もうひとつの視点

ー「いつの時代も真理は少数から始まった」ー

宮迫氏、記者会見

2019年07月21日 | 日常

 記者会見によって、加害者が被害者となった。「すごい」としか言いようがない。

 売れない芸人たちの反社会勢力との関わりを、給料を低くしている吉本興業のせいにする声もあるが、会社、特に株式会社はボランティアで仕事をしているのではない。能力のないものに金を出さないのはあたりまえである。金を集められない銀行員、成果の出せない営業マンは左遷か嫌がらせなどによる事実上のクビとなる。そうなっても、同僚や上司、会社が金銭面で補助するわけでもない。自分のできる仕事に転職して生活していくしかない。夢と希望だけで、いつまでもその仕事にしがみつくことはできない。もしそれを無理にやり続けようとすると通常のやり方では難しく、違法行為など危ない橋を渡るしかなくなる。

 私は、吉本興業が悪いとは思わない。社長は、宮迫氏達に会見をさせないと言っていない。宮迫氏やロンブーの金髪の人の話を信じて放送局に嘘を言ってしまった吉本側が、調整や今後の対応を放送局側と行うから会見の期日は少し待てというのである。しかし、多方面への迷惑を考えられず、自分のことだけを考えてただちに今すぐ記者会見させてほしかったと泣きながら加害者は訴えた。自己中の極みだ。

 会社による不適切な対応を改善したいのであれば、あの会見場で泣きながらそのことを訴えるのではなく、日を改めて会見を行うなり雑誌社などにインタビューをしてもらうなりして訴えればよい。彼らは、あの会見とは関係のないことを涙ながらに訴えることで、マスコミや国民の攻撃を見事に違う方向へそらすことに成功した。マスコミは、バカみたいに違う方向に投げられた肉に向かって獣のごとく飛び掛かった。これはコメディーか。大の大人が泣きながら会見することは、欧米ではない。日本でも泣きながら訴えるというのは、罪を少しでも許してもらいたい小学生か同情してもらいたい女子高生が技として使うぐらいである。陳腐で未熟な技法を使って人をだましてやろうと考えるのは、大人になりきれていない証拠である。今回の彼のもくろみ、手法は、計画通りにうまくいった。こんな茶番が実際に成立するとは驚きであった。

 松本氏の言動にも賛成できない。会社は組織であるにもかかわらず、彼は自分の権力で株式会社をどうにでもできると思っている。現社長が自分の元マネージャーだったのをいいことに、社長のところに行って個人的に文句(「いつから偉くなったんだ」)や脅迫(「こんな会社にいたくない」)をするのではなく、要望があったらまず自分の直属の上司に話をし、その上司からの報告を受けて管理職や理事会、株主総会などで検討したり承認したりする話である。直に社長に対して自分の望みをかなえるようせまったり、事実関係の把握や整理、事象への対応など準備が整う前にただちに今すぐ記者会見をするようにさせて会社に不利益をもたらしたりすることは、とても危険な行為である。松本氏一人が思い通りにできるような株式会社であってはならない。

 また、松本氏は、「いつからそんなに偉くなったんだ」と社長にすごんで言うが、それは社長になった時からであり、その言葉は松本氏自身へ向かうべきであろう(厳密にいうと偉いのではなく、命令系統の上位にいるということだが)。松本氏は、自分が望んだ通りの体制に会社を変えたいのであればそれは無理な話で、株式会社を退社してサークルや仲良しグループのようなものを自分で作り、自分の稼ぎを使って才能がなく売れない芸人たちをずっと金銭面で助け続ければよい。ある程度、自分の金がなくなっていけば、やっぱり仕事というものは自分で稼ぐものだと松本氏も考え直すだろう。松本氏は、会社の存在意義や株式会社のしくみがわかっていない。一個人が威圧で思い通りにできる性質のものではないのである。「松本、動きます」が通用してしまうところまで、吉本興業が落ちていたことに驚いた。吉本興業は、組織(命令系統)とコンプライアンスを厳格化し、毅然とした態度で発展していってもらいたい。

 自己中心的な考え、論点のすり替え、「ごめんなさい」と言いながらの暴力(喩え)、仲間内での傷のなめあい・・・。お笑い芸人は、やはり社会常識も責任感も判断力も、残念ながら一般社会人よりはるかに劣るなあと思わせられる一日だった。

 今の日本は、無能な政治家が平気で嘘や詭弁、悪口を日常的に話すようになったり、お笑い芸人たちが無知による社会的、政治的な偏った考えを情報番組などで発言することが多くなったため、それが社会の規範となってしまい、正義や論理が通らない世の中になってしまった。言ったもの勝ちの混沌とした世の中を作り出した。

 政治家たちには、口ではったりをかましているだけではなく経済や外交、非正規雇用、高齢化、年金制度等どの分野でもよいから「良い結果」が出せる本当の力をつけてほしい。お笑い芸人は、コメンテーターになって偏った一面的な感情論を爆発させるのではなく、万が一、本当にお笑いが好きかお笑いの才能があるなら本来のお笑いの仕事に戻ってほしい。そうすると、日本の社会に論理性や正論が再び根付いていくだろう。偽物は去るべきである。マスコミも、視聴率欲しさに無責任に偽物を利用したり煽ったりしてはいけない。

この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 参院選 | トップ | 女性小学校教員の皆さんへ »

日常」カテゴリの最新記事