facciamo la musica! & Studium in Deutschland

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ウィーンの森のハイキング

2010年06月09日 | ウィーン&ベルリン 音楽の旅 2009
Wanderung im Wienerwald

2009年5月17日(日)


ウィーンには何度も来ているpocknだが、ウィーンの森をハイキングしたことは一度もない。山好き、ハイキング好きのpocknが、有名なウィーンの森でハイキングをしていないのはちょっと不覚だった。今回はウィーンに合わせて6泊するのでチャンス、と思い立った。

インターンシップで日本に来ていたときドイツ語を教えてくれていたウィーン在住のリサに「ウィーンの森をハイキングしたいんだけど…」とメールしたら、「じゃあ一緒に行きましょう」と返事をくれた。コースはリサにおまかせ。そしてウィーンに着いた翌々日、天気の良い日曜日にウィーンの森に繰り出した。

Cobenzlからハイキング開始!

地下鉄U4の終点、ハイリゲンシュタット(Heiligenstadt)からバスに乗り換える。どこで降りてもハイキングできそうな緑豊かな丘陵地帯を走り、コーベンツル(Cobenzl)という眺めのいい丘の上でバスを降りた。オープンテラスのカフェなどが点在し、ブドウ畑が広がっていた。

さあ、ここからハイキング開始だ。5月の眩しい陽光が燦々と降り注ぐなか、「チョウチョウの小径(Schmetterlingspfad)」と名づけられた野原の道を歩き始めた。ここはいろんな種類の蝶が飛び交う道ということでこの名がついたそうだが、蝶はチラホラ舞っている程度。でもウィーンの町のシュテファン教会まで見渡せる遊歩道は本当に気持ちがいい。


あたりにはいろいろな花が咲いている。日本の本州だと標高の高いところに咲いているような高山植物もあちこち咲き誇っていた。



ケルトの木の環の占い

30分ばかり歩いて、「天上の地(Am Himmel)」という芝生の広場にやってきた。リサが「ケルトの木の環の占い」について教えてくれた。誕生日によって「自分の木」があり、その木で自分の性格や運勢を占えるのだそうだ。ここにはその占いで出てくる木が全種類、等間隔に環を描くように植えられていて、「生命の木の環 (Lebensbaumkreis)」と名づけられている。

早速自分の誕生日の木を探した。Hainbuche(シデの木)だ。木の前には石の台にプレートがはめ込まれていて、シデの木の説明と、この「誕生木」に生まれた人の性格が書かれていた。

「規律正しく、反骨精神に満ち、エネルギッシ。決断力があり、志の高い不言実行型。人も羨む粘り強さがある。」とのこと… これ、当たってるぞ!


プレートの前に立つとスピーカーから音声が流れて説明が聞こえる。週末にはぐるりとサークルを描いた木の前にあるスピーカーから一斉にクラシック音楽が流れて、真ん中に立つと自然の中で素晴らしいサラウンドの演奏を楽しめるらしいが、残念ながら音楽は始まらなかった…
リサは「柳の木」の生まれ

シシィ=チャペル

コースはここから森の中へと入っていった。すると間もなく、白亜の小さな教会が現れた。


シシィ=チャペル(Sisi-Kapelle)といって、ミュージカルでも人気のハプスブルク家のエリザベス王女シシィとフランツ=ヨーゼフⅠ世との結婚の記念に1854年に建てられたというかわいらしいチャペル。

中には入れなかったが、扉はガラスでできていて、チャペルの中を覗くと、屋根も透明ガラスになっていて外の光がたっぷり入り、内部を明るく照らしていた。2005年に修復された際、森や空などの自然をたっぷり体感できるようにしたのだそうだ。ここは是非入ってみたかった…

ウィーンの森

森の木はブナなどの広葉樹が主体。どの木もとても背が高い。


ドイツ・オーストリアの森というとモミやトウヒなどの針葉樹の森というイメージがあったが、ウィーンの森はそんな魔女が出てくるような暗い森ではなく、新緑が目に染みる明るい森。リサが「ウィーンの森は特に広葉樹が多いのよ」と教えてくれた。

そんな明るい森や野の花が咲き競う草原の中にハイキングコースがつけられていて、道はとても広い。遊具がある広場があったり、家畜が草を食んだりと牧歌的な風景が続く。

ニンニク臭?!

そんな快適なコースで時おりどこからともなくニラのようなネギのような臭いが漂ってくる。「なんだかニンニンクみたいな匂いがするでしょ!? これはベアラオホ(Bärlauch)っていって葉っぱが食べられるのよ」とリサ。

臭いの正体はこれか。およそ「ウィーンの森」というイメージに似つかわしくないオリエントな臭い。

後でネットで調べたら、このベアラオホ、日本ではギョウジャニンニクと呼ばれているユリ科の多年草だそうで、餃子の具やペースト、スープなどのレシピが載っていた。

5月のごく限られた時期にしか出回らない旬の味なんだそうで、レストランのメニューで見かけたら「迷わず注文すべし!」なんて書いてあった。食べたてみたかったな…

ヘルマンスコーゲル

ハイキングを開始して約2時間。坂道を登りついたところに中世の城壁にあるような塔にやってきた。ここはヘルマンスコーゲル(Hermannskogel)というウィーンで最も高い山、というか丘。標高は542m。

塔はハプスグルクヴァルテ(Habsburgerwarte)と言って1888年にウィーンのツーリストクラブが建造したものだそうだ。

現在は衛星放送のアンテナ基地として使われているとのことだが、4月から10月までは週末と祝日に限り塔に上ることができ今日は日曜日、早速上ってみた。

ヘルマンスコーゲルはウィーンで一番の高台とは言っても、周りは樹木に覆われていて展望は利かないが、この塔に上ってテラスに出れば360度の展望が広がっていた。眼下には青々とした新緑のウィーンの森を見渡せ、その先はスロヴァキアまで遠望できた。


塔の下のベンチでリサが用意してきてくれたサンドイッチでランチタイム。眩しい新緑の梢を飛び交う小鳥のさえずりが聴こえ、ウィーンの森の真っ只中にいることを実感。


カーレンベルクへ

ヘルマンスコーゲルからウィーンの森の展望台として有名なカーレンベルク(Kahlenberg)へ向かう。道は緑深い山道の緩やかなアップダウン。かなりの樹齢がありそうな大きな広葉樹がたくさん繁っている。



これだけの落葉広葉樹に覆われた丘陵地帯なら、水のおいしい沢もあるに違いない… と思っていたら、コースの下の谷を沢が流れていた。ウィーンの町の水道水がおいしいのは山から引いているから、と聞いたことがある。「水はここら辺から引いてくるの?」とリサに聞いたら、ウィーンの町に引かれている水はずっと遠い山岳地帯から引いている「アルプスの水」とのこと。

そんな深い森の中を歩いていると、道を外れてしまったのかと思うような踏跡程度の道に入ってしまい、方向を見失うことが何度かあった。


そんなときは、リサが地図を頼りに道を見極めてくれた。「ウィーンの森」というロマンチックな響き、家族連れでも気軽に出かけられるハイキングコースとは言っても、道を一度見失うととんでもないことになる可能性もありそうだ。

カーレンベルク~レオポルズベルク

ヘルマンスコーゲルから約1時間、やがて道は車道に合流して、眺めの良いテラスのある広場にやってきた。カーレンベルクだ。


教会が建ち、テラスつきのカフェやレストランが並び、バスからは観光客が吐き出されてくる。展望テラスには人がいっぱい。

静かな森の中の展望台を想像していたカーレンベルクはウィーンの森でも有数の観光地だった。

カーレンベルクから車道に沿った並木の遊歩道を30分ほど歩くと、このハイキングの最後の展望スポット、レオポルズベルク(Leopoldsberg)に行き着く。


レオポルズベルクの高台に建つ聖レオポルド教会(St.Leopold)

カーレンベルク(484m)より標高は少し低いが(425m)、ウィーン西端の丘陵地帯では北の端で、ドナウを見下ろす絶好のビューポイントに位置する。何よりカーレンベルクよりずっと静かなのがいい。

ゆったりと蛇行して流れるドナウ川と、それと平行して作られたドナウ運河が眼下に見え(水の色が違うのがおもしろい)、その向こうにはウィーンの町が広がっている。


クリックで拡大

こうして眺めると、ウィーンという町はオーストリアの首都とはいえ高層ビルが殆ど見当たらない。新宿の高層ビルから街を眺めると、建ち並ぶ高層ビル群の中に御苑や外苑などの緑もあるが、ウィーンは緑の中に「町もある」という感じ。

ウィーンの町中を歩いていると都会にいるような気になるが、本当は大きな森の中に、人間が小さな町を作らせてもらっているに過ぎないことを実感できる。

カーレンベルク村へ下山

展望に別れを告げ急な山道を下る。ドナウ川が近づき、ブドウ畑の先に村の教会の尖塔が見えた。カーレンベルガードルフ(Kahlenbergerdorf)、「カーレンベルク村」だ。


Holunder
沿道に咲いている花を指してリサが、「この花、ホルンダーって言っておいしいシロップができるのよ」と教えてくれた。



白乳色の小さくてかわいい花が集まってひとつの花群を成している。たまたまおととい、ウィーンに住むアキさん・ウィニーさんご夫妻宅を訪ねたとき、そのホルンダーシロップのドリンクを飲ませてもらった。ハーブの香りのする甘い飲み物だったが、これがその花か!

本物の花にお目にかかれて、ホルンダーに親しみがわいたpocknは、その後スーパーでホルンダーシロップを探したが、でかい瓶しかなくて持って帰るのは断念。代わりにホルンダーののど飴とディーバッグを買った。このホルンダー(Holunder)、辞書で引いたら「西洋ニワトコ」と出ていた。日本にもあるんだろうか。


この家のプレートには「1828年8月7日、ここでシューベルトはカロリーネの
誕生パーティーの仲間うちで歌曲『セレナーデ』を初演した。」と書いてあった。
(クリックでプレートを読む)


カーレンベルク村はドナウ川沿いの長閑でひなびた感じの村。「ハイキングのあとはホイリゲで一杯やりましょう」ということにしていたので、まずはこの村で良さそうなホイリゲがないかと回ったが、ちょっと寂れた感じのホイリゲが1軒あっただけ。僕はここでも良かったが、リサが「他を探しましょう」と言って、バスに乗った。

ヌスドルフのホイリゲ

バスで数分、降りたのはヌスドルフ(Nußdorf:くるみ村)という、ホイリゲがたくさん集まるウィーンの森の村。前に一度来たことがある。さすがにこっちは賑やかで、あちこちのホイリゲの中庭ではみんな楽しそうにワインを飲んでいる。大きな中庭があるお店に入り、中庭席についた。

ウィーンの森のホイリゲ(Heurige)は、地元の新しいワインを飲ませるワイン居酒屋だ。夜になると生演奏なども入り、ウィーンのローカルな雰囲気を楽しめる観光スポットでもある。

注文はレストランとはちょっと勝手が違う。テーブルに座っていても食べ物の注文はできない。食べ物はお店の中へ行って、ウィンドーに並ぶサラダやハムやソーセージ、チーズなどを欲しいだけ注文してお皿に盛ってもらう。レジで支払いをしてからテーブルで飲み物を注文する。


ホイリゲの食べ物は農家の家庭料理といった感じ

ハイキングでいい汗をかいた後は冷えた辛口の白ワインが飲みたくて注文したが、いくら待ってもやってこない。おつまみだけ食べて待っていたが、とうとうシビレを切らせてリサがウェイトレスに催促したら、案の定忘れていた様子。ウェイトレスは恐縮する様子もなく「あら、すいません!」と言ってやっとワインを運んできた。


ようやくありつけたワインでリサと乾杯。絶好のハイキング日和に恵まれ、ウィーンの森の息吹きと抜群の展望を満喫したハイキング、こんなに楽しく快適に歩けたのもリサのおかげ。本当にありがとう!

《行程》
10:40 Cobenzl→11:00 Lebensbaumkreis→11:25 Sisi-Kapelle→12:45 Hermannskogel 13:40→14:35 Kahlenberg→15:05 Leopoldsberg 15:25 →16:10 Kahlenbergerdorf 16:39=(バス)⇒16:41 Nußdorf

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