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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

芸祭2010 3日目 9月5日(日)

2010年09月05日 | pocknのコンサート感想録2010
9月5日(日)

F年室内楽の会 Vol.4  
~第1ホール~
モーツァルト/クラリネット五重奏曲イ長調K.581~第1楽章
ドビュッシー/フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ~第1楽章「パストラル」
ヘンデル/ハルヴォルセン編/パッサカリア
ダマーズ/木管五重奏のための17の変奏曲~
ショーソン/ピアノ、ヴァイオリン、弦楽四重奏のための協奏曲二長調Op..21~第1楽章
サン=サーンス/デンマークとロシアの歌によるカプリースOp.79
シューベルト/八重奏曲D.803~第6楽章


2年前に発足したという「室内楽の会」はF年ということで、4年生のアンサンブルだろうか。演奏内容の充実ぶりは驚くばかりだった。どの曲でも、ひとつのアンサンブルとして活き活きと呼吸し、充実した美しい響きを聴かせてくれたうえに、一人一人のプレイヤーの歌心や上手さにも感服した。

モーツァルトのクラリネット五重奏曲他に登場した鶴山まどかさんのクラリネットは、音色がウェットで瑞々しくとても美しい。甘く滑らかな歌いまわしで詩情豊かな世界を描いていた。アンサンブルとしても絶品のモーツァルト!

素晴らしいプレイヤーの中でもう一人、とりわけ印象に残ったのが、この会の主催者でもある對馬佳祐さんのヴァイオリン。ヘンデルのパッサカリアで、ヴィオラの丸山萌音輝さんとがっちり噛み合い、確固たる方向性を持って音楽を盛り上げていく姿に引きつけられ、ショーソンのコンチェルトでは、力強く柔軟な弓さばきでアンサンブルをリード、ピアノの棟方真央さんの流麗で敏感なピアノと交感し合いながらテンションがどんどん高まり、弦楽四重奏の4人の奏者がそれを更に盛り上げ、大きなクライマックスへと導かれて行った。ライブならではのスリリングな気分も味わえる名演!
このメンバーでの演奏会はもうないのだろうか。学内、学外を問わず、もしやるのであれば是非また聴きたい。

ボッケリーニ/交響曲ニ短調Op.12/4「悪魔の棲む家」
~第6ホール~
D年のDはデビルのDオーケストラ

ボッケリーニの恐ろしい名前の交響曲には、確かに何かに取りつかれたような切羽詰った緊張感が支配していた。指揮者なしで行われた演奏では、プレイヤーたちが恐ろしい形相で一丸となって迫ってくるようで、張りつめた空気がビンビンと感じられ、逃げ出したくなるほどの切迫感があった。スピード感溢れる快演。

東京藝大バッハカンタータクラブ藝術祭公演
~第6ホール~

バッハ/カンタータ第62番「さあおいで下さい、異邦人の救い主よ」BWV62
バッハ/カンタータ第34番「おお永遠の光、おお愛の源よ」BWV34


芸祭になくてはならない存在は、やっぱりカンタータクラブ。家族を連れて第6ホールに馳せ参じた。

第62番のオーボエと弦の前奏が始まるや、もう一気にバッハが血流となって体の中を巡り始める。響き、音色、呼吸、アーティキュレーション、テンポ… カンタータクラブが届けてくれるバッハは、全てが理想的な姿として体と心を満たしてくれる。いつもの繰り返しになるが、これはメンバーの卓越した演奏能力、楽曲への深い理解と共感、これをベースにしたメンバー同士の心のつながりがもたらす賜物だと思う。

合唱団のメンバーが歌うときに見せる豊かな表情だけでなく、この62番の第1曲で、コラール旋律が割り当てられたオケのパートを奏でるプレイヤーの表情も、まるでコラールを歌っているように見える。カンタータクラブの演奏するバッハは、団員の愛と共感に溢れている。

自分の音楽体験の中で、このカンタータクラブの演奏に身を委ねているときが、最も至福を味わえる時間ではないかとさえ思う。第34番の最後、合唱が高らかに”Friede über Israel”と歌い上げる満たされた響きの中で昇天した。指揮は井口達さん

今回のソロでは、おなじみの金沢青児さん のテノールアリア(第62番)が素晴らしかった。滑らかな歌いまわし、柔らかく艶やかな美声、ドイツ語の言葉ひとつひとつが感情を伴って聞こえてくる配慮に満ちた発音、どれもがいい。第34番でレチタティーヴォを歌った松原友さんの輝かしいテノールも強いインパクトを放っていた。今回の合唱団のテノールはこの二人だけ、というのにも驚いた。

定期演奏会では何をやるのだろうか。今から楽しみ!

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