詩の自画像

昨日を書き、今日を書く。明日も書くことだろう。

プラットホーム

2017-10-23 08:19:47 | 

プラットホーム

           

人の心が

プラットホームには

いっぱいこぼれ落ちている

駅員さんや

掃除専用の業者さんは

その掃除に

朝から大変だ

 

それでもその駅から乗る人

その駅に降りる人

それぞれ心に持つものは違うから

プラットホームに

こぼれ落ちているものは

重さも形も異なる

 

悲しさを心に持つ人が

プラットホームに落としたものは

掃除をしても

しばらくは残る

プラットホームがその悲しさに

恭順するからなのだろう

 

笑顔で

列車に乗ったり

降りたりする人がいるが

それが本当の笑顔なのかどうか

毎日掃除していると

こびり付いているもので

分かってくる

 

駅員さんは

プラットホームでは

乗り降りする人が持っている

人生の縮図の

一番前にいたりする

だから ときどき

プラットホームから落ちそうになる

 

いつまでもこびり付いているものを

プラットホームに

残しては置けない

だから 駅員さんや

掃除専用の業者さんは

毎日掃除に忙しいのだ

 

子どもの頃に

駅員さんの制服に憧れたが

制服には乗り降りする人の思いが

いつの間にか染みついて

洗っても落ちない

だから制服は

長く着るほど重たくなる

 

衣替えがあるのは

その重さを脱ぎ捨てる意味もあるのだ

駅には大小があるが

みんな同じだ

 

子どもの頃の

駅員さんになる憧れ

電車の運転手さんになる憧れ

この電車に乗って

東京の大都会に行く憧れ

 

そんな憧れも

プラットホームには

ときどきこぼれ落ちている

ここに立つと

心が微震するのだろう

こぼれ落ちるものが多くなる


スケッチブック

2017-10-23 08:12:02 | 

スケッチブック

 

 

スケッチブックに秋を描いている

通りすがりの人がのぞき込んで

何を描いているのですか?

と 聞いてきた

秋ですよ

と 言うと

不思議そうな顔をした

スケッチブックは真っ白だからだ

 

これは秋のスケッチブックで

まだ秋色が薄いので見えないのです

もう少し過ぎると

秋色が深まってきますので

もう一度ここに来て下さい

驚くような色になっていると思います

と 笑いながら答えた

 

聞いてきた人は

納得して帰ったのだろうか

スケッチブックには秋も冬も春も夏もない

真っ白な色一色の上に

描く人の気持ちで色の濃淡が違ってくる

秋一つを見つけると

その色が浮き出てくる

季節ごとに魔法が一つ置かれているのだ

 

無心に描くことで

スケッチブックには空の青が混じってくる

悩み色があったとしても

秋の裏へと隠されて行くから

長閑な色が多くなってくる

これを偽善と言ってはならないだろう

この季節の収穫物なのだ

ときどきスケッチブックには

思いがけない果物が描かれていたりする

 

聞いてきた人はまだ来ない