群馬県の山村。
「猟友会には言ってありますので大丈夫だとは思いますが、今は禁猟期が終わっています。気をつけて下さい」というくらいの山奥です。
実際帰りには車窓から、熊を解体していると思われる現場を見かけました。
11月18日、ここで開催された「南牧耐久トライアル」を取材しました。
主催は、米澤満夫さん。
「昔の国際A級ライダーですよね」と聞いたら「今も国際A級です」とのお答え。こりゃまた失礼。
スタッフからは「総統」「元帥」「将軍」「労働党総書記長」などとも呼ばれておりましたが、ご覧のとおりに笑顔のやさしい紳士です。
「南牧耐久トライアル」はこの米澤さんの強力なリーダーシップがあってこそ実現している、「トライアルとはこういうスポーツだ」という想いを込めた大会なのです。
コースは1周4km。6つあるセクションを5ラップで、20km。
このコースが、南北耐久トライアルの耐久たるゆえん。
選手はこの、合計20km30セクションを3時間以内で走ることを目指します。
3時間を超えると2分毎に1点のタイムペナルティー。5時間を超えると失格で、勝負は足着き+タイム減点で競われます。
今年の参加者は、37名。
意外とトレール車が多いなあ。
選手は普段は山走りやエンデューロでバイクを楽しんでいる、という人が多く、ガチガチのトライアルライダーはほとんどいませんでした。
マシンはトライアルタイヤ装着が義務。他にどんなモディファイがしてあるのかと近づいてみると
性能アップより取っ手がたくさんです。
こちらの選手は腕上がりを防止するという器具で、スタート前から腕のマッサージ。
まあ、そういう大会なわけです。
朝9時過ぎ、2分毎に1台のスタートで試合が始まりました。
第1セクションは、こちら。
JTRと違って高いステアやきついターンなどはありませんが、それでもここはかなりの難度で、どの選手もバタバタで抜けるのが精一杯です。
JTRと違いセクションの制限時間無し、アシスタントも必要ありません。選手たちはほとんど下見をすることもなく、「ブロック1個右!」などとは全く違ったトライアルが展開されます。
他のセクションはこんな感じ。
まるで国内A級クラスのような「平地のターンと多少の登り降り」といったかなり易しめ。
なのに第1だけ厳しいのは、そこに行くまで選手たちはまだほとんどコースを走っていないからなのでしょう。
そしてこちらが、そのコースの一部。「一の滝」と呼ばれるところです。
ツルツルの岩に、選手たちは文字通り七転八倒です。
選手たちはマシンを引き上げるだけで全体力を使い果たし、ようやく登ってもそのあと走る気力もありません。
少し進んで、またばったり。
この沢を登った先にも、難所が。
下りも大変だあ。
そしてすぐにまた登り。
悪戦苦闘を続ける選手たちは、みんなこんな顔になっちゃいます。
セクションだとエスケープも出来ますが
コースはそういうわけには行かないのです。
極限まで体力を奪われた選手たちは、NB並みの簡単なセクションで軽いターンをするだけでもままなりません。
スタートではウイリー披露と元気一杯だった、井之前正輝選手。
あっという間に身体が伸びきって息も絶え絶えに。
拙作「野崎史高の 変身!!トレールテクニック 2号」でお世話になった「バイク屋タンデム」の杉浦勝好選手。
IAS斎藤晶夫選手のお父さん、斎藤輝夫選手。
完走14位でゴールした直後。
同じく完走12位でゴールした直後のタンデムチーム、宮原剛選手。
セローでお疲れ様でした。
腕上がり対策をしていた遊佐圭伸選手は、転倒でエキパイを破損してしまったようです。
この選手は、チェーンが外れてしまいました。
道端には、こんな状況も。
今年のこの大会。国際A級スーパークラスから野崎史高選手と成田亮選手が賞典外で参加です。
成田選手は全日本そのままのシェルコに乗って、難しかった第1セクションをただ一人クリーンです。
野崎選手が乗るマシンは、タンデム杉浦さんが作ったスペシャルトリッカー。
おや、ゼッケンがもう2番に!
スペシャルとはいえトライアルマシンではないのでクリーンを逃すシーンもありましたが
とにかく速い!
コースではどんどん他の選手をぶち抜いて行きます。
1周20分程度? 他の選手を撮っていたら、ありゃまあ、もう次の周回でやって来た。
実はこの大会、野崎選手は1ラップ目でシフトペダルを破損。その後全てを1速固定で走っていたのだそうです。
このシフトペダルの破損は、宮原選手のセローでも起こっていました。
ヤマハさーん、これは改良しないとオフロードバイクとして問題ですよー。
今回の大会には、IAS磯谷玲選手の弟、郁選手がエントリー。
野崎選手は試合後半、郁選手に追い着いたものの、さすがに転倒はしない磯谷選手。
野崎選手はなかなか抜けずに、タイムをロスした部分もあったとのこと。
磯谷選手が3点をとった第3セクション。
野崎選手はクリーンで走破。
そして野崎選手は、5ラップを1時間58分で走り切ってしまいました。
インターナショナルクラスの選手が5時間かかっても回り切れない事も多いコースなんですから、驚きです。
ちなみに完走したライダーの5ラップに要した時間は
磯谷郁選手:2時間22分 真田啓行選手:2時間50分 田上択選手:3時間58分 菅原明弘選手:3時間59分。
残る12人は4時間代で、賞典外の成田選手は2時間10分となっています。
他の選手のゴールを待つ間、野崎選手は次男君とバイク遊びです。
JTRでは野崎選手のアシスタントを務める中山浩さんは、今回は最も重要な周回チェック係。
スタートからもうすぐ5時間。
「残り10分であと1周できるなら、回って下さい」で、失格になる選手が出始めました。
あーあ、ウエアボロボロ。でも心はピカピカ。
これにて大会は終了。
結果は37台出走中、完走16台。
優勝:磯谷郁選手(減点15) 2位:真田啓行選手(減点42) 3位:石山直弘選手(減点82)
3人共トライアルマシンでの出走で、トレールバイクの最高位はTE250iで参加の田上択選手の10位(減点125)でした。
なお賞典外の成田選手は減点15、野崎選手は22。
でもこの大会の目的は、完走や減点、順位ではないですよね。
米澤さん含めライダー達は、なんでこんなやらなくてもいい大変な苦労をわざわざするのか。
そこには、幸か不幸かオフロードバイクなんてものを知ってしまった人間の、アイデンティティーがあるのです。
皆さん、また来年「魂のトライアル」でじっくり自分と対話しましょうね。
「猟友会には言ってありますので大丈夫だとは思いますが、今は禁猟期が終わっています。気をつけて下さい」というくらいの山奥です。
実際帰りには車窓から、熊を解体していると思われる現場を見かけました。
11月18日、ここで開催された「南牧耐久トライアル」を取材しました。
主催は、米澤満夫さん。
「昔の国際A級ライダーですよね」と聞いたら「今も国際A級です」とのお答え。こりゃまた失礼。
スタッフからは「総統」「元帥」「将軍」「労働党総書記長」などとも呼ばれておりましたが、ご覧のとおりに笑顔のやさしい紳士です。
「南牧耐久トライアル」はこの米澤さんの強力なリーダーシップがあってこそ実現している、「トライアルとはこういうスポーツだ」という想いを込めた大会なのです。
コースは1周4km。6つあるセクションを5ラップで、20km。
このコースが、南北耐久トライアルの耐久たるゆえん。
選手はこの、合計20km30セクションを3時間以内で走ることを目指します。
3時間を超えると2分毎に1点のタイムペナルティー。5時間を超えると失格で、勝負は足着き+タイム減点で競われます。
今年の参加者は、37名。
意外とトレール車が多いなあ。
選手は普段は山走りやエンデューロでバイクを楽しんでいる、という人が多く、ガチガチのトライアルライダーはほとんどいませんでした。
マシンはトライアルタイヤ装着が義務。他にどんなモディファイがしてあるのかと近づいてみると
性能アップより取っ手がたくさんです。
こちらの選手は腕上がりを防止するという器具で、スタート前から腕のマッサージ。
まあ、そういう大会なわけです。
朝9時過ぎ、2分毎に1台のスタートで試合が始まりました。
第1セクションは、こちら。
JTRと違って高いステアやきついターンなどはありませんが、それでもここはかなりの難度で、どの選手もバタバタで抜けるのが精一杯です。
JTRと違いセクションの制限時間無し、アシスタントも必要ありません。選手たちはほとんど下見をすることもなく、「ブロック1個右!」などとは全く違ったトライアルが展開されます。
他のセクションはこんな感じ。
まるで国内A級クラスのような「平地のターンと多少の登り降り」といったかなり易しめ。
なのに第1だけ厳しいのは、そこに行くまで選手たちはまだほとんどコースを走っていないからなのでしょう。
そしてこちらが、そのコースの一部。「一の滝」と呼ばれるところです。
ツルツルの岩に、選手たちは文字通り七転八倒です。
選手たちはマシンを引き上げるだけで全体力を使い果たし、ようやく登ってもそのあと走る気力もありません。
少し進んで、またばったり。
この沢を登った先にも、難所が。
下りも大変だあ。
そしてすぐにまた登り。
悪戦苦闘を続ける選手たちは、みんなこんな顔になっちゃいます。
セクションだとエスケープも出来ますが
コースはそういうわけには行かないのです。
極限まで体力を奪われた選手たちは、NB並みの簡単なセクションで軽いターンをするだけでもままなりません。
スタートではウイリー披露と元気一杯だった、井之前正輝選手。
あっという間に身体が伸びきって息も絶え絶えに。
拙作「野崎史高の 変身!!トレールテクニック 2号」でお世話になった「バイク屋タンデム」の杉浦勝好選手。
IAS斎藤晶夫選手のお父さん、斎藤輝夫選手。
完走14位でゴールした直後。
同じく完走12位でゴールした直後のタンデムチーム、宮原剛選手。
セローでお疲れ様でした。
腕上がり対策をしていた遊佐圭伸選手は、転倒でエキパイを破損してしまったようです。
この選手は、チェーンが外れてしまいました。
道端には、こんな状況も。
今年のこの大会。国際A級スーパークラスから野崎史高選手と成田亮選手が賞典外で参加です。
成田選手は全日本そのままのシェルコに乗って、難しかった第1セクションをただ一人クリーンです。
野崎選手が乗るマシンは、タンデム杉浦さんが作ったスペシャルトリッカー。
おや、ゼッケンがもう2番に!
スペシャルとはいえトライアルマシンではないのでクリーンを逃すシーンもありましたが
とにかく速い!
コースではどんどん他の選手をぶち抜いて行きます。
1周20分程度? 他の選手を撮っていたら、ありゃまあ、もう次の周回でやって来た。
実はこの大会、野崎選手は1ラップ目でシフトペダルを破損。その後全てを1速固定で走っていたのだそうです。
このシフトペダルの破損は、宮原選手のセローでも起こっていました。
ヤマハさーん、これは改良しないとオフロードバイクとして問題ですよー。
今回の大会には、IAS磯谷玲選手の弟、郁選手がエントリー。
野崎選手は試合後半、郁選手に追い着いたものの、さすがに転倒はしない磯谷選手。
野崎選手はなかなか抜けずに、タイムをロスした部分もあったとのこと。
磯谷選手が3点をとった第3セクション。
野崎選手はクリーンで走破。
そして野崎選手は、5ラップを1時間58分で走り切ってしまいました。
インターナショナルクラスの選手が5時間かかっても回り切れない事も多いコースなんですから、驚きです。
ちなみに完走したライダーの5ラップに要した時間は
磯谷郁選手:2時間22分 真田啓行選手:2時間50分 田上択選手:3時間58分 菅原明弘選手:3時間59分。
残る12人は4時間代で、賞典外の成田選手は2時間10分となっています。
他の選手のゴールを待つ間、野崎選手は次男君とバイク遊びです。
JTRでは野崎選手のアシスタントを務める中山浩さんは、今回は最も重要な周回チェック係。
スタートからもうすぐ5時間。
「残り10分であと1周できるなら、回って下さい」で、失格になる選手が出始めました。
あーあ、ウエアボロボロ。でも心はピカピカ。
これにて大会は終了。
結果は37台出走中、完走16台。
優勝:磯谷郁選手(減点15) 2位:真田啓行選手(減点42) 3位:石山直弘選手(減点82)
3人共トライアルマシンでの出走で、トレールバイクの最高位はTE250iで参加の田上択選手の10位(減点125)でした。
なお賞典外の成田選手は減点15、野崎選手は22。
でもこの大会の目的は、完走や減点、順位ではないですよね。
米澤さん含めライダー達は、なんでこんなやらなくてもいい大変な苦労をわざわざするのか。
そこには、幸か不幸かオフロードバイクなんてものを知ってしまった人間の、アイデンティティーがあるのです。
皆さん、また来年「魂のトライアル」でじっくり自分と対話しましょうね。