ぽんしゅう座

映画を観るくらいしか趣味のない男の、雑談です。

■ イースター・パレード (1948)

2017年06月27日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
まずは華やかで芳醇な色彩に圧倒される。アン・ミラーの優雅さとジュディ・ガーランドの弾けぶりの対比が楽しく、その両者に完璧に応えるフレッド・アステアの妙技。冒頭の玩具店の圧巻のパフォーマンスは『雨に唄えば』の雨中タップと双璧の名シーン。

(6月23日/シネマヴェーラ渋谷)

★★★★★
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■ トップ・ハット (1935)

2017年06月27日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
いかにもRKO製作らしいジンジャーとフレッド・コンビの佳作だが、ダンスのパートはいささか大味で取り立て優れているとは思えず、むしろ物語を転がすユーモア要素が妙に際立ち、音楽映画というより喜劇映画のようでもあり、悪く言えば中途半端な感がいなめない。

(6月23日/シネマヴェーラ渋谷)

★★★
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■ 22年目の告白 ―私が犯人です― (2017)

2017年06月26日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
事件の発端を「阪神淡路」や「地下鉄サリン」の95年という世紀末に設定し大いに期待を持たせるが、サプライズ演出にご都合主義をねじ伏せるだけの説得力がなく興ざめ。この手の韓国映画の有無を言わさぬ剛腕演出に比べて、日本の若手監督の非力さを思い知る。

『SR サイタマノラッパー』シリーズ以来、入江悠監督の作品は全部観ているが、やっぱりこの人、強面に似合わず優しく切ない青春映画が得意な人なのだ。『ジョーカー・ゲーム』のときにも感じたが、この人のサスペンスやアクション演出は、先達を踏襲するような素人の手習い感があり、ハッタリが足りない気がする。

入江悠監督には『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』や『太陽』のときのような、緊張感にあふれた超絶長回しオリジナルテクで、大手メジャー映画でも暴れて欲しいと切に願っております。

あと、5人連続殺人事件とさんざん言いながら、事件が4つしか描かれないのは何故なのでしょうか。何か意味があるのかと思って最後まで気になってしまいました。脚本の瑕疵か尺(時間)の問題でしょうか。

(6月22日/TOHOシネマズ)

★★★
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■ 海辺のリア (2016)

2017年06月21日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
主人公の老優、桑畑兆吉のキャリアは彼を演じる仲代達矢そのもので、さらに舞台は仲代のホームグランド石川県の海岸。おそらく作者の小林政広は桑畑と仲代をシンクロさせることで、そこから生まれる予測不能な映画的な「何か」を撮ろうと試みたのでしょう。

でも、仲代があまりにも「芝居」が上手なので、ものの見事に台本上の桑畑兆吉を演じてしまい、それ以上でも、それ以下でもなく、小林政広監督の実験はあえなく失敗したように見えました。それに輪をかけて黒木華さんも「芝居」が上手なので、台本(お話し)の単調さばかりが目だって退屈でした。むしろ、きっちりとした台本など作らず、仲代達也と黒木華によるリア王と娘コーディーリアに被せたセミドキュメンタリーにでもすれば、もっと違った「何か」が出てくる可能性があったのでは、と思ってしまいました。

私は昔から仲代達矢が演じる“リアル”な生活者というのが、どこか芝居じみていて現実感がなく苦手(はっきり言えば嫌い)でした。今回の認知症の老人の口からでる言葉は、はなから現実から遊離していて“リアル”を生きる人々の実感とまったく噛み合わない設定です。いわば、放たれっぱなし、言いぱなし。相手や観客の反応を計算しなくてすむ、一人芝居のセリフのような設定。その分、仲代が語る「言葉」に無用な計算や力みがなく、実におおらかで気分よく聞けました。

それが、仲代達矢恐怖症の私にとって、うれしい誤算であり、唯一の救いでした。

(6月19日/テアトル新宿)

★★
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■ 踊るニュウ・ヨーク (1940)

2017年06月20日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
登場シーンのアクロバティックなダンスでエレノア・パウエルは、この映画が彼女のためのものであることを印象付けてしまう。驚異的な長丁場をフレッド・アステアとともに難なく見せきる「ビギン・ザ・ビギン」のタップは圧巻。色もの芸人や毛皮コートのネタも楽しい。

(6月18日/シネマヴェーラ渋谷)

★★★★
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■ 有頂天時代 (1936)

2017年06月20日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
おそらく山ほど作られた30年代ダンス映画のなかの小品(とはいってもジンジャーとフレッドのためのステージに手抜きはない)にしか過ぎないのだろうが、二人の「芸」の完成度で圧倒する。3人の巨大シルエット男とのシンクロダンスには驚愕、唖然とさせられる。

小ネタで笑いをつなぎながら、オチは半ば強制的に観客を“大笑い”の連鎖に巻き込む反則ギリギリの荒技演出でうっちゃり勝ち。

(6月18日/シネマヴェーラ渋谷)

★★★
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■ 家族はつらいよ2 (2017)

2017年06月11日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
下流老人の最期を、こんなにも軽くもてあそんでも顰蹙を買わないなんて、そんじょそこらの若造に出来る芸当ではない。ただの通俗喜劇にみえて、創作という代替行為を笑うことで、現実の深刻さを嗤うという老映画作家の達観に積み重ねた年季の意図せざる凄味を感じた。

どうでもいいことかもしれないが、丘陵地を造成したような急峻な住宅地で、駅から徒歩で20分以上かかり、子供たちが野球の多摩地区の決勝大会に出場し、横浜市の救急車が駆けつけ、警視庁の捜査員が訪れる平田家って、いったいどこの町にあるのだろうか。伝統的な大船の家族ものしかり、過去の山田洋二作品でも生活の立地場所は、物語の重要なファクターとして特定されていたと思うのだが。

その点、三男の嫁・憲子(蒼井ゆう)の母と祖母が暮らす街が、柴又だと示唆されるシーンには思わず頬が緩む。

あと、「エッツ、これってソール・バス?」な、横尾忠則デザインのクレジット・タイトルの“モダン”に、1950~60年代映画の郷愁を見た。

(6月10日/TOHOシネマズ)

★★★
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■ メッセージ (2016)

2017年06月11日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
言語は思想のツール化であり武器でもある。我々の言語を教える(強制する)ことでも、彼らの言語を学ぶ(準じる)ことでもなく、あらたな共通言語を発見し、その体系に身も心もゆだねることで、互いの思想や生き方に順応し、今までとは別の関係性を創造するということ。

【ご注意】これ以降、作品の核心や結末に関する決定的なネタバレがあります。映画を未見の方は読まないでください。

一見、思想と言語に関する理想的な正論だ。しかし、物語の全貌が明らかにされ、その意図せぬ“取り引きで”失ったものの大きさに気づいたとき、私は身ぶるいがした。なんと残酷な話しだろ。彼女(エイミー・アダムス)は自分の身に起こる(=起きた)すべての悲しみを、記憶に留めたまま誰にも“伝える”ことなく生涯を終えるのだ。

時間の循環による起点と終点の消滅。この作品で描かれた“Arrival”は、人類にとっては幸運への入口だったかもしれないが、個人にとってこれほど過酷なものはないだろう。

人にとって時間とは癒しだ。時間の堆積があるからこそ、人は深い悲しみのトンネルから抜け出すことができ、あるいは、たとえ一瞬の喜びでも、それを永遠の思い出として生きる糧に替えることができるのだ。時間を失うということは、混沌とした苦悩のなかを生き続けるということだ。

確かに、いま地球上では、国家や民族や宗教によって武装された「言語」のために、互いに交信不能な状態が続いている。だからと言って、現状を打開するためには時間という癒し装置を手放して、苦悩のなかを生きるしか術がないなんて・・・。それほどまでに、私たちは愚かで罪深く、抱え込んだ断絶は修復しがたいのだろうか。

人類が「幸福」を手に入れるために、時間と引き換えに失ったっものは個人の「幸福」であるという示唆。これほど、辛辣で恐ろしいホラーはないではないか。

(6月5日/TOHOシネマズ)

★★★★★
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■ 実録三億円事件 時効成立 (1975)

2017年06月09日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
事件の顛末はスピーディー(実に手ぎわいい!)におさらいし、後半は房夫(岡田裕介)と孝子(小川真由美)の危ういパワーバランス攻防と、ごり押し刑事(金子信雄)の武骨キャラで「おななし」の突飛さを飛躍と感じさせない庶民のためのピカレスク賛歌。

(6月4日/シネマヴェーラ渋谷)

★★★★
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■ 黒線地帯 (1960)

2017年06月09日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」
テンポよくぐいぐい引っ張る語り口の上手さ。いささか饒舌なモノローグも、ハードボイルドな味として許せてしまう手練れの職人芸。新宿歌舞伎町、浅草下町界隈、横浜の繁華街から港湾と“街”が存在感を持って活写されるモノクロ映像も危ういムードを醸し出す。

(6月4日/シネマヴェーラ渋谷)

★★★
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