ORGANIC STONE

私達は地球を構成する生命を持った石に過ぎないのですから。

ボロミアはなぜ死んだのか:ロード オブ ザ リング(2001)

2006-06-27 09:51:35 | 映画:SF&ファンタジー
The Load Of The Rings :The Fellowship Of The Ring(2001)

 ボロミアはなぜ死ななくてはならなかったのか。ゴンドールの首都ミナス・ティリスの部隊ホワイト・タワー指揮官、ボロミア。しかし彼は、そのタフな外見とは反対に繊細で、良くも悪くも「誰より人間らしい」男でした。その屈託のない笑顔と、勇敢さの裏の「人間としての弱さ」。強ければ強いほど、明るければ明るいほど、その「弱さ」が引き立つ、そのために彼は物語上重要な「人間の弱さ」を象徴するものとして、死ななくてはならなかったのではないでしょうか。

 長い間闇の力の侵略を食い止める防波堤の役割をしてきたミナス・ティリス。その美しい外見とは裏腹に、強大な悪の影響を受け国民の精神は蝕まれ、国土は荒廃し、それでも運命として状況を受け入れてきた国民のために、彼は指輪を利用しようと考えます。指輪を手にしたものが得る、絶対的破壊力、それは、現代の最終兵器、核兵器の概念にほかなりません。手に入れたとしても、その力は強大すぎて、持つもの自らを破滅させる。力を実際に使用しても、しなくてもです。たとえ戦いに勝ったとしても、人間は弱い生き物であり、1人が絶対的権力を手にしたとき、権力者の末路は悲しいもの。その地位を維持するために、かつての理想は忘れ去られ、己の保身を優先するあまり、独裁者となる運命。勇者ではあっても、賢者ではなかったボロミアも同じく、たとえ指輪を手に入れたとしても、敵を倒すどころかその重さに自らを破滅させるだけだった・・・

  優れた指揮官であったはずの君は、そんなことも予測できなかったのか、ボロミア?もちろん分かって居たはずです。指輪の力を借りなくてはミナス・ティリスは間違いなく落ちる。万に1つのチャンスがあるとするのなら、彼はそれに賭けるつもりだったのでしょう。ロスロリアンでガラドリエルに会った後、何かが彼の中で変化したのです。ガラドリエルはボロミアに何かを提案したのですが、彼はそれを最後まで明かそうとはしませんでした。(映画ではガラドリエルは「まだゴンドールには希望が残っている」と言ったとボロミアに言わせています。最近気がつきましたが、このシーン、ボロミアの頬に涙の痕があります。演出が細かいですね・・というか、多分実際に泣くシーンも撮ったのかも。)

 その結果、ふたたび指輪の魔力にとらわれたボロミアは、森でフロドから指輪を奪おうとします。私たち人間とは、闇に流されてしまう脆い生き物。しかし弱く脆い生き物だからこそ、弱さに打ち勝ち、理想を貫こうとする行為が尊いのではないでしょうか?ボロミアは高潔な男でしたが、指輪への執着という心の闇を持っていました。そのため、彼はそのまま仲間とともに旅を続けることは不可能なのは明白でした。人間の弱さと、それでも限りある生命でありながら自分を犠牲にして戦うことの尊さを伝えるために、彼は死ななくてはならなかったのです。トールキンは、ボロミアの名誉のために、最後にメリーとピピンを命を賭けて守らせたのでしょう。人は心に闇を持った時、本当に優しくなれるのかも知れません。

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モノクロのボロミア壁紙

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2 コメント

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ボロミアですか~。 (髭ダルマLOVE)
2007-05-13 02:44:01
私の拙い記事にコメントをいただきましてありがとうございました^^

>映画ではガラドリエルは「まだゴンドールには希望が残っている」と言ったとボロミアに言わせています。最近気がつきましたが、このシーン、ボロミアの頬に涙の痕があります。演出が細かいですね・・というか、多分実際に泣くシーンも撮ったのかも。
細かい。
分析が細かい。
流石ですね。

>人は心に闇を持った時、本当に優しくなれるのかも知れません。
同感です。私もそう思います。

TBさせていただきますね。
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細かいっすね~ (ptd)
2007-05-14 01:50:36
髭ダルマLOVEさまTBありがとうございます。

そうなんです、細かいんです私。掃除や仕事ではおおざっぱなのに、好きな映画となると異様に細かい。なんの役にも立ってないですが・・・
指輪物語3作では、「王の帰還」が一番好きですが、この1作目はなんといってもボロミアですから・・・何度見ても最後で泣いちゃうんですよね。髭ダルマLOVEさんは泣きました?
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