年金問題や「政治とカネ」の陰に隠れがちだが、憲法改正は重要な参院選の争点だ。安倍晋三首相は在任中の改正に意欲を示しており、手続きを定めた国民投票法ができたばかり。3年後には憲法改正案の国会提出が可能だ。そこで「憲法についてもっと考えた方がいいのでは」と考えた主婦たちが今月、勉強会を開いた。東京・下町の小さな部屋で開かれた勉強会をのぞいた。【桐野耕一】
「(軍隊と変わらない)自衛隊があるのは事実なのに、このままずっと憲法9条を守り続けるのでしょうか」。今月初旬、東京都江東区にある古石場文化センターの一室。講師役の市民団体「九条の会」の事務局員、高田健さん(62)に、主婦や会社員の男性たちから質問が飛んだ。勉強会に参加したのは古石場地区や近くの21人。近所付き合いのある友人たちだ。
「きっかけは主婦同士の長電話だった」と会を企画した戸井田由紀子さん(56)。「最近ニュースで憲法改正が話題になっているけれど、なんか不安だよねと。参院選で争点になるというし、みんなで勉強しようという話になった」と語る。
安い講演料で講師を引き受けてくれる人を探していたところ、知人が高田さんを紹介してくれた。「九条の会」は、憲法9条を守ろうと作家の大江健三郎さんらの呼び掛けで発足した会だ。高田さん自身も憲法問題の著書がある。
約1時間の講義の中心は、自衛隊の位置づけや集団的自衛権など9条をめぐる話題となった。「9条を次世代にバトンしたい」という高田さんの言葉に、主婦の河田文代さん(52)は「年金は身近な問題で関心があったけれど、憲法なんて人ごとのように思っていた。もっと深く勉強しないと」。会社員の福島有伸さん(45)は「憲法を変えるべきだとは思わないが、自分の考えがまだ見つからない」と感想を語った。「今後は憲法全体について勉強会を開きたい」と戸井田さん。
高田さんは「昨年ごろから、市民の勉強会に呼ばれるようになった。市民団体の集会も必要だが、いろんな考えを持つご近所が集まって語り合うのが、憲法に関心を持ってもらうのに一番いい」と喜んでいた。
毎日新聞 2007年7月21日 東京夕刊
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます