ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ ダゲレオタイプの女 (2016)

2016年11月12日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
愛することと、拘束することの物語。人の想いを永遠に定着させる「写真」は、人の時間と動きを奪う「死」の代替物でもあるということ。写真家は娘や妻に永遠の「生」を与えるために時間と動きを奪い、あたかも死者の態を強要する。そして、その行為は、写真家自身の心をも拘束する。

そんな写真家(オリヴィエ・グルメ)のさまを目の当たりにした助手(タハール・ラヒム)は、一線を越えて娘(コンスタンス・ルソー)に触れることで彼女の「存在」を確認しようとする。

それは、触れることを禁じられた被写体の解放。すなわち「死」への越境だ。「死」への越境は、越権であり、娘の解放は必然的に助手の自由を拘束することになる。死者を愛するとは、そういうことなのだろう。たとえ相手が生者でも同じことのような気がする。

「雨月物語」を彷彿とさせる古典的な構造で、人の外縁を跋扈する魑魅魍魎ではなく、心の内に巣くう恐怖を描いて、悲しくむもスリリングな愛の和風ゴシックホラー。

(11月8日/シネマカリテ)

★★★

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