facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

N響 2018年1月B定期(ダーヴィト・アフカム指揮)

2018年01月21日 | pocknのコンサート感想録2018
1月18日(木)ダーヴィト・アフカム指揮 NHK交響楽団
《2018年1月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.R.シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」Op.20
2.モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466
 【アンコール】
 ♪ ショパン/マズルカ 第45番イ短調 Op.67-4 (遺作)
Pf:小山実稚恵
3.R.シュトラウス/歌劇「ばらの騎士」組曲
4.ラヴェル/バレエ音楽「ラ・ヴァルス」

年明け最初のN響B定期に登場したダーヴィト・アフカムは、僕にとって未知の指揮者。1983年生まれでドイツ出身。ハイティンクに見い出された逸材とのこと。

最初の「ドン・ファン」、長身のアフカムが指揮棒を高く構えて振り下ろすと、エネルギー全開で、華やかで力強いサウンドが鳴り響いた。しかし(残念ながら最近のN響はこの「しかし」が多い)、この力強いサウンドをダムの水に例えれば、これを鳴らすために放水口を全開にしたのはいいが、音量が下がっても放水口は全開のまんまという印象。その結果、繊細な表現がほしいところもどこか締まりがなく、大きな音も一本調子に聴こえてしまう。これは「ドン・ファン」に限らず、「ばらの騎士」や「ラ・ヴァルス」でも同様の印象。得も言われぬ色彩や匂やかさが演奏の決め手になるこれらの曲からも、そのニュアンスがうまく伝わって来ない。「ばらの騎士」でのまろさんのソロヴァイオリンは色っぽい香りを醸し出すのだが…。それでも「ばらの騎士」では、終盤に向けていい感じで盛り上がってきてフィナーレの恍惚の叫びにどう繋がるか期待したが、何か模索しているようで、どこへ向かおうとしているのかが見えて来ないまま終わってしまった。

その一方で、小山さんをソロに迎えてのモーツァルトは良かった。骨太なダイナミックさと、磨きのかかった輝かしい音が持ち味の小山さんが、この曲をどう弾くか予想できなかったが、落ち着いた深い打鍵で、内面性を引き出し、味わい深いピアノを聴かせた。一つ一つの音に神経が行き届き、フレーズを緻密に彫塑して行き、ほの暗いなかに浮かび上がる端正で美しい姿が、時おりキラリと輝いた。モーツァルトの作品のなかでもとりわけ深刻な空気を持つ作品のリアルな素顔が見えたようだった。オケも、ここではとても引き締まって端々までコントロールが行き届き、地味ではあるが、厳しさや気高さという点で小山さんのピアノと同じものを表現したいい演奏だった。アンコールで弾いてくれたマズルカが、これまたそこはかとないメランコリーを装った円熟の境地。モーツァルトでも感じたが、小山さんは年齢をずっと超えた老成の域に達したような味わいを聴かせた。

N響公演の感想タイトルリスト(2017~)
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 平成29年度東京音楽大学大学... | トップ | 大野和士/都響:トゥーラン... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

pocknのコンサート感想録2018」カテゴリの最新記事