6月6日1

2007年06月06日 | Weblog
環境G8―「京都」の枠組みを広げよ (朝日新聞)
 12年前のベルリンを思い出す。

 地球温暖化を防ぐため、気候変動枠組み条約の第1回締約国会議が開かれた。議長はドイツのメルケル環境相。連日連夜、水面下の調整に走り回っていたが、具体策をまとめきれなかった。

 そのメルケル氏が首相となり、独ハイリゲンダムG8サミットが6日から始まる。主テーマは温暖化。議長として成功させたいとの思いは格別だろう。

 温室効果ガス排出削減を先進国へ義務づけた京都議定書の第1期が来年始まり、12年に終わる。では、13年以降をどうするか。その枠組みづくりに一歩を踏み出せるか、G8に問われている。

 今年は、科学者が背中を押した。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の部会報告だ。地球全域への悪影響を阻むには、今世紀半ばまでに、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出をざっと半分にすべきだという。

 「脱炭素」が、地球の安全保障の緊急課題となった。サミットを前に、日米欧から13年以降の温室効果ガス削減構想が示されたのは当然だろう。

 欧州連合(EU)は、20年までに90年より20%以上減らすという。ほかの主要国が同調すればという条件で、より高い「30%削減」の目標も掲げる。

 これに対し、議定書から離脱した米国のブッシュ大統領は、来年末までに世界規模の長期削減目標を定めるという。中国やインドを含む主要排出国の会議を米国主導で重ねていくと強調した。

 安倍首相の構想は「50年までに世界の排出量を現状の半分に」とし、「各国の事情に配慮した枠組み」を提唱した。

 日米は、中印などを仲間に引き込むため、ゆるやかな枠組みをさぐっているように見える。その中国は4日、応分の責任を認めつつ、削減目標値は拒否する姿勢をみせて牽制(けんせい)した。

 13年以降の枠組みには、数十年先をにらんで産業や生活を省エネルギー型・脱炭素型に変えていく仕掛けがほしい。

 ひとつが「排出量取引」だ。企業などに削減目標を課し、達成したら未達成のところに排出量の枠を売れる。脱炭素を進めれば儲(もう)かる、という誘導策だ。

 この制度は欧州ですでに本格化し、米国でも州レベルが導入を決めている。最近は東京都も導入の方針を発表した。

 各国に削減義務を課し、排出量取引を促す方式は、これまでの国際合意の果実である。揺るがしてはならない。

 中印などには、工業化を脱炭素型で進めるよう促すことだ。省エネによる炭素減らしはコスト節減につながり、経済の競争力を高めるメリットがある。

 世界市場を相手にする未来の経済大国として、一定の義務を受け入れ、排出量取引にも参加してもらうべきだろう。負担が重すぎれば技術協力や経済支援の手をさしのべればよい。

 その方向性が定まれば、来年の洞爺湖サミットにつなげることができる。


会計士法改正―企業とのなれ合いを断て (朝日新聞)
 公認会計士法の改正案の審議が国会で始まった。決算のチェックを強め、大企業で相次いでいる粉飾会計や不明朗な経理処理を防ぐのが改正の狙いだ。

 40年ぶりの大がかりな見直しだが、いくつか注文がある。

 改正案では、会計士の責任が重くなった。粉飾を見逃せば、最高で監査報酬の1.5倍の課徴金が課される。金融庁が業務の改善などを命じる制度も整えた。上場企業を担当する大手監査法人の会計士は5年交代制とし、監査先や関連企業への再就職も禁止した。

 しかし、これでは足りない。企業と会計士のなれ合いを断つためには、もっと突っ込んだ対策が必要だ。

 何よりもまず、経営者が会計士を選んで監査報酬を出すという現状を改めるべきだ。これでは、会社側に嫌われる厳しい結論を出しにくいからだ。

 法案の検討過程では、選任や報酬の決定権を監査役へ移す意見も出ていたが、法制化は見送られた。監査役が経営陣から独立しているかには論議の余地があるものの、監査役へ移せば現状よりはよくなるだろう。再検討してもらいたい。

 理想をいえば、上場企業の監査報酬は企業が直接払うのではなく、取引所など第三者が取りまとめたうえで会計士らに配分するぐらいの荒療治がいる。

 もう一つ、法案に盛り込まれなかった「セカンドオピニオン(二次意見)」の取り扱いについても、国会で議論してもらいたい。担当の会計士とは別の会計士に意見を求めるもので、医療の世界では定着しつつある仕組みだ。

 会計士協会は「倫理規則」を改正し、会計士が二次意見を求められた場合の手続きを整えたという。だが、引き受ける前に、まず担当会計士と協議することを原則とするなど、及び腰だ。これでは会計士仲間のかばい合いや遠慮が先に立ってしまう。

 日興コーディアルグループの不正会計を調べた特別調査委員会の報告書によると、社外取締役らが二次意見を得ようとしたが困難だったためチェックが不十分に終わっていた。そんな失敗を繰り返してはならない。

 経営を監視する社外取締役や監査役からの照会に対しては、担当会計士の了承がなくても回答できる制度を整えるべきだ。当座は協会規則の見直しで対応するにしても、最終的には法律に加えるのが望ましい。国会の審議のなかで、そうした方向性を確認してはどうか。

 カネボウや日興を担当していたみすず(旧中央青山)監査法人は、7月に解体される。3月末にはライブドアを担当していた会計士に実刑判決が言い渡された。会計不信をぬぐい去るには、厳正で実効性のある法制度が不可欠だ。

 国会の会期末が近づいている。もし十分な審議時間が取れないなら、次の国会へ審議を継続したうえ、内容をじっくりと練り直してもいいだろう。


環境白書 省エネ社会実現に制度の工夫を (読売新聞)
 深刻化する地球温暖化を防ぐために、自分には何ができるのか、家庭や職場の中を見渡してみたらどうだろう。

 環境省が「進行する地球温暖化と対策技術」をテーマにした今年の環境白書をまとめた。

 6日からドイツで開かれる主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)の主要議題は、温暖化対策だ。読売新聞の最新の世論調査では、温暖化に不安を感じている人が71%に上っている。

 温暖化を食い止めるために、何か手を打たなくてはならないと、多くの人が思っているだろう。

 世界トップレベルの省エネ技術により、日本の製造業など産業部門の二酸化炭素(CO2)排出量は減っている。

 一方で、家庭やオフィスビルからの排出量が大幅に増加している。白書は、こうした「民生部門」での省エネへの積極的な取り組みが、排出量削減に大きな効果をもたらすと指摘している。

 身近な例が紹介されている。家庭の白熱電球を、電球型蛍光ランプに交換すると、電力消費量が約5分の1に減る。電気代は年間で1900円ほど節約できるという。

 家電製品の省エネ技術は、かなり進んでいる。一戸建ての家で、10年前のエアコン、冷蔵庫、照明器具などを最新の機種に買い替え、窓を断熱性の高い複層ガラスにすると、CO2排出量を44%削減できるとの試算も示された。

 産業、運輸部門で省エネをさらに進めるとともに、家庭でも一人一人ができることを実践していくことが大切だ。

 省エネ技術の一層の開発、省エネ型のライフスタイルに転換する国民運動、省エネ技術を社会の隅々に行き渡らせる制度面の改革――。白書は、これらが三位一体となってこそ、「低炭素社会」を作り上げられるとしている。

 だが、制度改革の具体策には触れていない。環境省は、「今後の検討課題」としている。

 白熱電球は1個100円で買えるものもあるが、電球型蛍光ランプの価格は1000円前後だ。家電製品の買い替えには、多額の費用が必要になる。

 安倍首相夫妻が電球型蛍光ランプへの取り換えを呼びかける全面広告が、主要紙の朝刊に掲載された。こうしたPRで温暖化防止への国民の関心を高めていくことは、もちろん必要だ。

 それに加え、省エネ製品を購入する国民の費用負担を、少しでも軽くする制度を検討してはどうか。需要が増えれば、大量生産で価格が下がり、省エネ製品の普及も加速するだろう。


運転致死傷罪 悲劇をなくすための「厳罰化」だ (読売新聞)
 重大な事故を起こして、「うっかりしていた」では済まされない。相応の刑事責任を負うのは当然だろう。

 自動車運転過失致死傷罪を新たに設ける改正刑法が成立、今月12日に施行される。

 厳罰化やシートベルト着用の効果などもあって、交通事故の死者は年間6000人台まで減ってきた。だが、歩行者と自転車の死者が全体の45%を占める。

 こうした交通弱者の犠牲を減らす基本は、ハンドルを握る人のモラルと注意力にある。法改正を機に、一人一人が安全運転への自覚を新たにすべきだ。

 交通人身事故を起こした人には、普通は鉄道事故や労働災害、医療事故の場合と同様に、刑法の業務上過失致死傷罪が適用されてきた。最高懲役は5年だった。今後は自動車運転過失致死傷罪に問われ、最高懲役も7年と重くなる。

 2001年には、刑法に危険運転致死傷罪が設けられた。これに続く交通事故に対する厳罰化だ。

 故意に危険な運転をした者に対する危険運転致死傷罪と違い、前方不注意などが原因で、年間約90万件も起きている人身事故のほとんどに適用される。

 改正のきっかけは、埼玉県川口市で昨年9月、保育園児の列に車が突っ込み、園児4人が死亡、17人が重軽傷を負った事故だ。カセットプレーヤーのテープを替えようとしての脇見運転だった。

 これほど痛ましい事故だったにもかかわらず、地裁判決は業務上過失致死傷罪の上限の懲役5年にとどまった。

 遺族らは最高で懲役20年の危険運転致死傷罪の適用を求めた。しかし、この罪の適用要件は、正常運転が困難なほど飲酒していたとか殊更に赤信号を無視したなど、極めて限定されている。その壁を超えることができなかった。

 裁判長も「危険性や悪質性は際立っているが、法定刑の上限に張り付くほかはない」として、業務上過失致死傷罪の刑が軽すぎることに言及していた。

 遺族などには、懲役を2年引き上げる程度の改正では不十分だとする意見がある。危険運転ではなく不注意運転が原因だとしても、失ったものの大きさを考えれば当然の思いでもあるだろう。

 政府は今国会に道路交通法の改正案も提出している。成立すれば酒酔い運転の懲役は最高3年から5年に、酒気帯び運転も1年から3年になる。改正刑法と併せ、酒気帯び人身事故では懲役が最高6年から10年へ格段に厳しくなる。

 道交法は2002年改正に続く厳罰化だ。今度こそ飲酒運転による悲劇を絶つ契機としなければならない。


温暖化防止へ日本がまず削減進めよう (日本経済新聞)
 地球温暖化防止が主要議題となるドイツ・ハイリゲンダムでの主要国首脳会議(G8サミット)を前に、政府が2007年版の環境・循環型社会白書をまとめた。京都議定書の次の国際的な枠組みづくりが始まるなかで、白書は足元固めが重要と指摘し、国民1人ひとりに省エネなど日ごろの努力を訴えている。日本が国際交渉で主導権を握るうえでも京都議定書の目標達成は重要だ。日本は国民的な運動を通じて削減の模範を世界に示すべきである。

 京都議定書は2008―12年の平均で日本の温暖化ガス排出量を1990年に比べ6%減らすよう義務づけている。だが、排出量は05年時点で逆に約8%増えており、今後、大幅な削減が必要だ。白書はすべての分野で排出削減が必要と説き、特に排出増が目立つ運輸・民生部門では新たな技術の開発や導入によって排出を減らすよう訴えた。

 安倍晋三首相は2050年に世界の排出量半減の目標を掲げた日本提案のなかで、二酸化炭素(CO2)の排出を「1人1日1キログラム」減らそうと国民に呼びかけた。省エネ家電への買い替え、ハイブリッド車や太陽電池の導入など、様々な手段を合わせると、かなりの削減効果につながる。白書も一戸建て住宅の4人家族がエアコンやテレビなど家電10製品を省エネ型に替えれば排出量が約4割減るとの試算を示し、省エネ技術活用の重要性を強調している。

 排出削減は産業界だけが取り組めばすむ問題ではない。温暖化は国民すべてがかかわっており、誰もが身近なところで一歩を踏み出す必要がある。政府はあらゆる機会をとらえて、国民全体の排出削減への取り組みを働きかける必要があろう。

 政府は先週、「21世紀環境立国戦略」を決め、経済成長と環境保全を両立させる日本モデルの構築を目標に掲げた。50年に世界の排出量半減という長期目標へ向け、自然との共生や循環型社会の構築、途上国支援などを進めようとする総合戦略だ。省エネ先進国の日本は温暖化防止で世界に範を示すべき立場にある。産業戦略としても省エネ技術を世界に広めることは重要だろう。

 世界に対して説得力を持つ日本モデルをつくるには、国際的な取り組みの第1段階である京都議定書の目標達成でつまずくわけにはいかない。実際には排出が増えているのだから、排出削減策を強める必要がある。排出権取引などの制度づくりも急がなければならない。「低炭素社会」に向け、国民も産業界も政治も、強い意志を問われている。


年金に力点を置いた自民公約 (日本経済新聞)
 自民党が7月の参院選のマニフェスト(政権公約)を決めた。年金記録漏れ問題への批判が強まっていることから、公的年金保険料のうち持ち主が分からない5000万件については、1年以内にすべての記録の照合を完了する方針を盛り込んだ。参院選の争点に浮上した年金問題への対応に力点を置いたのが特徴だ。

 昨年9月に就任した安倍晋三首相にとって、初めての国政選挙の公約となる。安倍政治のキーワードの「美しい国」を生かして「美しい国の礎を築く」など4章(155項目)からなる構成にした。

 最初の項目で2010年の国会で憲法改正案の発議を目指すことを明記した。拉致問題の進展がなければ、北朝鮮に経済支援をしない方針を明確にするため、北朝鮮人権侵害問題対処法の改正を打ち出すなど随所に「安倍色」をにじませた。

 ただ早くても3年後の課題の憲法改正は、有権者の関心が高いとはいえない。年金記録漏れ問題と、松岡利勝前農相の自殺の衝撃が残る「政治とカネ」の問題が政権に打撃を与え、内閣支持率が低下するなか、自民党は年金問題などで明確な方針を打ち出す必要に迫られていた。

 首相は自民党の中川昭一政調会長らに「年金問題や公務員制度改革は国民の関心が高いのできちんとやってほしい」と指示。公約では「社会保険庁の責任は極めて重大であり、政府・与党一体となって再発防止のための調査・検証を早急に行う」と強調する一方で、社保庁を非公務員型の新法人(日本年金機構)に移行する必要性を訴えている。

 地方の医師不足問題では「緊急臨時的に医師を派遣する国レベルのシステムの構築」などの対策を列挙し、身近な問題に目配りを示した。温暖化ガス削減などの環境対策では、首相が表明した「世界全体の排出量を現状から2050年までに半減する」との目標を掲げ、来年の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)に向け「環境外交」を戦略的に展開するとしている。

 主要政党の中で、自民党が最初に政権公約を発表した。年金問題などで非難合戦をするのではなく、民主党なども公約策定を急いで、骨太な政策論争を展開してもらいたい。

 


1 コメント

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具体的目標が決まれば (pfaelzerwein)
2007-06-09 02:36:16
こんにちは。「省エネ製品の普及」により削減は典型的な米英の大量消費生活経済を基礎に置いた考え方で、今回のサミットにおいても安倍首相の記者会見の内容は無視されています。

当然のことながら消費にはエネルギー消費が含まれますね。場合にもよるでしょうが、長く無駄のないように財を消費するのも考え方です。

しかし目標が決まればあとは各々の社会にあった対応をすれば良い訳ですから、ニューヨークの金融筋が興味を持つ排出量トレードを含めて活発に目標へと向って策を展開して行くと良いのでしょう。