいた。
しかもこの城、鉱山を利用したのか、入口と思しき空洞がかろうじて見えるだけで、城門が見当たらない。
「紫鉱城(ラドギール)と呼ぶ、移動する要塞でもあるのよ。浮遊してるし、常に動くから場所を特定するのは難しいわね。こんな風にゆっくり動いてくれれば、今日みたいに辿り着くのは簡単なのに・・・」
「チュウウウッ(有り余る魔力の無駄遣いってね。ファインシャートに居た時の遺物だし、しょうがないんじゃないかな?)」
「ニャアアッ(ファインシャートに居た時の・・・?)」
デルモントは、最初はファインシャートにあった?
問い質そうと口を開きかけた時、ルビリアナさんの動きが止まる。すると、頭上から翼を羽ばたかせる音が近付いて来た。
「ギャア、ギャアアッ(お呼びですか、ルビリアナお嬢様)」
「異世界の覇者、リオとその守護獣ガウラをデルモントに連れて来たの。ファランティクス様と、ソルトス殿下に早速お目通りさせたくてね!」
「ギャアアアッ(彼らをですか?)」
首が長く、尖った嘴(くちばし)と大きな翼を広げた灰色の飛竜が、砂埃(すなぼこり)を発生させる。獰猛なペリドット色の瞳をしきりに動かせ、ペロリと舌を覗かせた。
「ギャアアアッ(黄褐色の髪をした男が異世界の覇者ですか? 今回も随分と若いですね)」
「違うのよ、彼は守護獣ガウラ。こっちの白い猫が異世界の覇者、リオちゃんよ」
「ギャ?(どこですか?)」
「この子よ」
「・・・ギャアッ! ギャアアッ(失礼しました! そういえば、純白の色を纏ってますもんね)」
どうやら飛竜さんは私の姿が小さすぎて見えなかったみたいだ。
色々文句を言ってやりたいが、ルビリアナさんが先を急かすのもあって、ガウラと一緒に背に乗せて貰う事に。
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主人公 リオ
守護獣 ガウラ
灰色ネズミ ハンス(使い魔)
ハーティスの姉 ルビリアナ・レット・クロウ
黒山羊の悪魔 バフォメット(通称バフォちゃん、オス)
闇夜の中に閉じ込められた
紫色と群青色に染め上げられたこの世界が
どうしてこんなに落ち着くのか
誰か答えを私に下さい
猫である私は守護獣ガウラに、魔族のルビリアナさんは黒山羊のバフォちゃんにそれぞれ抱き上げられ、灰色ネズミの使い魔ハンスは私の頭の上で寛ぎながら、整備された土の上を歩いていた。
地面にしっかりと根着いた高い植物の茎の先には、ソラマメに似た常備灯が頭上高く設置されて、常にポッカリと照らし出している。
地中に埋め込まれた巨大な紫水晶や、青金石のむき出した鉱石のおかげで、逆に見えない所は無い。闇に支配された世界とは言っても、周りが見える様には実に工夫されていた。
「“底の知れない深い穴、(アビスロード)”を通って来たでしょ? あの星々も私達魔族が星に似せて作ったモノなの」
内部から常に光らせている紫水晶に近づき、ルビリアナさんは手で撫でた。それぞれの指の間から、紫色が溢れだす。
「ニャ、ニャアア(ホントの星じゃなかったんだ)」
「私達は太陽や星の実物を、ここで見る事は出来ないから・・・“偽り”の星を地底トンネルで真似る事にしたの。太陽の光は、地上からほんの少しだけ拝借して輝かせてるわね」
「・・・? お前達の魔力で、ここでも散りばめる事が出来るんじゃないのか」
「この世界の色を染め上げる事が出来るのは、王族の最上位に君臨するファランティクス様のみ。許可が下りないからデルモントでは出来ないし、鉱石を散りばめる事は出来ても光輝かないわ」
バフォちゃんに横抱きされた状態で喋るルビリアナさん。
彼らが作り出す“魔石”で、あの地底トンネルをプラネタリウム状態にしていたんだ。
太陽と星について想いを馳せる・・・ファインシャートに住む人間を憎む気持ちは、ここから始まったんだろうか? その答えはまだ聞けそうにないみたいだ。
空を突き抜けるお城へ目指す道中、石やレンガ造りの建物と呼ばれる窓と、外に取り付けられた階段から、隠れる様に私達を不審に覗き見ている複数の影を見かける。恐る恐る身を乗り出し、口から発せられた言葉は――
「!」
「あそこに居られるのは!!」
最初は警戒して遠巻きながら眺めていた複数の生き物が、ルビリアナさんを確認すると喜びを表して入口から飛び出してきた。
その物体は勢い余って地面にこけて、後に続くように出て来た者達を同様に、次々と自らの体で倒れさせる。下敷きになった彼らから、くぐもった一言。
「お帰りなさいませ、ルビお嬢様!」
「お、お帰り、なさいませ・・・お嬢様!」
「お・・・帰りなさいませ、ルビお譲さまぁ・・・ぐえぇ、二人とも早くどいてぇ」
「あらあら、大丈夫? 皆、良い子にしてた?」
ローブを着こみ、顔だけをひょっこりとさらけ出しているペンギンに似た生物が上から順に慌てて立ち上がり、私達を囲み一同頭を下げる。ルビリアナさんは顔を破顔させて、物凄く嬉しそうだ。
ズ・・・
「?」
ズリズリ・・・
「何の音だ?」
歓迎を受けていると、何処かから何かを引きずる音が聴こえてきた。
私を抱き込む力を強め、警戒するガウラと一同は周りを見回す。近くにある四角い二階建の建物の入口から私達の声を聴き付け、巨大な唇の付いた植物が根を引きづって近付いてくる。
「彼は何でも食べれる子よ。人間共が使う名称は“人喰い植物”だったかしら。ちなみに名前はボビーちゃんよ。可愛いし、紳士なの」
「ニャ、ニャオ・・・(紳士・・・)」
二メートル以上背のある大きさでバフォちゃん達を上から見下ろす。自らの腕に咲いているカトレアに似た赤い花を自らのツタで引き千切ると、ルビリアナさんに恭しく贈り付けた。
「ゴフ、ゴフ(お嬢には赤い花がよく似合う)」
「まぁ、どうもありがとう。大切にするわ」
右耳の上辺りの髪の部分に赤い花を挿して、極上の笑みを浮かべる。ボビーちゃんは照れた様子でモジモジしていた。いや、正確にはツタや茎をうねうねとくねらせているだけだが。
「また今度ね。時間が取れた時に、皆の家へお邪魔するから」
「ルビお嬢様が来て下さるのなら、包丁奮ってご馳走狩ります!」
「私達の家へ来てくれるの、是非とも待ってます!」
「お嬢様、大好きです!!」
どさくさに紛れた告白に似た台詞を聞き、バフォちゃんの腕から降りたルビリアナさんはオデコの部分にキスをする。舞い上がり昇天した彼らをボビーちゃんに任せ、一同は目的地へと進みだす。
*****
彼等と別れ、頂上の見えない城にやっと着いた。
デルモントの町の中央に位置する、紫色の巨大な城・・・
「ニャアアア(近くから見ても頂上は見えないんだね・・・ん?)」
てっぺんが見えないと思ったら、城が空中で浮かんでいた。
しかもこの城、鉱山を利用したのか、入口と思しき空洞がかろうじて見えるだけで、城門が見当たらない。
「紫鉱城(ラドギール)と呼ぶ、移動する要塞でもあるのよ。浮遊してるし、常に動くから場所を特定するのは難しいわね。こんな風にゆっくり動いてくれれば、今日みたいに辿り着くのは簡単なのに・・・」
「チュウウウッ(有り余る魔力の無駄遣いってね。ファインシャートに居た時の遺物だし、しょうがないんじゃないかな?)」
「ニャアアッ(ファインシャートに居た時の・・・?)」
デルモントは、最初はファインシャートにあった?
問い質そうと口を開きかけた時、ルビリアナさんの動きが止まる。すると、頭上から翼を羽ばたかせる音が近付いて来た。
「ギャア、ギャアアッ(お呼びですか、ルビリアナお嬢様)」
「異世界の覇者、リオとその守護獣ガウラをデルモントに連れて来たの。ファランティクス様と、ソルトス殿下に早速お目通りさせたくてね!」
「ギャアアアッ(彼らをですか?)」
首が長く、尖った嘴(くちばし)と大きな翼を広げた灰色の飛竜が、砂埃(すなぼこり)を発生させる。獰猛なペリドット色の瞳をしきりに動かせ、ペロリと舌を覗かせた。
「ギャアアアッ(黄褐色の髪をした男が異世界の覇者ですか? 今回も随分と若いですね)」
「違うのよ、彼は守護獣ガウラ。こっちの白い猫が異世界の覇者、リオちゃんよ」
「ギャ?(どこですか?)」
「この子よ」
「・・・ギャアッ! ギャアアッ(失礼しました! そういえば、純白の色を纏ってますもんね)」
どうやら飛竜さんは私の姿が小さすぎて見えなかったみたいだ。
色々文句を言ってやりたいが、ルビリアナさんが先を急かすのもあって、ガウラと一緒に背に乗せて貰う事に。
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