2017.11.25~12.1 愛知に本部がある「日本ケイビング連盟」(以下JCU)の全国各支部が集まり、合宿スタイルでの研修が行われました。
今回の参加は北海道、奈良、沖永良部、西表島。
JCUはケイビングの技術提供や訓練の実施、レベル分けしたガイド認定などを行っている国内唯一の民間団体です。
国内では減少しているケイビング人口。
昔の探検部のような活動を行っている報告もあまり聞かなくなったとのこと。
今回の研修は、代表の吉田勝次率いる探検活動やテレビロケを共に行える人材育成の意味合いも持っていたようです。
今回の研修に備え、オンロープレスキューやリギングなど予習も行い参加しました。
今回の研修に合わせ、JCU本部施設にクライミングウォールが登場。
洞窟内に存在する地形を再現し、それに対応するべく訓練が可能となっています。
研修前日から到着していた西表島・奈良支部でクライミングウォールの石付け作業やマットの修理を行い本番に備えたのですが、皆気合が入り過ぎていたために深夜早朝問わずいきなりハードなスタートに・・・笑
隠しきれない意気込みが溢れてしまいました。
そして翌日から全国のケイビングガイドが集合。
早速室内トレーニングへ。
さらに、冗談かと思われた200メートルのロープ登高(以下SRT)トレーニング。
デモのギョニさんは25kgの重りをつけて・・・
すでに時間は22時ころ、汗だくの表情、疲労の声が響き渡っていました。
11/28
待望の実地訓練。
今回はリギングと呼ばれるアンカーとロープのセットがメイン。
壁に打ち込まれたネジ穴にハンガーをボルトで取り付け、そこにカラビナを介してロープをセットします。
翌日からキャンプで訪れる洞窟でのリギングの前に練習です。
移動車内はギアでいっぱい。
今回はトレーニングですのでザックの中には重りとなる石を入れていきます。
必死の思いで到着、装備を装着後にリギングスタート。
僕は一番手 全員が体重を預けるロープのセット、悲しい事に自分がやった作業が一番信用できません。
二番手に交代しどんどん進みます。
リギングのチェックは地球探検社のまっちゃんこと松下氏。
ロープには一人しかぶら下がりませんので、洞窟の中では一人っきりの時間が多いです。
写真にするとこんな感じ。
うまくいった時も失敗した時も全て自分に返ってくるのでトラブルは自分で解決するしかありません。
まるで自営業のような時間なのです。
しばらくして洞窟の最深部に到着。
一息ついて今度はロープを回収しながら戻っていくデリギングを開始。
担当しない僕はそそくさと洞口を目指し登っていきます。
すると洞口は・・・太陽が傾き、素敵な光景に。
あぁ、広角レンズの必要性を痛いほど感じました。
16-28mmとかで F2.8通しレンズなんか夢のレンズ。
洞窟を出て温泉と王将で身も心も満たし、洞窟キャンプのギア準備の打ち合わせ。
ロープは200m 100m 30mを準備。
国内最大級の竪穴なのです。
キャンプ当日。
ストリームトレイル社の
ヨクスプローラーというザックを使います。
これはストリームトレイル社のアンバサダーである吉田さんが監修の探検ザック。
それぞれ個人装備でザック一つ、ロープザックが3つですから誰かがザック二つで行動します。
準備を終わらせ、リギングスタート
↓リギングのチェックはJ.E.T.の近野さん。
メンバーを交代しながらどんどん進みます。
洞内でのコミュニケーションはトランシーバーで。
滑落しない体制を取っているとは言え、一歩踏み外すと闇の穴へ・・・というシーンでは全身がゾワゾワします・・・
僕の下に二人いるのが見えますか?
このピッチは60mくらいだと思われます・・・
最深部に到着、吉田隊長のメニューは焼いた餅に醤油と海苔、ウインナー、そして強奪した他人の食糧。
他のメンバーはフリーズドライ食やカップラーメンなど。
定番は鍋だそうですが今回は個人で揃えました。
この日の寝床。
快適空間、滴下水無し。
しかし翌朝は小さなゴキブリのようなものがウヨウヨ・・・
起床は3時。
当然ですが何時だろうが景色は変わりません・・・
写真撮影の時間を考慮し、早めの撤収となりました。
ここで洞窟写真家の肩書を持つ吉田さんの装備と方法を観察。
ツアー写真にも取り入れさせて頂きたいと思っています。
あぁ、また新たな物欲が・・・
そして撮影は終了、恐れられてた撮影時間は数十分で終わりホッと一息。
登り返しとデリギングを開始し、地上で無事全員合流となりました。
・研修を振り返って
今回はボルト穴があらかじめ用意されていた洞窟でのリギングがメイン内容。
そしてこの洞窟は我々にとって2回目であり、去年と同じような興奮はありませんでした・・・
という事で感じたのは、自分たちで見つけた洞窟に一からリギングした時の感動はどれほどのものなんだろうか、という事。
規模の大小や美しさではなく、最大の魅力はやはり「未踏である」という事なのだろう。
J.E.T.の方々が新洞にこだわる理由を肌で感じる事が出来ました。
リギングやSRTについては、ギアに触っている時間を増やさないと時間や手間がかかったりスムーズなケイビングのために改善の余地ありです。
特に、重いバッグを下げた状態でのSRTやトラバースは場数を踏まないと時間が掛かり過ぎだと指摘を受けました。
単純な筋力不足も。
こんな研修がツアーのどこに生きてくるのかとご指摘頂きそうなものですが、経験があることで生まれる「自身の精神的余裕」に尽きると思います。
地上では大した事でなくても洞窟の中で起きると一大事なる事はたくさんあります。
ツアーを引率する者にとってツアー中に心配事が消えることなどありませんが、こういった経験が自分の心の余裕を作ってくれます。
その余裕が、危険を誘発するお客さんの行動を見つける事が出来たり、お客さんの異変に気付く事が出来たり、につながると思っています。
今年の2017年はケイビング中にツアーを中断したり中止にする事があり、
ツアー参加者が熱中症気味になったりする身体的要因と、経験のない閉所や暗所での精神的要因の両方がありました。
放っておくといずれ事故につながる出来事でしたので、ケイビングの面白さと隣り合わせにある危険性を考慮するなら今回は有意義な研修だったと思っています。
・他に感じた事
SRTや洞内の移動を困難にするのは荷物の量ですが、この荷物は自分のものもあれば共同装備が入っていたり、他人の荷物も一緒に持たないといけないシーンが多々あります。
そしてお互いの連携を取りづらい環境で後続者へトランシーバーで連絡したり、洞窟を出た時には連帯感や仲間意識がかなり生まれます。
逆に言うと初対面の人といきなり洞窟に入るなんて嫌だなと思ってしまいます。
これは洞窟ならではのモノかも知れないなと感じました。
ここには書けない話もありますので、興味のあるお客様はツアー中にでも聞いてやってください。
ツアーが押してしまうかも知れませんが・・・笑
今回お世話になった
日本ケイビング連盟代表の吉田隊長、
地球探検社ciao!(チャオ)のまっちゃんとゆかりん、
JETの近野さん、ギョニさん、大変お世話になりました。
また、北海道・奈良・沖永良部の皆様お疲れさまでした。
来年の研修も楽しみにしています。