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大野和士指揮 都響&スウェーデン放送合唱団:「天地創造」

2017年09月14日 | pocknのコンサート感想録2017
9月11日(月)大野和士 指揮 東京都交響楽団/スウェーデン放送合唱団
第840回 定期演奏会Bシリーズ
サントリーホール

【曲目】
◎ハイドン/オラトリオ「天地創造」 Hob.XXI:2

S:林 正子/T:吉田浩之/Bar:ディートリヒ・ヘンシェル

ハイドンの名作オラトリオ「天地創造」は、序盤で登場する「光」という言葉が、ハ長調の輝きに溢れた響きで力強く高らかに宣言されて生を受け、その「光」が全曲を貫く。大野和士指揮都響/スウェーデン放送合唱団、そして3人のソリストは、常に光に満ち、喜びに溢れ、神への感謝で貫かれた演奏を聴かせた。

「光」を得る前の「混沌」を表すオケによる第1曲は、確かに暗く不気味で、不吉なものさえ感じさせるが、今夜の演奏はそこにさえこの後もたらされる「光」への期待が聴こえてくるようだった。昼と夜、大地と海、森や山、魚、虫、動物たち、アダムとイブ… ハイドンがそれぞれの特徴を的確に捉え、愛情を持って作曲した神の創造物が、今夜の演奏では命を得て、ハイドンが籠めたスピリットが最良の形で音になった。

多くの感想は、その功績の立役者としてスウェーデン放送合唱団を筆頭に挙げるだろう。異論はないが、僕は敢えてまずオーケストラを称賛したい。大野/都響は、冒頭の「混沌」の表現から万物の創造、アダムとイブのラブソングに至るまで、常に響きに光を帯び、滑らかで美しい筆致で、喜び、感謝、愛を伝えていた。しなやかで伸びやかで瑞々しい弦、温かく滑らかなアンサンブルを奏でた木管、輝かしく神々しささえ感じた金管、管楽器の各ソロも見事だった。余りに響きが美しく、先ごろ終えたホールの改修工事の影響かと思ったほど。

スウェーデン放送合唱団は今夜もすごかった。その能力の幅広さ、深さ、多様性は、最初の合唱の出番である第2曲だけでも明らかだ。「光」がもたらされる以前の、水の上で漂う御霊を弱音で歌う表現は、霊気が細くたなびく煙の筋となってまっすぐに天上へ上って行くよう。最弱音がこれほどくっきりと耳に届いてくる合唱は聴いたことがない。それに続き、今度はフォルティッシモで「光」と唱和するエネルギーと輝き、気高さ。闇と光の世界の対比をものの見事に描ききったワンシーンだ。それから終曲に至るまで全曲を通し、スウェーデン放送合唱団は眩い光で神を賛美し、雄弁多彩に万物を描き、アダムとイブの背景を柔らかく彩った。

3人のソリストも素晴らしかった。バリトンのヘンシェルの思慮深さと威厳、テノールの吉田の気高さと輝き、ソプラノの林の色香と艶やかさ。それぞれが最高のパフォーマンスで自分の役を表現した。

指揮の大野は、迷いや曖昧さは一切なく、何をどう表現するかが常に明快で、細部から大局に至るまで細心のコントロールで「天地創造」の壮大な絵巻物に込められた光、歓喜、讚美、愛といったテーマを鮮やかに、生き生きと描いた。

タクトが下り、最後の音の余韻が消えるまで静寂が保たれたあとの大喝采とブラボー。拍手は合唱とオケが退場した後も鳴りやまず、大野はソリスト、合唱指揮のダイクストラを伴って再び大喝采を浴びた。大野の指揮を初めて聴いた都響でのデビュー公演から目を見張るものがあったが、今や名匠の域まで達した姿に感慨を新たにした。

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